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失われたその果てに  作者: miuki
第1章.出会い
9/12

Ⅷ.帰宅

AM11:40


シャワーの流れる音がする

今彼女は壁一枚隔ててるだけでその向こう側では一糸まとわぬ姿で水を浴びているであろう。

そうするように促したのは自分であるから当然ではあるが、自称ルシファーと名乗る男性との戦闘でズタズタに裂けた衣類と汚れてた身体のまま家にあげて無視するわけにもいかずこのような流れになってしまった。

別にこの後どうこうするつもりもない…例え彼女が元カノの理帆にそっくりだとしても僕もそこまで節操なしではないから欲情して飛びかかったりはしない…

だがー



「ねぇ…お風呂いただいたよ」



「ちょ、おいぃ!!り、理帆っっぁ」



目の前にはバスタオルを巻いた状態の四宮が立っていた。



「理帆、服着てくれ…なんでそんな状態で出てきたんだよ…」



「だって…私の服ボロボロになったからって天野君捨てちゃったでしょう?」



「いや、確かに捨てたが代わりの服僕ので申し訳ないけど学校ジャージ置いておいたぞ?」



「あー、あれだったのね…私の為に用意したものだとは思っていなくて…」



「そりゃ、伝え忘れた僕も悪いね…ごめん…とりあえず服着ましょう…その…色々と…あれなので…」



「…?意識しちゃってるの…?私が理帆さんに似てるから彼女の事でムラムラさせちゃった…?」



「……もっとさ…オブラートに言えないのかい?」



ようやくまともに喋るようになったのに四宮の口にする言葉は何かと過激で高校生男子的には辛い部分がある。これも僕の招待を暴く策略だとしたらかなり計算高い…桐崎の指示によるものだとしたら今度あったらぶん殴ると心に誓った



「とりあえず…今日はまだ午前中とはいえもう疲れたから学校は行く気はない…だから君もそこまで僕の事を警戒する必要は無いからね…けれども、自宅待機中でも君は僕の事を監視し続けるんだよね?」



「えぇ…」



「はぁ…どうせ拒否しても権力の横暴で無理にでも家の中上がり込むんでしょ…もう勝手にしてくれ」



「最初からそのつもりよ…」



1ミリの遠慮も見せない彼女には呆れるのを通り越してもう何も感情が沸き上がりそうになかった。



「…っ、地震…?」



ふと、揺れた

体感的には震度2程度の微弱な揺れではあった



「最近地震が多いね」



沈黙しつつあった空間に1つの話題を僕は持ち上げてみた。



「そうね…」



その一言だけが四宮から返ってきた。

会話終了ー

ただでさえ6畳程度の狭い空間だってのに元カノの瓜二つの女性と二人っきりで空気が重いのに会話のバトンタッチもまともにしてもらえないのは何かの拷問だろうか?



「ねぇ…さっきの話の続きをしたいのだけれど」



唐突な四宮からの話題が飛んできた。

願ってもいない事だがさっきの話ー?



「あっ…両親について…?」



「うん…10年前の大火災って…確かに最初に異能力者が発現した日だよね…」



そうー10年前東京都を火の海に沈めた大火災…東京都パンデミック火災とも呼ばれている…

異能力は人為的に生まれたものである。

人の手によって発見されそれを人の手により培養され人間の体内にはいることにより異能力者として目覚め人の身に害を直接与えるものではないが人間離れした力を手にした者がその力を悪用する事も不思議ではなかった。それは間接的に言えば結局は人間社会に多大なる害を与えると言っても過言ではなかった。

結果暴走した異能力者が火炎魔法を使う能力者だったが為に東京都を丸々焼き尽くしてしまう大火災が発生したのと同時に世界中に異能力者を目覚めさせる細菌が拡散されてしまった。

当時世界は混乱に陥ってしまったがどうにか建て直して今は異能力を私欲に振るう者を取り締まる為の組織、対異能力特殊防衛機関が設立され人為的に細菌を利用して異能力者を生み出し育成されるようになった。


