おじいちゃん?
更新遅れて申し訳ないです…
俺、バルトルト、3歳
今、母と父、喧嘩してる
…何でこんな喋り方なのかって?
これが俺がこっちの言語でしゃべれる限界だからだよ。
…まあそんなことは置いておいて、今我が家では父と母が壮絶な話し合い(物理)を繰り広げている。
「そろそろあの子を外に出すべきよ!!」
バゴッ
「ぐっ…!!いや、外の世界は危険だ!!!」
「あなたがそうやって過保護になるからあの子のせっかくの才能が伸びないのよ!!」
ドゴッ
「あがっ…!!し…かしだな…」
「しかしも何もないのよ!!そろそろあの子が可哀想よ!!」
バキッ
「ぶへらっ!?」
…いや、母が一方的に攻撃してただけだった。
何でこんな争いをしているかって、原因は俺だ。
小一時間ほど前、そろそろ村やこの世界についての情報を集めたいと思って
「パパ、僕、外、出たい」
と言ったのだが、過保護な父はこれを拒否。そこに母が来て父の過保護っぷりが俺の才能を無駄にしていると父を責めて今に至る。
「この分からず屋!!!私がどんな気持ちでいると思って…!!」
デュクシ
「うっ!お…俺だってなあ…!!」
おっと、回想シーンしてたら争いはかなり激化していたようだ。
あと効果音小学生か。
そんなことを考えていると…
——グサッ
俺の足元に何かが刺さる音がした
…え?
嫌な予感がしながらも恐る恐る首をそちらに向けるとそこには鈍い銀色の光を放つ尖った存在が…うん、これ、包丁だね。
いや、おかしくない?子供がいるんだよ?
…何を隠そうこの両親、母は著名な双剣使いの冒険者、父はどこかの軍の隊長みたいな役職だったらしく、かなり腕が立つらしい(バルトルト調べ)
だからお話し合い(物理)もそれなりにバイオレンスなんだけど…
もう一度言う。
…おかしくない!?!?
子供がいるのに刃物投げるとかおかしくない!?!?
死ぬから!?俺、ただの軟弱な子供!!!死んじゃうから!?
そんな間にも『オハナシアイ』は続く。
「だいたいあなたがそんなんだから…」
ドゴオッ
ボキッ
「ぐわあぁっ!?!?…だけどお前だって…!」
俺の足元に飛んだ包丁なんて気にせず肉体言語を交わす両親。
…あと、その音はやばない?絶対骨折れたよね?
そんな時。
ふと視界の端にさっきまでなかった黒い影が映った。
「あなたたち、おやめなさい。バルトルトが怪我をしたらどうするのです。」
黒い影…もとい、真っ黒な執事服を着て灰色の髪をオールバックにした渋めのお爺さんが温厚そうな、それでいて鋭い声を発すると場の空気が凍った。
それにしても一体いつからいたんだろう。全く気づかなかったな。
「執…お義父さん!?俺は…その…!これにはわけが…!!」
「シュー…お、お父さん!これはバルトのために…!」
慌てて弁明する両親に鋭い目を向けたおじいさんが冷たい声で言い放つ
「『バルトルトのため』ですか。この子の足元を見なさい。よくもまあそんなことが言えたものですね。」
「「っ…!!」」
何も言えない両親を見て、おじいさんはさらに続ける。
「あなたたちには失望しました。この子は責任をもって私が外へ連れて行きますので、あなたたちは家で反省でもしていなさい。よろしいですね?さ、行きますよバルトルト。」
「う…うん。」
俺はあっという間におじいさんに外套を被せられ靴を履かされた。
父が過保護なために倉庫の奥底で眠っていたよそ行きの青い外套が初めてその役目を果たす。
気づいたら完全に俺の身支度は整っていた。
…心の準備以外は。
…にしても本当にいつ動いたんだこの人…
「さて、準備はよろしいですかなバルトルト?行きますよ?」
「う…うん。」
少し嬉しそうな表情で出発を催促するおじいさん。
外の世界にも行けるし両親もおとなしくなったし、願ったり叶ったりの状況なのだが何だか釈然としない俺。
そんなこんなで俺の初外出が決まったのだった。
…こんな家庭に生まれた俺は泣いていいと思う。
お分かりの方も多いでしょうがこいつ本当のおじいちゃんではないです(後書きで次話のネタバレをしていく系作者)