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蒼碧のつかい  作者: ひよよ
下ノ編
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拾ノ三

 

 エマリンは左肩が固定されているキッセに、トパがゆを食べさせようとしたがキッセはやんわりと断った。なんだか気恥ずかしかったからだ。

 どうにかこうにか左手で器を固定しながら、パピが作ってくれたトパ粥を口に運んだ。

 やさしい味のトパ粥だが、いつもより蜂蜜ルノが入っているせいか、豪華に感じる。


「お肉が苦手なのはわかるけど、少しでも食べられない? お肉は血にいいってお医者様が言っていたわ……」

 エマリンが茶杯チャハ蜂蜜ルノを入れ、リーノを注ぐと柔らかな香りがした。


「好き嫌いとかではないんだ……」

 キッセはもの〈獣〉の肉が一切駄目だった。

 それでも以前は、魚ぐらいは食べられたのだが、今では魚すら受け付けられなくなった。

 自分でもどうしてなのかよくわからなかった。何度か食べてみたが、どうしても気持ち悪くなり吐き出してしまう。 


 エマリンは青白い顔のキッセを心配そうだ。

 キッセが少しでもトパ粥をこぼすと、すぐさま拭きとってくれ、食べている最中でも、かいがいしく世話を焼く。

 子ども扱いするエマリンをキッセは面映おもはゆく感じながら、少し嬉しくも思った。


「エマリン…… ロクマンさんはどうしてる?」

「ロクマンは大丈夫よ」

 あっさりと言うエマリンにキッセは安堵した。


「それよりも、あの夜のお屋敷は大変だったのよ。突然、警衛士けいえじが大勢やってきて何事かと思ったら、若様は怪我を負っているし、あなたは血まみれだし、ロクマンなんて……」


 エマリンは自分の片目を手で覆いながら

「こんなに目が腫れちゃって、誰だか判らなかったわよ」

 エマリンの仕草にキッセは苦笑した。


「でも、一体どうやって華族地区ここに侵入してきたのかしら?」


 ここ最近、あおみやこは日雇いの仕事を求める者や浮浪者の数が増えてきた。そのため靑都せいとの出入り口門の検問が厳しくなっていた。

 特にこの華族地区は取り締まりが厳しく、キッセたち使用人が頼まれ物を市井しせいに買いに行く際も、検問の時間がかかって仕方がなかった。


 ――手際がよく、計画的な犯行だった……。


 キッセは倒れまでのことをできる限り思い出した。

 素人の単発的な物取りではないのは確かだ。検問の厳しいこの華族地区に、いとも簡単に侵入している――それも三人。

 

 あの日、お茶会と称し、白銅家はくどうけに呼ばれたのは寧照ねいしょうだけだった。帰宅時、白銅家の紋様もんようが施されていた馬車にのっていたので、白銅家はくどうけの者を狙っていたのも考えられるが、確実に寧照ねいしょうを狙っていた感じがした。

(どうして若様を……?)


 深刻な顔をして考え込んでいるキッセの顔をエマリンは覗きこんだ。


「なんだい?」


 ジッと見るエマリンにキッセは眉をひそめたが、エマリンはお構いなくキッセの両頬にふれた。

「――キッセ目、平気?」

「目?」


 エマリンは医者の様に親指でキッセの両目の下瞼を軽く下げ、キッセ目をじっくりと見た。

「両目ともこんな色だったっけ?」

 片目が薄い蒼眼だったキッセの目が、両目とも薄青くなっていた。

 


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