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失われたその果てに  作者: miuki
第1章.出会い
7/12

Ⅵ.四宮姫香

AM08:45


 僕はどちらかと言うと優等生って柄ではなく、むしろ不良の部類に加担したいと思うくらいには授業というものが嫌いと言える。

 だが身分を隠して極力世間から目立ちたくない僕は授業をサボる常習犯として目をつけられない為面倒くさいがしっかり参加している

 優等生と不良の中間とも言える教室の陰でひっそりと身を潜める生徒Aと表現した方が良いだろう

 そんな目立たない僕の唯一の友人が雪茄…彼1人だ

 ごく普通の高校生として身を潜めてた僕が授業をサボって学校を抜け出してしまう日が来るとは自分が一番想像していなかっただろう



「ハァ…ハァ……。」



 全力で地面を蹴り上げ走る

 久々の全力ダッシュだから息切れが激しい

 授業も抜け出してまで何故こんなに全力疾走してまで僕は彼女を救いたいと思うのだろうか…?

 そんな問いをせずとも自分の中にその答えはとうにでていた。

 彼女が…四宮姫果が…昔付き合っていた彼女に瓜二つレベルにそっくりだった…

 でもその彼女は僕の前でー


 ―()()()()()()()()()()


嫌な記憶だった…力不足だった僕は彼女をちょうど昨晩四宮姫香が対立していた組織の手に堕ちて失ってしまった。

組織と瓜二つの姫香…

非情なまでの巡り合わせで僕の思考回路を乱していき結果この僕は桐崎十夜に目をつけられてしまうと結末を迎えてしまった。

もう彼女を失った過去とは向き合って立ち直っていたつもりだったのに僕は結局四宮姫香を目にした瞬間その過去に追いすがる気持ちで助けに入ってしまった事実から…僕は未だ―過去に追いすがってたまんまだったって事ー


