第十七話 よふけ の ものおと
いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。
昨日は活動報告で日付を間違えると言うチョンボもやらかし、グッタリな1日でした。
毎日暑かったりジメジメした日が続きますが、みなさんもお体だけでなく、心の健康にも気を付けてお過ごし下さい。
ちなみに今回の話、本編とするか閑話とするか悩みましたが、将来的な話にガッツリ繋がるので本編としました。
はい、火縄銃の弾を斬ることに成功した柳藤十郎信晃です。
恐らく有史でも初めて成し遂げたであろう偉業なんだけど、残念ながら利定くんには理解されず怒られてしまった。
まぁ実際にやってみたら飛んできた銃弾が2つになるだけで、矢みたいに切り払いが出来るわけじゃないのがわかったから良いとしよう。
あと最近ようやく武器の耐久値が見えるようになったのだ!太刀を下賜されてから約2年、最初は周りの武将に、最近は刀工に師事しながら刀の手入れやら良し悪しの見極め方を学んでいたんだけど、ある日突然、「この刀、傷んできている気がする」という感覚を掴めるようになった日があった。
どうも日々の手入れで耐久値も回復させられるが、その程度によっては最大耐久値が減少していくシステムのようだ。まだ詳しくは検証出来ていないが、耐久値が半分になってから手入れをすると最大耐久値が10下がるみたいだ。
今の相棒のステータスはこんな感じ。
武器名 :無銘・直江志津兼近
武器種 :太刀
攻撃力 :4
耐久値 :110/200(250)
技術 :剣術(太刀) >熟練度 100/100 習熟
習熟特典:器用+1
必殺技 :二連撃 >熟練度 250/250 習熟
習熟特典:力+1
今回銃弾を斬ることで耐久性がガッツリ落ちる結果となった。銃弾1発で耐久値30じゃ今の相棒だと6発斬ると壊れてしまうことになる。ちょっと割に合わないね。
ということで銃弾は切る方向じゃなくて弾く方向に行くことにする。
掴むのも試したい気はあるけど、やってみて手のひらを貫通しましたとかなったら笑えないからまだチャレンジはしない!極限状態であれば銃弾を見切るのは余裕だから避けるのも出来る。でもこれから先、多分俺の後ろには誰かしら味方がいる。避けた事で後ろの人に銃弾が当たってしまっては意味がないのだ。
という事でまずは橋本一巴さんに意見を聞きにいくことに。この人は火縄銃の扱いに関しては非常に柔軟で、初めて三段撃ちを目の当たりにした後、その問題点と解決策を共に考えた仲である。
ただ流石の一巴さんも避けるのはともかく弾くとなると想像もつかないようだ。
そこで一緒に具足師の元へ行って案を考えてみることになった。
具足師も弾を弾く手甲というのは初めての注文だったらしく、一緒に頭を抱えることに。
「正面から受けてしまうと撃ち抜かれてしまうから例えば手甲に丸みをもたせて、滑らすように弾くとかはどうかな?」
「いやいや、藤十郎殿。それではどこに飛んでいくか分からぬではないか。弾いた先が己の身体では意味がないではないか」
「いや、伊賀守殿。ちゃんと弾道を見極めて自分の身体に当たらない角度で手甲に当てれば問題ないでしょう?」
そう俺が言うと二人から何言ってんだコイツという顔をされる。もうこの顔慣れたよ。
その後火縄銃の弾斬りを披露すると一巴さんは大興奮、具足師は引いていた。
俺が弾道を見極められるとなったところで議論再開だ。
「となると材料ですな。通常の鉄では鎧と同じく貫かれてしまうでしょう」
「多々良鋼はどうだ?刀の様に鋭くすれば弾を斬れるのだ。丸みを与えて、そこに藤十郎殿の技量が加われば弾けるのではないか?」
「いや、確かに良い物ですが藤十郎様が求めておられる、戦場で何度も弾けるとなるとそれでも足りませぬ。何かもっと硬く、それでいて粘りのある材料があれば…」
『連続クエスト「玉滑りの籠手」がアンロックされました。クエスト「鎧具足の材料を探せ」がアンロックされました』
お、システムメッセージさん。最近はちゃんとクエスト発生を教えてくれるようになったお陰で見逃しがなくて助かるなぁ。デレかな?
