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封印されてた男

「地竜ですか」


 馬車の中で聞かされた話はこうだ。

 普段はカードを渡しに来るのはリニスだけである。


 しかし、今回ブルータスが付いてきたのは、カーティス領に寄ってそのまま南にあるダットリー公国で出たという地竜を倒す為なんだそうだ。


 ちなみにリニスは、完全な事務方と言うわけではなく、剣士でもあり、ブルータス曰くまあまあな腕前なんだそうだ。

 まあまあってどのくらいなんだろう。


「ところで質問があるのですが」

「ん、何かな?」


 静かになったから気になっていた事を聞いてみよう。


「ブルータス……様はレドナ……様の弟子とのことですが今何歳なのですか?」


 そうブルータスは確かに私の弟子だ。

 だが、私が死んだのは100年前、今みたいにブルータスが生きているはずが無い。

 どういう事だろう。


「あ、ああ……それがね」

「封印されてたんですよ」


 困ったように笑うブルータスの代わりにリニスが話してくれた。


「封印?」

「はい、彼は25歳の時にとある魔獣と相打ちになって、そのまま約80年封印されていまして.

ちょうど十年位前に封印から解かれたんです」

「ええっ!?」


 こいつ封印されてたのか!


「そうそう、だから僕が80年ぶりに目を覚ました時にはすっかり魔獣が活発になっていてね。暴れる魔獣を倒しながらも師匠の言いつけ通り、色んな国の王や公爵達にお願いしてお金を集めてこういう協会とかを作ったんだよ。凄いだろう?」


 ふふん……と胸を張る。


 凄いと言っていいのかな?

 協会を作ったのは立派だけど一番の目的である魔獣はまだまだ野放しな気が……。

 じっと見てしまう。


「なんか僕の好感度低い?」

「ブルータス様何かしたんじゃないですか? ていうか地竜討伐に連れて来たからじゃ……」


「ああ、そういう事か。でも大丈夫だよ、僕がいるからね。地竜は確かに強い魔獣だけど僕がいるから万が一にも危険な事にはならないよ」

「ふふ、大丈夫ですよ。普段のブルータス様は頼りにならないですが戦闘という面だけではこの人より頼りになる方はいませんから」


 リニスが安心させるように微笑みかけてくる。

 別にそういう意味で見てたわけじゃないんだけど……。


 ちなみに私を連れて行くとなった時、ルドマンは微妙な顔をしたがクロードが凄い勢いで立ち上がり是非連れて行ってくださいと言い出した。


 クロードはブルータスにあこがれており、孫がブルータスの弟子になるかもとなって相当喜んでいた。

 ついでに自分も連れて行って欲しいと言ったが断られてがっかりしてた。


 馬車で揺られる事数日。

 ようやく着いた場所は山の入り口だ。

 ここからは馬車では難しいらしく歩きになるようだ。


「そういえばこちらありがとうございます」

「ん? いやいや、構わないよ。僕は沢山持ってるからね」


 現在私の手には杖がある。

 いざ出発という時に杖を持ってないと言ったらブルータスが一本くれた。


 彼は魔道具マニアであり笑えない程魔道具を持っているらしい。

 上等だけど、どうせなら屋敷で自慢してた奴が宝石もでかかったし欲しかったんだけど……。


 そう、クロードに載せられてこいつ自分のお気に入りの杖だと、持っている杖を自慢しまくっていたのだ。

 ま、貰い物に文句は言うまい。


 こうして私はブルータスとリニスと共に地竜討伐に向かった。


「はっ!」


 山道を歩いていると小型の魔獣がちらほら出てきている。

 地竜が山の頂上に陣取っている為、弱い魔獣が山の麓まで降りてくるようになったんだそうだ。


 それで度々戦闘になるのだが、私が動くことなく、リニスがあっという間に倒してしまっている。

 ていうかこの人の剣凄いな。

 トドルより遥かに強い。


「リニスさんもカードとか持ってるんですか?」

「ええ、一応シルバーカードを持っています。まあ、あまり才能が無いのでこの程度ですけど」


 へえ、石札持ちって凄い気がするけどね、そもそも私黄色だよ?


「リニスの本職は後方の事務方だからね。まあ、本気で剣士として魔獣討伐を頑張ればゴールドもいけると思うけど。ていうかリニス駄目じゃないか、ルシアさんの腕前が見たかったのに全部倒しちゃ」

「あ! 申し訳ありません」

「いえ、良いですよ」


 とっとと地竜と戦いたいな。

 そう思いながら先へ進んだ。


 魔力を少しだけ込めた杖を地面に着きながら歩く、反応は無い。

 周囲を警戒しながら歩いていると前を歩いていたブルータスがちらちらとこちらを見てくる。


「何か?」


 こいつロリコンだっけか。

 暫く見ない間に気持ち悪くなったな、あんまり見ると目を潰すぞ。


「いや、その……ルシアさんのそれは癖かな?」

「それ?」


 どれ?

 首を傾げると気まずそうに杖を指さす。


「歩くときにその杖で地面や木々を叩いたりするそれだよ」

「ああ、そうですね。これが一番魔獣の接近に気付きやすいですから」


「ふ、ふーん。そうなんだ」

「何か問題が?」


「い、いや。良いと思うよ。僕の師匠もよくそんな事してたし」


 ん? そういえば……。


「ブルータスさんはこれをやらないんですね」

「え、ああ。そうだね。僕は凄い魔導士だからね」


「ちっ!」

「え?」


 おっと、思わず舌打ちをしてしまった。


「なんでもないですよ」


 誤魔化すように笑顔を作った。


「ま、まあ。でも久しぶりに僕もやろうかな! はは……」


 ブルータスが足早に歩いていく。


 こいつ私が口が酸っぱくなるほど周囲警戒の重要性を説いたのに忘れてやがる。

 癖にしろって言った杖での警戒方法もサボっているし、もしこの身体ルシアでなかったら説教している所だ。


 はぁ……と小さくため息をついた。

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