1
生活保護・ホームレス・恋愛ができない人は、だめなやつだ。ただ、努力が足りないだけだ。
でも違った。みんな頑張っているのに、
でも、電車の中で何をしているのかといえば、大抵は遊んでいる。
わけがわからない。
みんな必死になりつつも、実際はなにもしてないだけじゃないのか? そんな気さえしてくる。
才能がある人は羨ましい。そんな天から与えられた才能、少ない努力で他の人より圧倒的にうまくこなしてしまう人がうやましい。
才能は運で決まってしまうのか?
努力して技術を身につけた人は、本当にすごいと思う。だって、自分の力だけで、自分の未来を切り開いていったのだから。そいつに罪はない。
だから、僕は正義(平等)を実行する。
「ソラ」から殺す。
――――――――――
「ソラ、そっちもってくれ」
「うん」
「よいしょっと」
そう言って、二人は一緒にテーブルを持ち上げる。
「あ、ちょっと、テーブルの上の荷物が……」
ソラは両手でテーブルを支えていたが、片手をはなし、窓の外を指差す。
「ユーマ、あそこ」
「いや……別に何も見えないけど?」
「何言ってるの、いつものだよいつもの」
「いや……なんですけど」
「だめだよ、ユーマ社会不適合なんだし、他の人と少しは仲良くしないと」
「ひどくね?」
「実際そうでじゃない?」
少し大人びた声に変わる。
「おー、優香。雑用係」
「誰が雑用よ? せっかく手伝いに来たのに」
「あ、ユーカ」
「おはよ、ソラ」
「うん。手伝いに来てくれたの?」
「そーだよ。……それにしても、公園がうるさいから、引っ越すのね」
「いやいや、誰もそんなこと言ってないけど」
「でもそうなんでしょ?」
「そーなの?」
ソラがそれだけなの? みたいな顔をして質問する。
それもそうだろう。
「いやいや、もっと安くていいのを見つけたからな」
「いくら?」
「1000円」
「それだけ?」
「いやー、別に公園が見えるのは変わらないだけどさ、あの公園治安悪いんだよ。みんな悲しい顔してるんだよ。最初は普通の人ばっかだったのに」
「最初は普通だったのにね……というか、悠真が引っ越すと治安が悪くなると思うよ」
「まじ?」
「だって、ソラが慰めに行ってるから、慰めて欲しい人が来てるんじゃない?」
「まあ、それもあるだろうな。でもそれが一番の理由だとは思えないんだよな。俺がこんな会話をすると、みんな嫌そうな顔になるんだよ」
「まあ、ちょっとおかしいもんね。私からしたら面白いけど」
「でも、一番の理由は、もっとさ、面白い人がいる地域に行こうかなって」
「それだけ?」
「いやいや、年収も周りの人の地域に依存するって言うしな」
「でも、幸せとはつながらないんじゃない?」
「いやいや、愛っていうのは金も含めるんだよ。かっこよくても、金がないやつと結婚したいと思わないだろ?」
「そうかもね、悠真モテないもんね」
「ね。俺、自分が稼いだお金を誰かと分けるの嫌なんだよね」
「いやいや、分けるお金なんて無いでしょ」
俺は疑問に思っている。今でも思っている。
真実の愛が、身分も、貴族も、王族だろうと、何もかもを気にしないのが愛なのだとすれば、なぜ身分の高い女性と低い男性の物語が存在しないのか?
物語を、都合よく作っているだけではないのか?
面白ければ、それでいいのではないか?