『クエスト:玉滑りの籠手
戦働きの褒賞として藤十郎の為の具足を作ることが許された。藤十郎は今後の戦の為に火縄銃の弾を弾く手段が必要だと感じ、具足にそれを盛り込むことにした。
解決報酬:経験値2500、玉滑りの籠手 ×1
』
『クエスト:籠手の材料を探せ・1
藤十郎の求める籠手を作るために多々良鋼よりも硬くそれでいて粘りのある金属が必要となった。その金属を探し出せ。
解決報酬:経験値1000、金剛鉄鉱石 × 50
』
おぉ、ついにファンタジー鉱石アダマンタイトきたよ!
だけど鉱石からってことはインゴットを作る必要があるだろう。いきなりファンタジー鉱石持ってきても精錬できる人がいないだろうからなぁ。鉱石の数が多いのはその職人を育てろって意味も含まれているのか?となると一朝一夕じゃいかんぞ、このクエスト。
「うん、材料はこちらでも探すから、一度多々良鋼で作ってもらえませんか?鉄砲隊に一人で突っ込むとかでない限りは何回もの連射に耐えるだけの耐久性はいらないし、まずは多々良鋼製の籠手の実力をみてみませんか?」
俺がそう言うと、二人は渋々納得してこの場は解散となったのだ。
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「藤十郎、今宵は一緒にいてくれない…?」
出会い頭に突然そんなことを言い出した市に俺は大人の対応をすることにした。
「お、おおお、おお落ちつけ!確かに俺は市の事を好ましく思ってはいるが、ままま、まだ市は子どもじゃないか!そ、そういうことはもうちょっと、おお大人になってからだな…!」
「っ!こっ、このうつけ者!わ、私以外の者にそんな事言ったら即刻首を撥ねられるわよ!」
どうやら盛大にやらかしたらしい。
顔を真っ赤にさせた市がポカポカと威力のない拳で肩を叩いてくる。
ふっ、美少女からあんなこと言われて年齢=彼女なしのキリン系男子に大人の対応なんて無理やったんや!
しばらくポカポカされていると落ち着いたのか、市が理由を話し始める。
「こほん、えっとね、最近夜になると物音がするの。でも物音のした方に人をやっても何もいないっていうのね。それで最近夜寝るのが怖くて…」
えっ、それマジで一大事じゃん!忍びの者とかだったら命の危険すらあるじゃないか。
「わかった。三郎様に言って許可をもらってくるよ。でもここ数日って、もう少し早く言ってくれればすぐに対応したのに」
そう言うと市は叱られた子供のように目を伏せ、ポツリと理由を話し始める。
「だって藤十郎は凄く忙しいし、最近はなんか楽しそうで、心配かけたくなかったの…」
「馬鹿だな。前にも言ったろ?市が望むのであれば俺は全身全霊を以てそれに応えると。俺にとって市より大切なものはないんだ。もし今回の件で市が怪我をしたら俺はすごく後悔するし、万が一市が死ぬようなことがあれば、俺は壊れてしまって後を追うかもしれない。俺を気遣ってくれるのは嬉しいけど、自分の身を守る事に関しては必ず言って欲しい。俺が君を守るから」
そう言って優しく頭を撫で、頬を撫でると、市は猫の様に目を細め、己の手で包み込むように俺の手に触れてくる。
「ありがとう。でも私にとっても藤十郎は一番大切な人なのよ?私の為に危ない事をしないでなんて言わない。でも何があっても無事でいて欲しいわ」
「あぁ、それが市の望みであるのであれば」
そう微笑む市の笑顔に、俺は強く頷くのであった。
『クエスト「夜更の物音」がアンロックされました』
システムメッセージさん、ありがたいけど空気読んで欲しかったっす…
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そして草木も眠る丑三つ時、俺は市の部屋の前で待機する。
市は横にいて欲しいと言っていたが、流石に許可が下りなかった。久々に三郎様から本気の殺気を向けられたぜ。
ただ俺の職責的にも今回の件は看過できないという事で隣の部屋にいることは特例で許された。
今のところ何も不審な点はない。不安からか先ほどまで起きていた市も寝たのか、己の呼吸音と、外から聞こえてくる虫の声だけが部屋の中に響く。
そうしてただ刻々と時間が過ぎていく…
ミシッ
物音がした。この部屋!?俺の"気配察知"には何も引っかかっていない。となると相当の手練れの可能性もある。
俺は音のした方に目を向ける。目が慣れているのでこの暗闇でも見逃すことはない。
ミシッ
また音がする。畳を踏み締めるような音だ。しかも音からすると確実に近付いてきている!