悔しくって苦しくって泣き喚いたー

だが僕は組織への復讐に力を手にして特殊能力防衛機関に身を置く決断には至らなかったー

復讐したところで僕の力ではこの世の闇深さに敵うはずがない…

復讐心に囚われて正義感振りかざした偽善者達と肩を並べて戦いたいと思えなかった。

きっと彼女は自分の為に僕が傷付いて戦う事は望んでない

だから僕は戦わないー

だから僕は一般人として身を置く決意をしたー

これは逃げではないー

これは臆病者の判断ではないー


否、臆病者だった…


いざ彼女にそっくりな四宮姫香を見た瞬間僕は居ても立っても居られず行動してしまっていた。

つまるところ戦うのが怖くて逃げていた

だが護りたい彼女…に似た四宮姫香がいたから今回は身体が動いてしまっていたわけだ…



「ハハハ…」



カラカラと喉を鳴らし自身の情けなさに笑いが溢れた

戦う理由が欲しかったー

護るべき存在が欲しかったー

憎いー醜いー

すぐマウントを取り合いレベルの低い争いを始める人間を護る為に戦うなんて御免

すぐ誰かを晒し者にして潰そうとする哀れな人間な為に命を張るなんて御免

すぐ陰口や居ない人を誹謗中傷する陰湿な奴の為自分を犠牲にするなんて御免

僕はーそう…彼女…

()()さえいれば良かったのだ

代わりなんていない

だから僕はもう剣を抜いて抗うことなんてないーそう思っていたが…

四宮姫香…彼女を一目見て理帆の事を脳内でよぎってしまい今一度僕は剣を抜き地を駆けている



「待っていろ…理帆…」



理帆じゃないのに…僕はその名を口にして街中を駆け続ける


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「彼は姫香を助けに行ったみたいだよ」



「良かったですね…全部あなたの筋書き通りに行動してくれて…相変わらず趣味が悪いですの。」



紅茶を口にして腰をおちつけながら横にいる金髪の美少女に一部始終を間欠的に述べていた十夜。

それに対してキツイ言葉で返答する金髪の美少女ー



「ハハッ…手厳しいお言葉だ…褒め言葉として受け取っておこう」



「それで…姫香をエサにして何故彼は簡単に吊られてしまったのですか?」



キツイ言葉の返しに対してポジティブ思考な返答

それに呆れたのかどうか話題を切り替えた金髪美少女



「あれ?麒凛、彼の事気になるの?僕がいるのに妬けちゃうな」



麒凛と呼ばれた彼女は呆れた様子で



「茶化さないで下さい…無能力者の彼を騙してまで序列4位のあなたがわざわざ出向くなんて…何かあるのですよね?彼…天野悠斗に…」



「さぁ〜て…まぁ見たいなって…これから歴史は動き出す事になるから…これまで隠れ潜んでいた天野悠斗の存在は異能力でバランスを崩したこの世界の均衡に終止符を打ってくれる俺はそう信じている」



「あなたにそれ程の言葉を言わせるなんて…彼にそれ程の何かがあるようには思えません」



「手厳しい一言だなぇ〜まぁ序列5位の城ヶ崎麒凛様程の実力者の目じゃそう見えてしまうよねぇ」



「私よりも上のあなたが何か言いましたか?」



「気のせいだよ」



城ヶ崎麒凛と呼ばれた彼女と桐崎十夜…五天衆の2人が一室で凍りついた空気の中会話が止まったー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


AM08:55


どれくらい走ったのかスマホの時間を確認してざっと10分くらいだろうか、ようやく天野悠斗は昨夜戦場になった建物に着いた



「ハァ…ハァ…」



侵入する前に一旦息を落ち着かせていた

息切れした状態で敵に見つかり返り討ちになったら話にならないから仕方がない時間の浪費だ。

中々高まった心拍数は落ち着かず息切れも収まらず必死に酸素をかき集めて落ち着かせるがその時間1分1秒が悠斗にとって勿体なさすぎる

まだ落ち着かない状態なのに建物に侵入して状況確認をし始めた。


その矢先ー


「君が昨夜のイレギュラー君…?どうやら小煩い連中(異能力特殊防衛機関)すらも撹乱させる存在の君がなんでまたこんなカビ臭い所に足を運ぶんだい?」



僕の存在に気が付いていながら奇襲もせず目の前から堂々と現れた背中に黒い翼を生やした高身長の美少年が立っていた…否、浮いていた

地面から5〜6cmといった微妙な高さで浮遊してる為飛んでるというには微妙だが



「その翼は御飾りだったら流石にその歳で痛すぎませんか?厨二病ならもうとっくに卒業した方がいいですよ」



初対面相手なのに生意気な口を叩いた自覚はあった



「いやぁ〜いや…よく貫禄ない為か組織のグループを率いてる幹部に見られないから堕天使っぽく威厳を見せたくて翼を生やしてみたのだけれど只のコスプレしてる痛い人に見られてしまうなんて…私はどうも上に立つ人間には向かないようだ」