身分の高い女性と低い男性の話は面白くないだろう。もし、俺が読んだら、プライドを捨てられなくて、嫌になる。もし女性なら、なぜ、低いやつと付き合わなければならないのか? そんなことを考えるのだろう。
別に、悪いことではない。むしろいいことだと思う。
……こんな話、聞いているだけで嫌気がしてくる。見たくなくなるような話、本当はしないほうがいい。
真実ってなんだろう。
「それにしても、引っ越し多くない?」
「おう、ミニマリスト(笑)をやってたからな」
「(笑)じゃなくて、お金がないだけでしょ?」
「環境は大切だぜ」
「あ、ごまかした」
「だって、人は環境によって決まるんだもん。その人の性格はその人の友達を見ればわかる」
「その理屈だと、私、悠真とソラと似たような性格になるってことなんだけど?」
「当てはまってるじゃね―か。昔と比べたら、だいぶ似てきてる」
「ほんと、いいんだか悪いんだか。主に悪くなってきてるような気はするけどね」
「そうだな。個性個性って、個性的だと社会から孤立しちまうもん」
「そうかもね」
悠真とお手伝いさんの2人で作業を進めていると、楽しそうな声がしてくる。
それに2人は気づく。
「ほんと楽しそうね……そのうち、ストーカーとか出てこないといいけど」
「ああ、楽しそうだ」
「どっちが?」
「ソラがに決まってるじゃん」
「変なことにならないようにしてよ」
「そうだな。……気づいてわかることもあるのさ」
「……なにも対応する気ないのね」
少しカッコつけたところに優香は無視してそう応える。
「実際に起きたら対応するよ」
「どうやってやるのよ?」
優香は疑い、具体的な方法を聞く。それもそうだろう。悠真の言っているなにか事件が起きたら対応するは、ソラが実際に経験してもらって、わかってもらうことを目的にしている。ならば、起きる前に起きた後について対応を考えておかなければ、起きてすぐに対応することは難しい。
「術でも使うさ」
「いやいや、あのわざ、現実世界じゃ使えないじゃん」
「えー、この氷が使えればなー」
「だだをこねない。あと……いちいち使わないでくれる? なんかめんどくさいから」
「同意。術を使うと、俺が二人になって現実世界と他の次元の世界」
「言葉にしにくいし、2人を操作するってのは、すごく奇妙な感覚よね」
「だな。しかも、別次元の世界で起こったことはすべてなかったことになって、現実世界だけが優先される。……俺の作った氷でかき氷やとかできないんだなー」
そう言いながら、俺は自分の作った氷を自分のpcに向かって投げ、壊す。しかし、ある程度の時間が経てば、元の世界に戻り、pcが壊れたということはなかったことにされる。
「どっちかっていうと、ソラのほうがすごいけどね」
「というか、ソラは特別だな。だって現実世界に応用できるんだもん」
「意味わからないのよね。術者からは恨みかいそうよね」
「そうだな、優香のも面白いけどな」
「なによ」
「いや? なんでもない」
優香は少し苛立ちをあらわにし、悠真はそれを避けるように受け流す。
「ほんとうまく出来てると思う……一般人に誰も迷惑をかけないで、面白い遊びができる」
「そうね」
「にしても、勉強しなきゃ―って感じで、術を使えば2倍以上の効率で勉強できる―って思って勉強したら、いつもよりもぜんぜん勉強進んでなかったの」
「それ悠真が悪いんじゃない? どうせ寝てたんでしょ?」
「いやいや、ちゃんと勉強してたような」
「まあ、そううまく使えないものね」
そんな事を言っていると、公園からソラが戻って来る。
「ユーマ、なんで術使ったの?」
ソラは少し嫌な表情を見せる。
「ごめんなさい」
「ならばよし、サボってないで、引っ越し手伝ってよね」
「はい」
「あ、また公園にいる」
「ポケモンに草むらで遭遇するより頻度高いな」
「悠真いってきてよ」
「えー、……ぐwあっ。ぎっくり腰。これ絶対ぎっくり腰だわ」
「ぎっくり腰って腰でしょ? なんで、お腹おさえているの?」
「やべ、ピラニア。持病のピラニアきた」
「魚? ヘルニアのこと?」
「あ、そう、それ」
「こうやれば治るんじゃね?」
そう言ってソラは
「死んだふりね」
「うんうん」
ひどいコイツら。絶対、テレビとか電子機器壊れたとき叩いて壊そうとするな。
「少しは、心配してくれたらどうなんですかね?」
「ほら、ピンピンしてる」
「そんなことより、ほら、公園」
「そうだな。悲しそうにしているやつがいるな」
またいる。なぜだろう。さっきとは違う人だ。
「……ユーマがいってきて」
「俺に誰かを救う義務はないと思うんだけど?」
「いいじゃん」
ソラは悠真をけり、窓の外へとほおりだす。悠真は2階からきれいに着地を決めることはできずに、地面へとつっこむ。
「おい、そこでなにしてんの?」
