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蒼碧のつかい  作者: ひよよ
下ノ編
51/65

捌ノ章 異国の少女


 深夜を回ったころだ。

 新月の晩、月がない烏闇うやの夜には、銀砂の星が一段と瞬いていた。その星の光に負けじとまわしの青星あおぼしが青く輝いている。


 港町みなとまち江汐こうしほ――

 江汐こうしほの言葉で白い物を意味するルブル。そのルブル地区の西のはずれ。

 貧しい者たちの集まりのルブル地区の住人ですら近寄らない西一角に、小さな明かりが見え隠れしていた。

 暗い路地の通りを、か細い明かりのみで人目につかぬよう、ひっそりと三人のカロックの男たちが何かを運んでいた。

 目的の場所に到着すると男の一人が、古い木戸の扉を小さく叩いた。

 辺りは静まりかえったままだ。


「返事がないな……」


 もう一度男が扉を叩こうとすると、扉の小さな覗き戸が音もなく開いた。

 男たちが持っている明り取りでは中の様子がうかがえないが、明らかにこちらを見ているのがわかる。


「――なんの御用で」

 奥から低い男の声がした。


「み、見てもらいた物がある……」

 緊張しているのか、上ずった声で扉を叩いた男が言った。

 少しの間、扉の中の男が黙った。こちらの様子を窺うように闇の中、目だけが動いているのが感じられる。

 短い沈黙だったが、三人組の男たちは長く感じた。

 大きな荷物を抱えている男が、たまらなくなって口をひらいた。

「……こ、ここなら、平気だと聞いた」

 覗き戸が音もなく閉まると、分厚い木の扉が低い音とともにゆっくりと開いた。


「――どうぞ。中へ……」

 ガロの男が部屋の奥へと促した。


 中へ入ると三人の男たちは目を見張った。

 出迎えたのはカロックの自分たちよりも、背丈が高く、一回り以上も腕や首回りが太いガロだった。こんな大男のガロをはじめて見たからだ。

 ゴクリと喉が鳴る。三人の男たちは黙って大男の後を付いてった。


(……思っていたより奥まった所だ)

 荷物を運んでいるカロックの男は思った。 

 着ているころもが汗で冷たい、荷物を運んでかいた汗なのか、緊張の汗なのかよくわからなかった。

 ひんやりとした、薄暗い石造りの廊下を歩くと奥に小さな明かりが見えた。



 案内をした大男のガロは扉がある明かりの前で止まり三人の男たちを見渡した。そしてゆっくりとその扉を開け、男たちを中へと促した。




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