移されたのはタダの風邪
案の定、感染しました。
私に。
発熱はないが、粘度の高い洟が止まらず呼吸が苦しい……
新人君と同じ症状です。
確かに、この状態でマスクを装着するのは苦しい。
新人君が頑なに顎マスクだった理由は完全に理解。
だが、待って欲しい。
新人君は「マスクすらできないレベルで呼吸状態が悪化」していたのだから、素直に早退して病院に行けばよかったのではないだろうか。
私が何の問題もなく健康だった時期は、人生の初期九年間のみです。
小学三年の秋、大気汚染が原因で気管支喘息に罹って以来、断続的に合計数年程度の寛解期はありましたが、未だに治っていません。
小学生の頃は、今のようないいお薬がなかったので、深夜や早朝に救急車のお世話になることが多かったです。
処置を受ければ割とすぐ復活するので、二~三時間様子を見て「帰っていいよ」と言われ、入院経験はありません。
体育の授業は見学しがち、遠足も、六甲全山縦走のハードな場所の回は、足を骨折した子や心臓病の子たちと一緒に学校で特別授業。工作とかしました。
小児科で何度も、持病以外の病気に罹ったら、なるべく早く受診するように言われて育ちました。
そんなワケで、風邪などの感染症にはなるべく気を付けて暮らしています。
新人指導当時の私は、喘息の薬を常用しなくてもいいくらい体調がよかったのですが、この風邪の感染で一気に悪化。立ち上がっただけで息切れしました。
枕二個とタオルケット、バスタオルで傾斜をつけた布団で安静にしても喘鳴。
トイレなど最低限の動作ですら息切れして苦しい。
呼吸するたびに気管で痰と空気が絡まって苦しい。
近所の病院は連休です。
役所の広報紙で、休日診療の病院の地図を確認しました。元気な時なら歩いて行ける距離でしたが、この息切れでは辿り着ける気がしません。
タクシーに乗ると、運転手さんに感染させ、そこから他の乗客に移す可能性があります。
当時は阪神・淡路大震災のせいで住宅事情が悪く、家族バラバラの一人暮らしでした。
救急車……?
いや、でも、風邪で?
でも、座るのも苦しいし……?
いや、でも、咳の反動を使わなくても息できてるし……?
でも、こんな喘鳴がしてるし、斜めに寝ても苦しいし……?
いや、でも、窒息レベルの発作起こしてるワケじゃないし……?
呼吸困難で酸欠。
酸欠で判断力が低下したのもあるでしょう。
散々迷った挙句、子供の頃(昭和)の【重低音の咳が連続し、咳の反動を使わなければ呼吸できない大発作】(=咳込む体力が尽きたら窒息死の可能性アリ)を基準にした為、結局、買い置きの野菜ジュースとレトルトのお粥で、セルフ看病の連休を過ごしました。
連休明け、職場の近所の病院に行ったら、呼吸器内科の医師にキレられました。
「そう言うの、発作だから! さっさと救急車呼んで! 死ぬから!」
タダの風邪のせいで死にかけ? マジか……!
結果的に現在も生きていますが、喘息の急激な増悪で死亡する可能性があったとのこと。
一応、呼吸できてるし、風邪を移されるまでは元気だったし、連休に救急車呼ぶのもなぁ……などと遠慮してはいけなかったようです。
この件で「タダの風邪でも、持病が悪化した場合は救急車を呼ぶ」と学習。
持病のある人は、寛解状態であっても、感染症などで急激に悪化する場合があります。
道理で小児科の医師が、「他の病気になった時も早く来なさい」と口を酸っぱくして言ったワケです。
繰り返しますが、移された病気はタダの風邪です。
タダの風邪で危うく死にかけました。
大丈夫じゃなかった。