なんか、見られて恥ずかしい。そんなことを隠すようにその言葉を口にする。
「……」
悠真の話した言葉に驚いたのか、悠真の汚れた格好に驚いたのか、とにかく、一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに冷静になろうとする。
「あっちの方にいい崖があるぜ」
「ぐrうあ」
「ヘイヘイ」
ソラは口をぷく―っと膨らませながら、アメリカンスタイルで突っ込みをいれる。
「呆れた」
悠真の行動には、さすがの優香でもあきれたようだ。
「いやいや、恋愛ってそういうものだろ? 相手を落とすためにな」
「自殺しろって意味じゃなくて安心したけど、あっちに崖なんてないし、落とすの意味が違う」
「そうよ」
「ほら、ユーカでもわかってる」
「あっちじゃなくて、こっちの崖のほうがいいわよ」
「ゆうかも⁉」
「あっちは本物の伝説の崖よ」
「そうだな、本物の愛とは、相手のために死ぬこともいとわないこと」
「なにが⁉」
「ドラゴンボール的なものでもあれば、生き返ることできるのになー」
「ないし! ていうか、そのままドラゴンボールなんですけど?」
「お、ソラ。最近の若い子でもドラゴンボール見るんだなー、いいな、えらい、えらいぞ」
「日本のほこりだからね……ってちがうっ」
「ほんとうにごめんね。うちのバカたちが」
「だ、大丈夫ですよ」
その少年は笑ってくれる。
「ソラ……っていうんですね」
3人の話を聞いていたのだろう。名前を当てられる。
「うん。そうだよ」
「いい名前ですね」
「この目を隠してて、黒いのがユーマで、この藍色の髪をしてる方がユーカ!」
「んふ」
「紹介ひどいな」
「そうですね……僕は、クウです……なんか、自分より下の存在がいるって安心しますね」
「おいソラ、俺こいつよりクズじゃない自信あるぜ」
「どっちでもいいでしょ?」
「そうよ。もし、私の性格が周りの人からわかるなら、私まで屑になるじゃない。だから頑張ってよ悠真」
「いやいや、お前も含まれてるよ」
優香は、共感してほしかっただけであり、真面目に返答したゆうマニ不満だったのか、普通に悠真の返答自体が不満だったのか、生理中なのかわからないが、少し不満そうな顔をする。
本当に、人間関係って難しい。そして、こんな事を考えるあたり、俺は人間関係に向いてないと思う。どっちかって言うと友達じゃなくて、会社で一緒に仕事しているだけの仲間とか、ワンピースに出てくる麦わらの一味みたいな、仲間をつくるほうが向いている気がする。
「いいですね。皆さん仲良くて、羨ましい」
そんなことを思いつつも、周りからは仲良く見えているらしい。
喧嘩するほど仲がいい。俺はこの言葉が好きじゃないが、この状況には当てはまるらしい。
「そう?」
「文字通り、殺してしまいたいくらい」
「でもあれだよ、殺さないでよね」
そんな事を言いあい、みんなで笑い合う。無駄なことを楽しむのが友達の本質なのだろう。
「大丈夫ですよ。ずっと知ってますよ。君たちのこと」
嫌な予感。冷たい風が背中を通ったような気がした。いや、冷たい風なんて吹いていない。それだけの寒気・悪寒。そんなものを感じた。
「優香、大丈夫みたいだ。俺たちのほうが知能レベル上だわ」
「いや、覗かれてたんじゃない? 公園から」
「いや、ソラこの人見たことない」
「そうなのか?」
「ね? ソラ?」
クウはそうやって応える。
「……」
「おいおい」
どうしたものか?
「うん! だって、蓮じゃん」
「……」
「……」
今度は、俺たちが黙る。
「さすがソラ。それも術なのか?」
「違うよ、臭いで何となく分かるもん」
「すげーな。どこの炭治郎だよ」
「名前出してるし……」
一番怖いのは裁判だな。うん。でも、名前変えるとそっちのほうが罪重くなるんじゃねーの?
スッパイダーマンとか、どこの梅干しですかみたいな感じ?
というより、蓮については本当によくわからない。今でさえ、変装をしていて、性別すらいじることができる。すなわち、簡単にフェミニストを怒らせることができることができてしまう。
ちなみに、俺もフェミニストを怒らせることはできるというか、すいません。
ともかく、術が現実世界にここまで目に見える形で応用できているのは、連くらいしか知らないし、後先、蓮しかいないだろう。しかし、蓮いわく、余りこの世界に干渉してはいけないとのこと。…………わけがわからない。
「何してるんですか?」
灰色の髪をしたソラよりかは年上だが、悠真や優香よりは年下くらいの少年に話しかけられる。
「ん? 知り合いか?」
誰かの周りに集める才能でもあるのだろうか?
「見たことない。……ユーマ臭いニオ」
嫌なニオイ。
最後の言葉を言い終わる前に、ソラは切られ、お腹らへんから、勢いよく血が流れる。