参ノ四
再びアーロィへ行くと、洗い物を終えたのか、さっき居たおばさんたちの姿が見当たらなかったので、キッセは少しほっとした。
(ずっと前に横李にもあったな、これ……)
キッセがいた横李にも共同水場は在ったのだが、ずいぶん前に枯れてしまい、井戸しかなかった。
ここには共同水場があり、横李とは違いとだいぶ広い造りになっていた。
石造りの共同水場には日よけの屋根があり、傍らにある腰掛けに年老いたガロやカロックの爺さんたちが、楽しそうに談笑していた。
「キッセ、こっちよ!」
ルーシは、洗濯洗い場の場所を確保し手招きした。
「よかった、今日は空いていて。さあ、洗濯よ。――でも、その前に……」
ルーシはキッセの衣の裾が濡れないように、裾をくくり上げ、結んだ。
「これでバッチリね!」
何だか、ルーシに好いように取り込まれている様な気がした。
共同水場は井戸とは違い、常に水が湧き出ている。
ここの共同水場は上段から、階段のように段々になった石造りの槽が四つと、洗い場があった。
絶え間なく水が湧き出る一番上の上段が飲み水専用。
二段目が汲み水用で、水桶が入るように漕が深くなっている。
三段目が野菜などの洗い場だ。今も誰かが、深ザルに真っ赤な蕃茄を入れ冷やしていた。
四段目は洗濯のすすぎの漕。四つに区切られており、そこに洗濯物を入れるとクルクルと回るようになっていた。
一番下は長方形に広がる洗濯物の洗い場になっていて、一番上から順々に末広がりに広くなっていた。
もちろん、女たちがせっせと洗濯している時に、三段の野菜の洗い水で泥のついた野菜を洗ったら、どうなるかは誰もが心得ている。
この町には、このような大小様々な共同水場が、あちらこちらにあり、環獣たちの憩いの場になっていた。
ルーシとキッセは一番下の洗濯洗い場で準備をし始めると、ぞろぞろと洗濯かごを持ったガロやカロックのおばさんたちが、同じように洗濯の準備を始めた。
「これは洗濯液よ。昨日の晩ご飯の時、研いだ米のとぎ汁に今朝、石鹸を混ぜておいたの」
ルーシが家から持ってきた水桶の中に、白く濁った液体が入っていた。ルーシは籠から洗濯物を取り出し洗濯液に浸した。
「これにつけてから洗うと、汚れがよく落ちるの」
おばさんたちも家々で配合した洗濯液を洗濯物に浸して、洗濯板でごしごしと洗ったり、洗濯棒で叩いたりしていた。
この洗い場には、洗濯物を叩く平べったい洗濯石が置いてあり、洗濯しやすいように洗い場のふちが段になっていて、中央に水が流れている。
ルーシはせっせと洗濯板を使って洗濯物を洗っている。
キッセは見ているだけでは退屈なので、籠から洗濯物を取り出すと、ルーシがやって見せた通りに、洗濯液を洗濯物に浸して洗濯石の上に置くと、ルーシが持ってきた洗濯棒で叩いた。




