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蒼碧のつかい  作者: ひよよ
下ノ編
59/65

玖ノ四

 

 帝都ていとあおみやこ江汐こうしほと同じく、滄河さうがへと続く彲川ちせんを挟んで東と西に分かれていた。

 華族地区かぞくちくと呼ばれる西側は、北の龍淵宮りょうえんきゅうをはじめ、扇状に清上華族せいしょうかぞく三名家さんめいかの住居があり、そこから順々と地位の順に分かれていた。


 キッセの雇い主、策達さくたつの屋敷は、華族地区かぞくちくの南の末端、虹泉城壁こうせんじょうへきの門の一つ、華藍門からんもんに近い場所に建っていた。

 華族の中では地位は低い地下じげ華族だが、靑都せいとで一、ニを争う豪商だけあって、そこらの位の高い華族より、広大で立派な屋敷であった。


 昔、ビィビが江汐こうしほ蒼国そうこくで二番目に大きな町だと言っていたのをふと、キッセは思い出した。 

 キッセは、靑の都は江汐こうしほより一回りぐらい大きい町だと思っていたが、実際に来てみたら全く違っていた。この華族地区だけで江汐こうしほの町がすっぽり収まってしまう広さだ。

 キッセはあの賢いガロの少年の顔を思い出した。

 置き手紙と金を置いていったとはいえ、何も言わず黙って家を出ていってしまったことに、キッセも後味が悪いと思っていた。


 今から三年前のあの日、宙定ちゅうていに誘拐され、いや、紹介されてつれてこられたのは、この靑都せいとに店を構える豪商だった。

 一代で富を築き、蒼国そうこくでも一、ニを争う策達さくたつのもとには、扱う品物以外にも金策に困る華族たちがこっそりと相談しにくることがあり、華族の駆け込み寺になり始めた頃だった。


 その中には朱明国しゅめいこくからの亡命してきた華族もいた。


 朱明国は、鉱石が多く取れる豊かな国だが、水に恵まず、昔から内乱が続いていて情勢が安定しない国だ。

 蒼国そうこく朱明国しゅめいこく、両国の間には碧巌竜脈へきがんりゅうみゃくと呼ばれる、雲よりも高い山脈と、その碧巌竜脈へきがんりゅうみゃくから続く碧巌半島へきがんはんとうがあるため、陸続きで両国の国境を超えることは不可能。

 唯一の入国方法は海路なのだが、昔から蒼国そうこく朱明国しゅめいこくの海流は激しく、その上複雑な海路を船で行き来できるのは、碧巌半島へきがんはんとうから少し先にある、龍尾島りゅううぉとうの島民ぐらいだった。


 だが十年前あたりから蒼国そうこく側の海流が穏やかになり、朱明国しゅめいこくの亡命者が続々と多くなっていった。

 そこに目を付けた策達さくたつは、息子二人に朱明語しゅめいごを習得のための師と、朱明語を話せる使用人を探していた。

 そんな中、キッセがやってきたのだ。

 策達さくたつの読み通りなのか、キッセが働き始めて二年後、咲萄しょうとうとの再婚で華族となった策達さくたつのもとには、多くの秘密の顧客が訪れるようになり、その顧客たちを相手にするのが、リロックの寧照ねいしょうだった。





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