表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼碧のつかい  作者: ひよよ
下ノ編
53/65

捌ノ三


 蒼国そうこく朱明国しゅめいこくの両国の間には、天高くそびえたつ碧巌竜脈へきがんりゅうみゃくがある。その碧巌竜脈へきがんりゅうみゃくから続く竜尾半島りゅうびはんとうに両国の海域が隔たれていた。

 唯一の移動手段は青海せいかいからの海路のみだ。その海路も昔は海流が複雑に渦巻いていて、両国の海路を渡ることは容易ではなかった。

 それが二十年前頃から不思議と海流が落ち着いている所が、ところどころ現れ、潮目をうまく読めれば海路で渡る事ができはじめた。

 そしてここ十年、蒼国側の海流がすっかり落ちつき、それと同時に内乱の続きの朱明国からの亡命者が増えるようになった。それに伴い誘拐、密猟、密輸なども盛んになってき、とうとう腰の重い蒼国の役人も取り締まりを強化し始めていたのだ。


「もう少し大人だったら、文句なしに売り飛ばすのですが……。最近はいろいろとうるさくてね。カロックならともかく、この幼さだと、妓楼が買ってくれるかどうか……。――うちも商売あがったりですよ……」

 肥えた男は大げさに大きくため息をついた。


「お前の事なんてどうでもいい! 売れないなら他をあたるぞ!」

 でっぷりの小言に男が怒りが抑えきれなくなってきた。


「おぉ! めっそうもございません。今お値段を……」

 肥えた男が目をギョロギョロさせながら、太い指で珠盤しゅばんをはじき、男たちに見せた。

「どういうことだ! 聞いていたより少ないぞ!」

 提示された金額を見て声をあらがいだ。


「先ほどから言っておりますが、妓楼ぎろうが一番の高値で購入してくれます。その他ですと、お値段の方がその…… それに、この娘の体にはすみが彫られています。この国ではすみのはいったリロックはあまりこのまれません」

「こんな小さい墨なんて、焼き潰しまえばいい!」

 男の一人が大声で怒鳴り、その場にあった机をドン!と、ぶっ叩いた。


「おぉ、恐ろしい…… では、これでどうでしょう?」

 男たちに睨み囲まれ、肥えた男は震える指で、珠盤しゅばんを弾いた。

 その値段を見て男たちの顔が紅潮した。

「ふざけやがって!」

 先ほど、ぶっ叩いた机を頭上高く持ち上げると、その場に叩きつけた。

「てめぇ!ふざけるのもいいかげんにしろや! 俺らが漁師だから馬鹿にしてやがって! 今この場でテメーの手足一本、折ってやってもいいんだぞ!」


「申し訳ございません!」

 粉々になった机の横で、男たちの脅しに丸い体をさらに丸くしてしながら土下座して謝ると、最初の金額をニ倍にして男たちに提示した。

 それを見た男たちはお互い目を配らせた。三人とも一刻もこの場から早く去りたい。

 一人がコクリとうなずくと、「それでいい」と肥えた男に言った。


 男たちは金を受け取ると、足早に部屋を出て行った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