ミシッ
再びの音。その瞬間、目の前に気配を感じる。姿は見えないが何かがいる。
全身が総毛立つ感覚に、俺はとっさに飛び退き、市の寝る部屋を背にして刀を抜く。
ミシッ
また近付いてくる何かに対し、俺は見えなかろうと、確実に斬るという強い意志を込めて刀を振るう!
何かを切った感触は当然ない。だがその斬撃の後、不審な音がする事はなかった。
『クエスト「夜更の物音」を達成しました。経験値と報酬を手に入れます』
システムメッセージがクエスト完了を告げる。これで終わり?一体何があったんだ?
『クエスト:夜更の物音
市の寝所で起こる不審な物音に対処する為、藤十郎は不寝番として事にあたるが、音の正体は目に見えない何か。藤十郎が刀を振るうとその何かの気配はなくなったのだった。
解決報酬:経験値1250、にっかり青江 ×1
』
結局正体はわからず終いか。しかしどうやらこれで事件は解決らしい。
報酬はにっかり青江。これ、たしか将来の柴田勝家の愛刀だよな?クエスト報酬は毎回出しどころに困る武器が多いんだよ…
武器名 :にっかり青江
武器種 :小太刀
攻撃力 :4
耐久値 :250/250
技術 :剣術(小太刀) >熟練度 100/100 習熟
習熟特典:器用+1
必殺技 :霊切 >熟練度 0/300 習熟不可
習熟特典:妖力+1
ついに妖力が!と思ったが"霊切"はグレーアウトされており、選択ができなかった。ステータスを見ても妖力は"-"のままだし、いつ解放されるんだ、これ。
とりあえず"霊切"の習熟条件がわかるまでアイテムボックスの肥やしだなぁ。多分妖力の開放が条件なんだろうけど。
クエスト報酬を確認し終えた俺はそのまま朝まで不寝番を続けたのだった。
こうして夜更の物音騒動は解決された。
あの日以来、市が物音に悩まされることはなく、事を解決した俺は三郎様から経緯を聞かれ、その全貌を話した。
三郎様が言うにはこの世には妖や鬼と言われる存在がいるらしい。その手の事は陰陽師が詳しく、いずれ機会があれば聞いてみるといい、とのこと。
陰陽師と言えば京都。信長は足利義昭を奉じて京都に向かう。ただこれは後10年以上も先の話だ。その時まで妖力はお預けなのかなぁ…
早めに妖力のステータスを上げたいと思うも、陰陽師の伝手がない以上どうしようもない。
悶々としながら俺は御館を後にすることになったのだった。
色々ご意見頂いた所属と忠誠ですが、多くの意見を頂いた個人名をつける方向で修正をかけていきます。
とは言うものの複数の話で複数の人物につけているので、順次修正していきます。
ご意見ありがとうございました。
感想については返信が完全に追いついていませんが、すべて拝見させて頂いていますので、ご了承下さい。




