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蒼碧のつかい  作者: ひよよ
下ノ編
55/65

捌ノ五

 

 宙定ちゅうていが薬の入った小瓶の蓋を開け、少女の鼻に近づけた。何度か薬を嗅がすと、少しずつ少女の意識が戻り始めた。

 朦朧としている少女を宙定ちゅうていはそっと起こし、水が入った器を渡すと、少女は黙ってそれを受け取り、ゆっくりと水を飲み始めた。

 以外にも、少女は知らない場所にいるにも関わらずに、焦るようすもなく落ち着いている。


「名前は?」

 宙定ちゅうていが優しく訊くと、少女は怪訝な顔した。

「馬鹿ね!言葉が通じないのよ!」

 横で見ていたアケームが口をとんがらせた。


「ナロァー(名前)」と宙定ちゅうていがもう一度訊くと、少女は「レィイラ」と言った。

「発音が難しいね。レイラいいのかな」

 宙定の問いに、少女は首を横に振って何かを言った後、また「レィイラ」と言った。

「すまない、黒黯国こくあんこくの言葉は少しの単語しかしらないんだ」

 それにこの子は訛りなのか少し聞きにくい。


「大体、言葉もろくに話せないのに、華族の御付おつきなんか勤まるわけないでしょ!」

「特に言葉の指定はなかったんだ。お金持ちの気持ちは僕にはわからないし、妓楼ぎろうに売るのは可愛そうだよ……」


 そんな宙定ちゅうていに、ケッ!とアケームは口をひん曲げた。

「あんたね! この前リロックの女を普通に妓楼に売り飛ばしたくせに!」

 宙定とは長い付き合いだが、相変わらず何を考えているか読めないヤツだ。


賈怨こえんな商売はお互い様だよ。それに僕のはまだ真っ当な商売だよ。まっとうな顔して取り締まりをしながら、裏では売り飛ばしている役人たちの方がよっぽど悪党だよ」

 同じムジナだろうと、アケームは思ったが言うのをやめ、琥珀色の酒を飲み干した。


宙定ちゅうてい、あんた。なぜこんな商売やってるのよ?」

「さあ、なんでだろう? 僕にもわからないや……」

 宙定ちゅうていは不思議そうにアケームを見た。


――本当にふざけたヤローだ。


 宙定ちゅていは、震えている少女の肩に近くにあった布をかけた。

「いいかい。君はどういう理由ここに来たか知らないが、生きなくてはいけないよ。それと……」

 宙定は少女の肩を指し

「ここではそれを誰にも見せてはいけないよ。わかったね」

 宙定ちゅうていの言った意味が伝わったのかは定かではないが、少女はむき出しの肩をそっと隠した。




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