「僕は当時東京都に住んでいたから両親もその時火災に巻き込まれて…僕だけが助かったんだ」



大火災に巻き込まれた生存者はただ1人ー

そう…天野悠斗…僕が唯一の生き残りだったが当時7歳の僕はマスコミからの取材を逃れてなんとか身を潜めてこうして何事もなく身分を偽り生活をしていた。



「火災の日その場にいたなら天野君はやっぱり感染して能力者に…」



「いや…僕は細菌に感染してないのは事実だ…そう…あの日生み出された()()()()感染してない」



「…そう…まぁ…ルシファーに襲われた時本当になんも抵抗できてなかったもんね…天野君が今能力を発現できないのは真実と受け止めますが桐崎さんは天野君は必ず何かを隠し持っているのか確信してるみたいなので…私はずっとあなたの元にいますからね」



桐崎十夜…僕のどこまでを突き止めて四宮姫香を差し向けたのか…そこが凄く気にはなるがここまで彼女に踏み込まれてしまったらいよいよ誤魔化しが厳しい段階なのは確かであろう



「……風呂入ってくる…僕も理帆に治療してもらったとはいえ身体汚れてボロボロだから」



「…そう…行ってらっしゃい」



会話を途切れさせたくなって唐突に風呂に入ると言って場を離れる判断をした僕とそれに気が付いたのかあえて引き止めずに僕の背中を見送った四宮。

完全に彼女の手のひらの上で踊らされてるのが分かる

悔しいが彼女の方が僕よりも心理戦で1枚も2枚も上手だからボロがでるのも遠くはないだろう



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夢を見ていた。

またあの日の夢だ。

炎の海の中、父親に、母親に手を伸ばす自分がいる夢を…そして父親から託されたあの力を…



「俺の罪を…引き受けてくれ…」



なんて身勝手に死んでいったんだろうか…僕は父親の願いに未だに応えられずにいた…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4月18日AM06:30


「おはよう…天野君」



「……ねぇ、理帆様」



「なぁに?」



「君には布団を貸したはずですよね」



「えぇ…」



「ならどうして僕と同じ布団の中で寝ているんですかね」



「………」



「いや、てかはやく布団から出てください!!!!」



僕は朝は苦手で目覚めも悪い…それでも一気に目が覚める程今日は衝撃的な朝をむかえられた。



「朝食は食べないの?」



「僕は朝が苦手で弱いんだ…だからいつもギリギリまで寝て慌てて支度して登校するのが習慣づいてしまったからいつも朝は食べていない、今日は理帆に驚かされて目が覚めたが普段から食べないせいかそんな作る気にはならない…理帆は朝食必要だったら悪いけれどコンビニとかですませてくれ…」



「私…作る」



「へぇ…?」



その一言を口にして颯爽と台所に彼女は立った

一応冷蔵庫には食材は入っているが彼女に料理スキルがあるのは正直に意外すぎた。

無表情で口数が少ない第一印象から今ではかなり変わった。

ベーコンを焼く時の油がはねる音

目玉焼きを焼く時水をかけて水っが沸騰する音

パンが焼けるトースターの音

普段朝には響かない音色により部屋は包まれてそしてテーブルの上に朝食が並べられた。

四宮はコップに牛乳を注いだ

聞いたら毎朝牛乳を飲むのが習慣づいてるようだがどおりで胸の成長が凄いわけだと本人には口が裂けても言えない思考が脳内を駆け回る。



「どうぞ…安心して、自白剤とか入れてないから」



「全くその心配してなかったがそう言われると怖くなるじゃないか……はむっ、、……!おっ、自分で作る時よりも美味しいっっ!!同じ食材同じ器具のはずなのにこんなに美味しくできるなんて玲奈って料理上手何だね!」



