貴族令嬢弟と共にリドの村に向かいます
「クロード爺ちゃん達は明日出立するそうです」
「分かりました、じゃあ今日の夕方までには出ましょうか。先回りしましょう」
「はい!」
グラムを連れてリドの村に行くとなったため、早速準備を始めていた。
旅費と最小限の着替え、蝋燭代わりになる光のスクロール等。
「食料は途中で買うべきか」
食料だけは屋敷の料理人が厳重に管理しているせいで準備が出来なかったが、それ以外は沢山旅をしている経験もあってかあっという間に終わらせた。
それに対し、グラムはやはりというか旅の準備が下手だった。
まあ、グラムは旅なんてしたことないだろうし仕方が無いけど、流石に綺麗な服を何着も持ち、バックがパンパンになるのは違うよねえ。
私らは旅行に行くんじゃないぞ、リドの村へは観光目的じゃない。
という事で、服を元に戻して水筒やら鉱石で出来た剣やら羽織などを優先して持たせた。
あと木剣で行こうとした時は驚いたよ。
木剣で魔獣を倒すってこいつそういう縛りでもしてるのかと思った。
これまで出会った剣士の中では強力な魔獣以外は修行の為に小刀で戦うっていう、強くなるために自分に縛りを課している奴もいたけど、グラムは違うでしょと。
ともかく、私達は昼の間に屋敷を抜け出す事にした。
屋敷を出ると外にいた庭師が話しかけてきた。
「ごきげんよう」
「ルシア様、グラム様もごきげんよう。お出かけですか?」
「ええ、少々街の方へ行こうかと」
「街……ってその恰好でですか?」
庭師は不思議そうな顔で私らを見る。
そりゃそうだ、どう見ても街へ繰り出す格好じゃない。
灰色の羽織に背中にはなかなかの大きさのバッグ、私は立派な杖にグラムは剣を腰に付けている。
子供でなかったらどう見ても旅人だ。
どう見てもカーティス家という貴族家の子息、子女の格好ではない。
指摘され横でグラムがびくりと震えるが、私はそれを身体で隠した。
「ええ、あまり貴族の格好をしては街でばれてしまうでしょう?」
「なるほど。お忍びでという事ですね。しかし護衛が見当たらないようですね……どなたかに確認をしても?」
少々疑っているようだ。
まあ、この庭師はカーティス家への忠誠が厚い、この位聞かれるのは想定内だ。
「ええ、勿論。そうですね……クロードお爺様が見えたら確認をしていただいても構いませんよ」
「クロード様の! それは失礼しました。ではお気をつけて」
「はい、では」
クロードは領主時代非常に良かったらしく、ベテラン従者からすれは神様のような存在らしい。
彼の名前を出せば大概黙ってくれると思った。
「姉さん、クロード爺ちゃんの名前を出しても良かったのですか?」
「ええ、構いません」
むしろクロードなら私が名前を出したのを知れば、私がどこに向かっているかも気付くし、さっきの庭師が私が抜け出すのを、見ていたにも関わらず止めなかった罪についても不問にするだろう。
「では行きましょう」
「は、はい」
グラムを連れ、街までの下り坂を降りて行った。
カーティス家の屋敷は領内で最も大きな街の中にある。
ウトアという、周囲を壁で囲んである街だ。
正面に正門があり、正門近くから奥へ行けばいくほど徐々に家の格も上がっていき、上り坂になっていく。
ちなみに最奥がカーティス家の屋敷となっており、入り口からすれば最も高い所に存在していて、用の無い街の住民は行くこともない。
逆を言えば私らも用が無ければ行くことはない。
治安は決して悪くないが、どうしても街の繁華街は賑やかで外部からの人も多くなる。
良い所の子供となれば人攫いなんて事もあるらしい。
最も、それは他の街の話でこの街でそれが起きたって話は聞かないが。
さて、食料は買った。
長持ちする物を主体に買うとグラムがこれで良いのですか? と聞いて来た。
肉とかを一切買ってないけど……みたいに言われたが、肉なんて買ってどうするんだよ。
干し肉ならまだしも新鮮な肉なんか買っても料理する場所なんてないし腐るわ。
続けて馬車乗り場に来た。
リドの村への直通便は乗り合いの馬車になるそうだが、自分達以外に客はいないみたいだ。
というか普段リド行きに乗る客はあまりいないから、もし今日誰もいなかったらそもそも走らない予定だったらしい。
まあ、客もいないのに走る理由はないよね。
「え、姉さん馬車で行くんですか?」
グラムが不思議そうに首を傾げながら話しかけてきた。
「そうですけど……どうしました?」
「だって馬車に乗ったらすぐにばれるじゃないですか。てっきり裏の運び屋を使うとか……」
誰がそんな事を教えたんだろう。
可能性としてはトドルがそんな職業もあると教えたのだろうか。
「そんなもの使ってどうするんですか、普通に馬車で行きますよ。バレても別に構いませんし」
「良いんですか?」
「ええ」
むしろバレて良いんだよ。
バレたらクロードの性格を考えれば普段より急いでリドの村に来てくれるだろうから、合流が速くなる。
それに、そもそも裏の運び屋なんて子供の私達が使ったら、運ばれる先はリドの村じゃなくて最悪好き者の貴族家だ。
苦笑いを浮かべているとグラムが私を見てニコニコと笑っている。
「……? どうしました?」
「いえ、姉さん活き活きしてるなと思いまして。屋敷だといつもつまらなそうにしていますのに」
「…………」
普段つまらなそうに見えてたのだろうか。
いや、実際つまらなかったんだけどね。
貴族の生活にあこがれた時期はあったけど、こんなに毎日でなくていいよねって話。
多少は面白そうな演技をするべきだろうか。
うーん……ま、それは今考える事じゃないか。
「気のせいですよ。……では行きましょう、すいません」
馬車の御者に話しかけたら最初は子供の冗談かと思ったらしいが、金を出すと大人しく馬車を出してくれることになった。
さて、魔獣討伐に行きますか!
次は二時間後に更新します。