Re:Struggle!
「あ…れ…?」
ミナは異変に気づく。先程切り裂いた体が、引き込まれるかのようにマグマへと戻っていくのである。そして、マグマがその体を飲み込んだかと思うと大規模な爆発を起こした。ミナは運良く距離を置いていたため、爆発によるダメージは受けなかった。しかし、煙の中から現れたそれは目を背けたくなるものだった。
「嘘でしょ、さっきので終わりじゃなかったの……?」
先程倒したはずのモンスターはマグマと合わさって更に強力なモンスターへと姿を変えたのである。
「うーん、まぁマグマも炎も消えてるし、これでラストなんだろうけど…流石にこれはきつくない?」
それは、人型であるが明らかにサイズがおかしい。全長10mくらいはあるだろうか。
「はぁ…こんなことなら普通のクエストを受けるんだったぁ。というかこれ絶対初心者向けじゃないよね!?」
そう。これは言わば運営からの意地悪である。もし運営がこの状況を見ているならば、黒い笑みを浮かべていることだろう。
「とりあえず、まずは相手の攻撃を見たいけど、食らったら間違いなく即死だろうなぁ。さっきみたいに、真っ二つっていうのも無理そうだし…」
ミナは対処法を考えるが、当然それを待ってくれる相手などいない。人型マグマは両手を組み、叩きつけるようにミナを襲う。しかし、巨体というのもあり、先程の突進に比べれば余裕で避けられるものだった。だが、圧倒的な破壊力は多大な衝撃を生み、その衝撃によりミナはフィールド端まで吹き飛ばされてしまう。直撃ではないため、ダメージは少ないが、厄介なことに変わりはない。
「っタァ、これ直撃したらHP満タンでも1発だろうなぁ…ってあれ?もしかしたら……」
人型マグマの攻撃による衝撃を少しでも抑えるために、よく観察してて気づいたもの。それは、頭部に光る宝石のようなものである。
「とりあえずあれが弱点だとして、でもどうしたら…」
攻撃を避けては吹き飛ばされてを繰り返すうちに、ミナのHPは残り5%になっていた。恐らく、あと2回でも吹き飛ばされればHPは0になるだろう。そんな、危機的状況の中、ミナは1つの打開策を思いつく。しかも、1度目のようなあやふやなものではなく、ちゃんとした確信を持てる策を。そして、ミナはフィールド中央へと駆け出す。
「これで、よしっと。あとはあいつの攻撃を待つだけ。」
そうして、ミナは人型マグマが近づいてくるのを待った。しかしここで予想外の事態が起きる。人型マグマは先程までは見せなかった跳躍による威力上昇を仕掛けてきたのだ。
「嘘っ!?」
それでも、間合いはあまり変わらなかったため直撃は避けたが、やはり、衝撃により吹き飛ばされる。
ガララララッッッッッッ!!!
ゴンッッッ!!
派手な崩壊音は、人型マグマを大きな穴へと墜落させた。鈍い音は、ミナが吹き飛ぶ距離を激減させた。それは、ミナの体と、事前に反対側に地に突き刺しておいた剣とがぶつかる音だった。ミナは自分の剣を壁とすることで、吹き飛ばされる距離を縮めたのだ。とは言え、普通に考えて剣が耐えられるはずもない。ではなぜ、剣はミナを受け止められたのだろうか。
ミナの策は、マグマが消えて空いた穴に人型マグマを落とし、攻撃の衝撃で反対側の剣の元に行き、頭部の宝石を斬るというものだった。そして、穴に落とす際、穴付近の地面を叩かせることで地面を壊させて落とすだけと踏んでいた。しかし、地面が崩れることで、その衝撃がある程度受け流されていたのである。ミナはここまで計算していたわけではなかった。だが、結果的にその策が、人型マグマの渾身の一撃を上回り、ミナの剣が人型マグマの頭部にある宝石を斬り砕くこととなった。