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とある姉妹と王子の物語


 とある国にとても対照的な姉妹がいました。


 姉は黒い髪で背が高く、大人びて見られます。

 一方の妹は金の髪で背が低く、少し幼さの残る少女でした。

 姉は大人しく人見知りをし、妹は明るく誰とでも仲良くなれました。

 二人には違いがたくさんありましたが、二人は仲良く暮らしていました。


 そんなある日、姉は妹にとある本を見せます。


『私の宝物なんですのよ』


 絵がたくさん描かれた子供向けの本はとある令嬢が王子さまと結ばれるまでを描いた物語でした。

 主人公は金色の髪に青い瞳の女の子。

 明るくて優しい彼女は誰からも愛されていました。


 この物語には他にもたくさん登場人物がいます。

 その中には悪役として恋敵もいました。

 黒髪の大人びた容貌と、キツイ性格をした令嬢です。

 主人公と王子さまが結ばれる一方で、最後まで主人公にイジワルをし続けた彼女は不幸な結末を迎えてしまいます。

 妹は姉に見せてもらった絵本に夢中です。


『とっても素敵な本ね』


 そう言って、姉に笑いかけました。



 ✧



 それから何年もの歳月が経ちました。

 姉も妹も大きくなりました。もう結婚も出来る年齢です。

 姉には昔から婚約者がいました。相手はこの国の皇太子です。

 外見も性格も大好きな絵本の王子さまとは全然違いますが、姉は皇太子のことが大好きでした。


『いつか、私もあの絵本の主人公のように』


 姉はそんな夢を抱いていましたが、現実はうまくいきません。 

 彼女は皇太子を愛していましたが、皇太子はそうではありませんでした。

 いつもいつも、姉に冷たくします。


 一方の妹はとても美しく成長しました。

 その明るさもあり、彼女は多くの男性を虜にしました。

 一体、彼女は誰と結婚するんだろうか。

 多くの独身男性が美しい令嬢の心を射止められるのか、関心を寄せていました。


 妹が選んだのは。

 妹を選んだのは――姉の婚約者であるはずの皇太子でした。


 皇太子は妹を皇太子妃に迎えることになりました。

 そして、その代わりに姉の婚約は解消されてしまったのです。



 ✧



 姉は思い出します。

 大好きだった絵本に描かれていた主人公は妹と同じ金色の髪に青い瞳の少女でした。


 姉は思い出します。

 選ばれなかった悪役と自分自身の見た目がとても似ていることに。


 彼女は気づきます。


 自分は選ばれなくて当然なのです。

 だって、彼女は――悪役の少女とそっくりなのですから。

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