肆ノ五
「二人してどこに行ってたの!」
ルーシの怒り声で出迎えられた。
キッセとビィビは帰宅と同時に、長い耳をピンと立てたルーシにこっぴどく叱られた。
ペルが怒っているルーシの肩をさすりながら言った。
「ルーシは心配してキッセのこと一日中、探していたのよ」
ビィビが、チラりとルーシを見て
「オイらのことは、探してくれなかったのかい?」
キッっと、ルーシはビィビを睨みつけた。
「ルーシ、ごめん……」
まさかこんなにルーシに心配をかけていると思わなかったキッセは素直に謝った。
「ねっ、大丈夫って言ったでしょ」
ペルがルーシの肩をポンポンと軽く叩いたあと、キッセに近づき同じように肩をポンポンと軽く叩いた。
「でも、どこかに出かける時は、必ず誰かに言わなくてはダメよ。子どもだけでは危険な場所もあるから」
「わかった……」と、キッセはうなずいた。
それでもなかなか腹の虫が治まらないルーシは、キッセとビィビに向かって言い放った。
「二人共、罰として晩御飯の後片づけをしてもらうからね!」
「やりぃ!」
これには今晩、洗い物当番だったアジルが喜んだ。
晩御飯は芋と雑穀を一緒に炊いたホカホカなご飯と、小さな雑魚を煮たものに、青菜の塩漬物だった。皆、席につくと「いただきます」と言って食べた。
少ししてお腹が落ち着くとペルが箸を置き、静かに話し始めた。
「キッセ、あなたを道端で見つけた時は驚いたわ……」
ことの始めは、ヴェルクが引き受けた仕事だった。
それは江汐から東に位置する町、霖燈へ積み荷を運ぶ仕事だ。
蒼国の東側はほとんどが山間部で、所々に小さな集落や町が点在している。
その中で蒼国のもっと東に位置する町、霖燈。
一年通して水温が低い上質な水と、着色に使用する植物が豊富に生える霖燈は、古くから染物と反物が盛んで、腕の良い織物や染物の職人が多くいる。
霖燈はその彩の豊富さに、別名、美彩の町とも呼ばれていた。
ヴェルクは染物に使う灰や糸などの材料や、霖燈へ用事がある環獣を運ぶ仕事を時々請け負っていた。
いつもならアジルが同行するのだが、この時アジルには賃金の好い仕事が舞い込んだため、代わりにペルが同行することになった。




