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貴族令嬢付与する

 私は後ろからピッケルドッグの首を一突きする。

 風を纏った杖はまるで鍛えられた剣の如く、ピッケルドッグの肉を貫く。


「グラム!」

「任せて下さい!」


 視界の端ではグラムが剣を振るいピッケルドッグを次々と一刀両断していく。

 村での戦闘時より動きが良い。

 ピッケルドッグがこちらに集中する前に仕留めきる。


「終わりですね」


 全てのピッケルドッグを倒しきった。

 余裕でしたね。

 周囲を一度見てから私はあっけに取られた顔をしている村人達を見た。


「ここにいるって事はセトムさん達でよろしいですね?」

「あ、ああ……あんた達は?」

「私はルシア・カーティス。隣にいるのが弟のグラム・カーティス。あなた方を助けに参りました」



 彼らは辛うじて出来た空間に隠れていたようだ。

 四人いるが一人は軽傷、もう一人は重傷の様ですね。

 このまま放っておけば死ぬかもしれません。


「あんた魔法使いかい?」

「ええ、一応ですけど」

「うわぁ、酷い傷。姉さん、回復魔法を」


 グラムが横から顔を出してくる。

 回復ね、してあげたいところなんだけど。


「私には無理ですね、でもこのまま放っておくのは……」

「ああ、良いよ。村に帰れば多分なんとかなる。だが周囲にはピッケルドッグの群れが多くてね、護衛を頼めるかい?」


「構いません」

「助かるよ」


 森の出口付近まで来た。

 獣の臭いもほとんどなくなったし、ここまでくれば大丈夫だろう。


「では、私達はこの辺で」

「ん? 村まで来ないのかい」

「ええ、大きな魔獣を倒さなければなりませんので」


 私の言葉にセトム達は驚いた表情を浮かべた。


「おいおい、嬢ちゃん達が魔法使いで強いのは分かるがいくら何でも……大丈夫か?」

「私は大丈夫だと思います、グラムは……分からないですが」

「ぼ、僕だって大丈夫ですよ」


「……だそうです、心配ご無用です」

「そ、そうか。まあ俺らも村にこいつらを置いたら救援に来るよ。盾位にはなれるはずさ」


 盾とかになって死なれても困るんだけど。

 一応好意的な申し出な為、ありがとうとだけ言い、再び森の中へ入っていった。


 さっき彼らと合流したところより奥へ向かっていく。

 ちらほらピッケルドッグに会うが遠吠えをされる前に仕留めていく。

 それにしても多いな。


「姉さん、さっきはどうして回復魔法を使わなかったんですか?」


 歩いているとグラムが聞いてくる。

 魔法について詳しくないグラムだからこその質問だ。


「グラム、魔法は万能だと思っていませんか?」

「え、違うのですか?」


 不思議そうに首を傾げる。

 丁度いいから説明してあげよう。


「まず第一に私は回復魔法が使えません。回復魔法が使えるのは水の魔法を使える人だけです」

そう、水魔法の素養が無ければ回復魔法は使えないのだ。

「魔法にはいくつか属性がありますが、基本的に魔法使いが使えるのは一属性の魔法のみです」

「そうだったんですね。じゃあ普段使ってるのを見ると姉さんは風だけですか? ……あれ、でも村で使ったのは……あれ?」


 痛い所を突く。


「風ではないです。あれは魔法ではなく術の部類ですね。付与術と呼ばれる身体能力を上げたり下げたりできるものです。風とはまた違います」


 そう、私は付与術も使えたりする。

 昔、レドナだった頃から使えていたものだ。


「へえ、じゃあ姉さんが使えるのはその風の魔法と付与術っていう術だけですか?」

「……いえ」


 私は否定する。

 実はいうと私はもう一系統魔法が使える。

 風と違って使い勝手がそれ程良くないから普段はあまり使わないけどね。


「3つって事ですか、凄いですね」


 尊敬の眼差しを向けてくるが止めて欲しい。

 これは努力で出来るようになったわけじゃなく、運で出来るようになっただけだからね。

 別に称賛されるような事じゃない。

 まあ、練度を上げる為に多少努力はした、多少はね。


 雑談を挟みながら進んでいくとようやく奥へたどり着いた。

 目の前にあるのは入り口の広い洞窟だ。

 周囲をピッケルドッグがうろうろしている。

 こちらが風下になっている為、気づかれてはいないようだけど……。


「姉さん、あれ」


 グラムが指さす方向に死体が転がっている。

 遠目にも所々食われた痕が見える、村の人らだろう。


「酷い……」

「埋めた後、遺品だけでも持って帰りましょう」


 そのまま様子を見ているとそれは現れた。


『ヴァアアアアア!』


 獰猛な叫び声。

 現れたのはアックスヘッドと呼ばれるピッケルドッグの上位種だ。

 二足歩行で動き、手にアックスを持つ確実に犬とは言えない魔獣。


 ピッケルドッグの作る武器より遥かに大きなアックスを生成し、それを武器に戦う魔獣で、恐らくクロード達が重装備で来ても苦戦していただろう。

 見たところでかいのは一匹だろうか。


 一応様子を見てみるか。

 思いつつ、ちらっとグラムを見る。

 まず間違いなくグラムでは勝てないし、攻撃が当たったらグラムは死ぬかもしれない。


「グラム」

「なんですか?」

「あれの相手は私がします。グラムは周りのピッケルドッグをお願いします」

「な、どうしてですか! 僕もあいつと」


「無理です、グラムでは一撃で死にます。グラムはまだ若い。身体が出来上がってからでもいいと思います。それとも姉さんの命令が聞けませんか?」

「……分かりました」


 グラムは渋々頷いた。


「でも若いって姉さんだって僕と変わらないじゃないですか」


 ぶつぶつ文句を言っているが、そういえばそうだ。

 つい年長者の様に言ってしまうな。

 まあ、いいや。

 とりあえず……付与だけしとくか。


「では飛び込む前に……」


『かき鳴らせ、軽動快走』


【アクセルサイファー】


 白いオーラが二人の周囲を纏う。


「これは?」

「加速の付与術です。これが付いている限り移動が速くなります。時間制限があるので切れたらかけなおさなきゃいけませんけど」


 私は杖を握る。


「じゃあ行きますよ、周りのピッケルドッグは任せました」

「はい!」


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