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なろうラジオ大賞6

明日のない日めくりカレンダー

作者: 夕日色の鳥
掲載日:2024/12/04

なろうラジオ大賞6参加作品です。


 人生の日めくりカレンダーは突然に次の日がなくなるものだ。








「ペンギン!」


「あんまり急ぐなよ」


「へーきへーき!」


 躓いて転びやしないかと焦る。


「かわいー」


 手すりから覗き込む姿は昔のまま。

 幼馴染みだった頃によく来た水族館に、今は恋人として来ているのだから不思議だ。


圭介(けいすけ)、見て!」


 振り返って笑う愛香(まなか)が愛らしい。

 頭のニット帽が脱げないか心配になるが。




 大学時代に告白。

 やっと言ったかと言われて恋人に。

 そこから数年。

 そろそろ結婚かなと思っていた矢先。



「ふぅ」


「大丈夫か?」


「うん、ちょっと疲れただけ」


「座ろう。

 薬の時間だ」


「うん、ありがと」




 末期だった。

 余命宣告をされた。


 泣いた。

 皆で泣いた。


「ごめんねー」


 愛香は笑った。

 泣き腫らした目で。

 別れていーよと言われた。

 絶対イヤだと答えた。

 愛香はまた笑った。






「そろそろだな」


 そのあとも思い出の地を巡った。

 途中から車イスを押した。

 看護師がずっと帯同してくれている。

 多くの書類にサインをした。

 愛香のご両親も許してくれた。





「着いたぞ」


「……」


 結婚式場に着いたが愛香は眠そうだった。


「眠いか?」


「うん、ちょっとね」


 分かってる。

 これはきっと最期の眠りだ。


「でも嬉しいから平気」


 愛香が笑う。

 嬉しいのに悲しい。


「キレー」


 チャペルへ。

 ニット帽の上にベールだけを被らせてもらい、俺は愛香の前にひざまずいた。


「愛香。俺は生涯をかけて君を愛することを誓う」


「誓わなくてもいいんだよ」


 愛香は笑った。


「いや、誓う。

 昔も今も、この先も。

 俺はずっと世界で一番愛香を愛してる」


「……私はそれを果たすわ」


「え?」


「私も生涯をかけて貴方を愛することを誓う。

 で、もうすぐそれが証明されるの」


「……」


「私は、生涯をかけて、貴方を愛した……」


 泣きそうな笑顔。


「愛香……」


 ベールを上げる。


「……ん」


 愛香が目を閉じる。


 誓いのキスは、俺の涙のせいでしょっぱかった。


 俺たちの夫婦としての時間はほんの数分で幕を閉じた。











 一人の部屋で壁の日めくりカレンダーを見つめる。

 これをめくれば、愛香がいた世界が過去になる。


 きっと俺の人生はまだ続く。

 でもいつ終わるか分からない。

 だから悔いのないように。


「……今は、まだ無理だけど」


 声が震える。

 勝手に涙が出る。


 これからどうしていけばいいのか分からない。

 それでも今日を終え、次の日を迎えなければならない。


「……愛香。ありがとう。愛してるよ」


 俺は滲む視界の中で、今日のカレンダーをめくってちぎった。



挿絵(By みてみん)

 たんばりん様作

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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 哀しいお話です。 実際にこういう人に出会ったら、何と言ってあげたらいいものやら分かりません。
うおおおおん!!!!(ブワッ)
最後の一行に含まれたさまざまな感情よ(๑•̀ㅂ•́)و✧
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