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なないろ  作者: 小塚彩霧
1/1

隣の幼馴染

ゆるゆる設定の短編集になる予定。

何も考えてない書き下ろしです。

「おーい!公園行くぞー!」


玄関の前でいつもの叫び声。

はーいと返事をして家から飛び出す。


「今日の練習にお前を入れてやるからな、しっかり守備練習するんだぞ!!」


頼んでもないのに毎日私を呼びに来る。

隣のワンパク野球少年の(あつし)だ。


私は運動神経が皆無で、特に球技は全くできない。

だから誘ってくれなくてもいいのに、って毎日思ってる。


「ねぇ、あっちゃん。私、野球できないから守備とか言われても困るよー。」

「だから毎日特訓してやってるじゃん。奈々(なな)もできるって、自信持てよ!」


私、本当は家でお絵描きとか編み物とかするのが好きなんだよ。

野球は、あっちゃんがやってるから見てるだけで、あっちゃん以外はどうでもいいんだよ。

なんでわかってくれないのかな。


「おー!篤!!おせーぞ!なんだよ、また、奈々連れてきたの?」

「そうだ!コイツを一人前の選手にするんだよ!」

「えー、奈々、フライとか取れる?取れないだろ?ベンチで見学のほうがいいんじゃねえの?」

「なんでだよ、見てるだけなんて可哀想だろ!みんなで一緒にやるほうが楽しいに決まってる!」


運動できるヤツの謎理論。みんなでやったほうが楽しい。

そりゃできる人はそうなんだろうけど、できない人からしたら針のムシロだよ?

あっちゃん以外のメンバーが苦笑いして、私も愛想笑いで返す。


「フライが来たら逃げてね。ゴロだけ取ったら良いよ。」


あっちゃんの友達がこそっと私に耳打ちした。

あっちゃんより男前だー!!!

でも、私、そんなあっちゃんが好きなんだよね。


あっちゃんはね、頑張り屋さんで、毎日ピッチングと素振りを欠かさないの。

ちゃんと野球チームにも入ってて、土日の試合の日は私も見に行くんだ。

白いユニフォーム姿がカッコよくて、足も速くて、ピッチャーで3番で。

あっちゃんが打った日は必ず勝つんだ。


あっちゃんは、最初から天才だったわけじゃなくて、ボロ負けして、泣いて帰ってきた日がある。

下級生の中で一人だけ選ばれたレギュラー。でも、あっちゃんのエラーでその試合は負けた。

6年生の最後の試合だったのに、自分がエラーしたから、打てなかったから。

6年生たちも泣いていたけど、一番泣いてるのはあっちゃんだった。

それから毎日、一生懸命練習している。


あっちゃんの顔が見たくて、晩御飯の前の毎日の練習に付き合ってる。

時々、私にも教えてくれるんだよ。ボールの取り方とかバットの振り方とか。

一緒に野球の試合に出れるとかそんな事は考えたことないけど、あっちゃんが一生懸命なのと、あっちゃんが好きなものを私も好きになれたらいいなと思って。


「奈々!」


呼ばれてハッとする。ノック練習のくせにゴロじゃなくてフライだ。


「奈々!取れるよ!よく見て!」


ボールが放物線を描きながらこちらにやってくる。

ちょうどいい場所に落ちてきそうだとグラブを構えたけれど。


「奈々!!」


ガッと鈍い音がした。

ボールはグラブの真ん中に入らず、端を掠めて私の顔面にヒットした。

目の前にチカチカと星が散り、真っ暗になった。


「奈々!奈々!大丈夫か!?」


クラクラした頭を押さえつつ、目を開けると私の顔を覗き込んでるあっちゃんの顔が見えた。

どうやら、そのままぶっ倒れたらしい。


「う、ううーん……。」

「奈々、ごめん!!俺がフライを打ったから……。」


あっちゃんに抱きかかえられるようにして起き上がると、ポタっと赤い雫が白いズボンの太ももに落ちた。


「!!?」

「うわー!!奈々!鼻血!!大丈夫?痛い?」

「痛くはない……。」


またそのまま気を失ってしまった私を、あっちゃんは泣きながらおぶって帰ってきたらしい。

次の日謝りに来てくれたけど、もう、野球には誘ってくれなくなった。

練習に付き合うのもなんとなく気まずくて。

野球部のマネージャーとかにはちょっと憧れてたんだけどな。

そのまま疎遠になってしまった。


いろんなアツシ詰め合わせ。

名前縛りでいくつか小話書きます。

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