「……普通………はむっ、」



素直な気持ちで褒めたつもりだったが思いの外理帆は嬉しかったのか照れてるのか目を逸らしてしまった。

きっと桐崎の元でずっと働いてきたから褒められる経験が少ないんだろうなと納得をしてしまった。



「ちなみに桐崎の野郎には作ってあげた事はあるの?料理」



「一応作れる日は毎日私が桐崎さんの食事を用意していましたので…」


「なるほど…どうりで料理作り慣れていて美味いわけかぁ…」



無性に桐崎が疎ましくなってしまった。

僕の正体を見抜き四宮を差し向けた事、そして記憶をなくした四宮に手を差し伸べた恩人だとはいえ良いように扱き使われる少女の事…

かなり危険なはずだったのに敵の幹部クラスのルシファーを巻き込んだ僕を誘い出す大掛かりな作戦を実行させる横暴さ…今の所いい印象が無さすぎて気に入らなかった…このまま僕が見て見ぬふりをしたら四宮姫香はどこまでも桐崎十夜の言いなりになるのだろう…

だが桐崎の判断や推測は現に的確だった、だからこそ僕はここまで追い詰められている。悔しいけれど桐崎の戦略は僕なんかも優に上回って常に先を見通している…僕の正体を掴まれるのも時間の問題だろうか。



「昨日制服処分しちゃったけど今日どうするんだ?流石に僕のジャージのまんま学校行くのも不自然でしょ?」



「……大丈夫…朝早くに桐崎さんに天野君の学校の所の制服手配してもらったからあるよ」



「えっ、用意してるだけでなくちゃんと学校指定の制服まで…、どこまで用意周到なんだあのすかした野郎…」



「桐崎さんの事あまり悪く言うと私だって怒るんだからね?」


突然の四宮からの怒りの忠告、だがそれもおかしくはないだろう…いくら桐崎から無理難題な指示ばかりされているからって四宮にとっては桐崎は自分の記憶の中で最初に手を差し伸べてもらったいわゆる親的存在だ…そんな恩人を悪く言ってる人が目の前にいたら良い気もしないだろう。



「あぁ…それはすまなかった…けれど、桐崎さんは僕にとっては現段階では敵対し合ってる関係だからそこだけは分かってくれふ

「天野君じゃ心理戦で桐崎さんに勝てるとは思えないよ…」



「確かにそうだが…まだ負けたわけじゃない…」



四宮と僕は学校の支度をして家を出た。

昨日一緒に帰宅した道を今度は逆に進む、四宮は意外と方向音痴なのか最初真逆の方に進もうとしていた。

四宮をほっぽいてそのまんま登校してもよかったが学校着いてからいつどこから現れるかも分からない四宮に警戒して過ごすのも嫌だから仕方なく道を間違えてるのを伝えて一緒に並んで登校した。

当然ながら四宮は容姿が優れていて出るところ出てるから道行く男子達の視線はあつかった。



「僕…君に見張られてるからって理由よりも周りからの君への視線に対して巻き込まれてるって理由の方がが一緒にいたくない理由になりそう…」



「視線くらい何言ってるの…」



「そりゃ…理帆は普段からその視線あびてるから気にしないだろうが僕は生徒C程度のモブキャラとして日常過ごしてた身なんだぞ…こんな多くの視線耐えられるわけないよ…」



「……」



四宮は電車の中ではこれ以上喋らなくなってしまった。これが初対面の時の彼女の印象だったから昨日帰宅後会話してくれた方が珍しかったのだろう。



「おっ、天野〜おやよ〜昨日はなんかあったのか?生徒会室に呼び出されてから戻ってこなくて心配したぞ?あの皆勤賞の真面目な天野がサボり?ってクラスのやつらも意外すぎて噂されてたぞ……って、隣の子誰……?」



僕の数少ない友人の雪茄だ…。

いつも僕が乗った駅の数本先の駅から乗車する為同じ車両で合わせて一緒に登校している。

そして今日、当然ながら会って最初の話題は昨日の僕の早退についてだがそんな疑問を吹っ飛ばすくらいの衝撃が僕の真横にいた。

四宮姫香の存在を一体どうやって雪茄に弁解しようか、学校の皆に目立たないように関係性を聞かれても逃れるべきか…改めて今自分の窮地に対してその事の大きさを実感し始めた。

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