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第6話 おじさん、やってみる。

 

 患者が通された。


 龍俊は医師ではない。

 だから、診察はできない。

 詳しい状況は言葉で聞き出すしかなかった。


 患者は20代くらいの女性だった。

 奴隷なのだろうか。髪の毛はボサボサで、顔は泥だらけ。貫頭衣のような麻でできた簡素な衣服を着ている。


 龍俊は声をかけた。


 「つかぬことをお聞きするが、どんな症状でござるか……? どんなきっかけでなったでござるか?」


 淋病になるのは、よほど恥ずかしいことなのだろう。女性は下を向いてしまって、何も話さない。


 この世界のことは分からないが、女性にシモのことを聞くのが失礼なのは、万国共通だろう。


 その様子をみていたシオン侯爵は鼻で笑った。


 「やはり、何もできぬではないか」



 龍俊は、そんな様子を気にすることもなく、鼻を動かした。


 (第七階梯スキル:超嗅覚 問診などする必要もないっす。エルン殿と同じ匂いでござる)


 「きみ、これを飲むっす。3日もすれば楽になるっす」


 それから3日。

 また龍俊は拷問を受け続けた。


 そして、3日後の朝、拷問官に肩を抱えられて出てきた。拷問官は言った。


 「お前ほど拷問に耐えた男は初めてだ。それに、パンツとネコミミ娘。楽しみにしてるからなっ」


 男は龍俊の背中を叩いた。


 「はは……。身体中の爪がないんだから、歩くだけで痛いっすよ。刺激は勘弁するっす。メルたん。ちゃんと薬を飲ませてくれたっすか?」


 メルファスは頷いた。


 「あなたの言う通りにしたわよ」


 龍俊は、シオン侯爵の目の前に跪いた。


 すると、医師が走り込んできた。


 「シオンさまっ。患者が…患者が。回復しました。熱も下がり、症状も軽くなっています」


 龍俊は笑った。


 「よかったっす。そのまま薬を飲めばきっと元通りになるっす」


 シオン侯爵は何かを小声で呟き爪を噛んだが、咳払いすると、龍俊に話しかけた。


 「龍俊とやらよ。お前の話を聞いてやろう」


 「この薬は効く人と効かない人がいるっす。だから、未然に防ぐことが必要っす……」 


 (ドサッ)


 龍俊は気を失った。

 手足の爪はなく、歯も何本か抜けている。


 気絶は、激しい拷問に耐えた結果だった。


 「看病してやれ」


 シオン侯爵が人払いをしようとすると、龍俊がかろうじて目を開けた。


 「第七階梯スキル:超回復……」


 みるみる龍俊の身体が回復していく。瞬く間に歯も爪も戻った。


 侍従が騒がしくなる。


 「第七階梯スキルなんて、生まれて初めて見たぞ……」


 メルファスは思った。


 (当たり前よ。第七階梯スキルは自然に付与されることはない。神が自らの選んだ者にだけ与える特別なスキルなのだから)


 シオン侯爵は龍俊に声をかけた。


 「おぬし、何故そのスキルを牢獄で使わなかった?」


 「あの薬は賭けだったっす。それに患者の女子が苦しんでるのに、拙者だけ楽はできないっす」


 「ふむ。第七階梯スキルか。ははっ。おもしろい男だ。これで奇病の治療ができる。今回の功績に対して褒美をとらせよう。希望はないか?」


 龍俊は言った。


 「うひょーっ。拙者の希望は、エルンたんにも薬を飲ませてやって欲しいっす」


 シオン侯爵がエルンをみると、エルンは気まずそうに視線を逸らした。


 「おとうさま。ごめんなさい。わたくしは卑しき者の病になってしまったとは言い出せなくて……」


 シオン侯爵は微笑んだ。


 「……そうか。エルンよ。わたしが追い込んでしまったか。すまぬな。ますます気に入った。龍俊よ。本当にエルンの夫にならんか?」

 

 龍俊は甲高い声で答えた。


 「うっひょーっ。拙者、3D女子との行為には興味ないっす。エルンたん。治ったら、ウサギ柄の白いパンツ履いてほしいっす!!」


 エルンは立ち上がって、龍俊を指差した。


 「こ、この無礼者っ!! お父さま、こやつを拷問してください」


 シオン侯爵は、呆れ笑いした。


 「やれやれ。エルン。お前の命の恩人なのだぞ。もし、病に気づかずに、王族にうつしでもしたら、我が家は取り潰しになったやもしれぬ。それに、エルン。龍俊殿は、わたしの客人だ。人を指差すものではない」


 エルンは真っ赤な顔をして下を向いた。

 指を下げてエルンは言った。


 「龍俊殿。申し訳ありませんでした。お詫びに、何かしてほしいことはありませんか?」


 龍俊はくるくると回り出した。


 「エルンたんっ。パンツは2日くらい履いたヤツにして欲しいっすー!!」


 エルンは唇を噛んだ。


 (こんな変態めたぼ親父。わたくしは絶対に認めないんだから

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