表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/31

第4話 おじさん、少女に再会する。

 

 2人は東に向かってひたすら歩いていた。

 

 時々、龍俊は立ち止まって岩に腰をかけたり、木や草をいじったりしていた。


 メルファスはその様子を見て、ため息をついた。


 「何やってるのよ。はやく行きましょう」


 龍俊はメガネをあげた。


 「無理でござる。拙者、アラフィフのメタボ故、ただ歩くだけでも苦行なのでござる」


 メルファスは深いため息をついた。


 (歩くだけで疲れてるとか、一般人以下じゃない……。魔王討伐とか絶対無理でしょ)


 すると、遠くから砂埃が上がってきた。


 目の前に馬車が止まり、少女が降りてきた。

 少女の名は、エルン・フォン・ルーベルラルク。


 先ほど、龍俊に救われた少女だ。

 少女は言った。


 「あんな屈辱をうけて、もう、わたくしは恥ずかしくて、外を歩けません」


 龍俊はメガネを上げていった。


 「はて。拙者が何かしたとでも?」


 エルンは真っ赤になっていった。  

 龍俊を指さした。


 「わ、わ、わたしの大切なところを舐め回すように見て、匂いまで嗅いだじゃないっ!!」


 「正直、見たくもないもの見せられたでござる。こっちが損害賠償請求したいくらいでござる」


 「ルーベルラルク侯爵家の娘として、も、もう。あなたと結婚するしかないのです。あんな屈辱。それしか、帳消しにできる方法はないのです!!」


 「嫁? 拙者の嫁は2次元だけで十分っす。そんなに結婚したいなら、パンツを履くことっす。話はそれからっす!!」


 「ぱ、パンツ。それはなんですか?」


 龍俊は両手を開くようにあげた。


 「もうお手上げっす。これ。これのことっす」


 龍俊はメルファスのパンツを広げて見せた。


 メルファスが「ちょっと」と声を上げた時には遅かった。メルファスのパンツは、皆の晒し者になってしまった。


 龍俊は言った。


 「それよりも、きみっ。人を指さすのはやめた方がいいっすよ? 普通に失礼っす」


 「あ、ご。ごめんなさい……って、あんたにだけは言われたくないわっ!!」


 エルンは、そうはいいつつも指を下げた。


 「と、とにかく。パンツについて説明を聞きたいわ。当家の屋敷まで来なさい」


 龍俊は、ルーベルラルク家の屋敷に招かれることになった。


 道すがら、龍俊はルーベルラルク領について色々と聞いた。


 産業や政治体制。衛生環境、文化風俗。その話題は多岐に渡った。


 メルファスは言った。


 「あんた、そんな難しい話きいて、理解できるわけ?」


 龍俊はメガネをあげた。


 「ほとんど理解不能っす。外国語を聞いてる気分っす。まぁ、それを理解するのが、あなたの役目っす。メルたん秘書。ところで、この世界にはスマホはないっすか?」


 「そんなのある訳ないじゃない。なんなの? あんたバカなの?」


 「チッ。ほんと使えないっすね。スマホがなかったら、今日更新の『魔法少女ララカル』がみれないっすよ!!」


 「あんた、そんなアニヲタしてる余裕ないよ。わたしら明日の生活もどうなるか分からないんだから」


 龍俊はメルファスをジト目でみた。


 「いざとなったら、身体で稼ぐっす。それも秘書の役目っす」



 エルンは、その様子を面白くなさそうにみている。


 「あなた達、屋敷についたわよ」


 馬車を降りると、想像を絶する豪邸だった。

 部屋は20はあるのではないか。


 入口には守衛がいる。


 屋敷に着くと、龍俊はさっそく呼び出された。

 謁見の間で、龍俊は跪かされる。


 「わたしは、当家の当主。シオン・フォン・ルーベルラルクである」


 声の主は、40代後半と思われる男性だった。質の良さそうなベストをきて、白いシャツの首元にはフリフリ(シャボ)をつけている。


 眼光は鋭い。

 ただの放蕩貴族ではないことは、その空気感から明らかだった。


 「拙者、山梨 龍俊 51歳でござるっ」


 シオンは頭を抱えた。


 「51? わたしより年上ではないか……。こんな爺さんが、我が高貴なる娘を辱めたとは。許せぬ。許せぬぞっ」


 「うっひよっ。安心するでござるっ。娘殿のような汚股の姫君には、拙者、興味はないっす」 


 侯爵はテーブルの上のグラスを床に投げ、激昂した。


 「侯爵令嬢になんたる言い草。さては、そなた、貴族制に異を唱える異教徒の手先であろう。許さぬぞ。おい、その者を地下牢に連れて行け。首謀者を吐かなければ、殺しても構わぬ」


 龍俊は、衛兵に取り押さえられ、地下室に連れて行かれた。地下室の壁には鎖や数々の拷問器具が掛けられている。


 ジメジメしていて暗い。

 ネズミの鳴き声が、至る所から聞こえてくる。


 それは、およそ人間を苦しめるためだけに存在する空間のようだった。


 龍俊はその一室で拘束されていた。


 「ひひひ……」


 異端審問官(拷問官)が、鞭を片手に龍俊に近づいてきた。



 龍俊は数時間に渡り拷問を受けた。

 歯は数本抜かれ、爪も何枚か剥がされている。


 拷問官は言った。


 「そろそろ吐いたらどう? お嬢様に近づいたのは、異教徒の悪しき企みなのだろう? 言っちゃいなさいよ」


 龍俊は、真面目な顔になった。


 「拙者、この程度の拷問には慣れているっす。肉体の痛みなど、皆に笑われながら蹴られるより、ずっとマシっす。拙者はただのオタク。異教徒などとは、一切、関係がないでござる」



 誰かが、石廊下を走る音が響き渡った。

 それは衛兵だった。


 「侯爵閣下が、お前から話を聞きたいと言っている」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