幹部ー今の僕の前に幹部クラスの相手が現れてしまうのはかなり最悪な状況であった

固有武器未所持者の僕は特異能力を使用できない

異能力者を武器を経由して能力を発揮できる詰まる所戦場では武器こそが生命線といっても過言ではなかった。

だからこそ僕は固有武器を持っていない為戦場において最弱である…が同時に()()とも言えるある秘密もある。



「随分と口が動く幹部様だね…他の奴らと違い話が分かるとお見受けしたから初回限定特典として今回は僕の事見逃してくれないかな…?」



「そんなイレギュラー君もよく口が回るねぇ〜。特別に見て見ぬ振りも良いのだけれど…イレギュラー君がどういった立場の方なのかお聞きしても良いかなぁ〜」



「この通り幹部の堕天使様に向ける武器すら持っていないただの一般市民ですよ…昨夜の事を知っているならもう耳にしてると思うが僕は武器を顕現してないのが証拠です」



「気になる点もある…納得のいかない部分も多いが武器を顕現できないのは嘘ではないのは確かなようだね…が、何かを隠してるのも事実…だね?」



組織の一部を率いるだけはあり眼力が凄まじく威圧感が半端なかった。

僕が何かを隠してる事を瞬時に見抜きさっきまで感じ取れなかった貫禄が一気にこの素人の心身を震わせていた。



「……」



無言の圧力に思わず押し黙ってしまった僕に対して堕天使は



「私は幹部の席を置く…まぁ〜ルシファーとでも呼んでくれ」



「ルシファー…?天使の名を口にするとかあからさまな偽名かよ…」



偽名で自己紹介をするルシファーと名乗る堕天使の姿をした彼は笑む



「偽名とは言え名を名乗ると言う事はここで僕を殺すつもりはないと解釈はするが良いかな?」



「まぁー私も目に入る者全てを手当たり次第に殺すなんて事はしないが…一応組織の一部を率いる幹部の立場もあるし少しくらいは勘弁してな?」



ルシファーは詫びを言ったその刹那ー

黒い翼から先端が尖った羽を飛ばしてきた

その速度は200km/hの速さは優に超えていたが僕には防ぐ武器は持っていない…ならー

腕を前に持ってきて急所を護り羽を受けた

急所を防いだとは言えその鋭利な羽は腕を突き刺した。

当然急所ではなくとも刃物に刺されたら痛い

痛覚遮断という御都合主義がない僕にはこれだけで地に足を付けてしまうのは容易であった



痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー



痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー痛いー



「悪いなぁ…君となら仲良くなれそうだったが…」



「僕も…出会いがこんな形じゃなけりゃ…ルシファー…とは…なか…よ…」



意識が飛ぶーその刹那

火炎弾がルシファーに飛来してきた

それとほぼ同時に僕の体を光が包んだ

その光が突き刺された羽の傷をみるみる治癒していく。



「四宮…姫…」



「喋らないで…傷は浅いけれど出血が酷いから死ぬよ?」



ルシファーに襲撃して僕の傷を癒したその人物は…本来救うべきはずの四宮姫香…彼女であった



「なんで…君が…戦えるのか?昨日凄い衰弱してたじゃないか」



「………ごめんなさい…これは任務だったの…騙すような事をしてしまい…」



彼女が何を言っているのか理解をするのが困難を極めていた

否ー理解するのを拒んだいたんだ、彼女は凄く悲しそうな目で僕を見つめてそれと同時に申し訳なさそうな表情をしていた。

それだけでもうこの状況を僕は察したのと同時に桐崎十夜の顔を思い浮かべて怒りが込み上げてしまった。



「…僕を……試そうとしたんだね…?」



「…」



四宮姫香は沈黙していたがそれは肯定とみてとれた。



「横槍とは無粋だね…それと私を除け者にしてなんか話が進んでるっぽいけれど御二方のやり取りに私は巻き込まれたと解釈しても良いのかな?だとしたらどうも虫の居所が悪いから仕切り直しに付き合ってくれるかな?そこの美しいお嬢さん…」



「私の与えられた任務は彼の正体を突き止める事だったのであなたをどうこうするつもりはないわ…」



さっきまでの余裕そうな表情をしていたルシファーにしては意外な事にかなり不機嫌そうな様子があらわになっていた。

むしろそれに対して四宮は無表情に何事もなかったかのように表情筋がピクリともしない言うなら彼女こそ氷の女王の名に相応しい冷酷っぷりであった。

理帆にそっくりだからこそ僕は理帆と四宮を無意識のうちに比べてしまっていたが理帆は表情豊かで喜怒哀楽が激しかったのに対して四宮は表情から感情を読み取るのが不可能なレベル、今の四宮の表情を理帆で例えるなら何か悩み事をしていて考え込んでいる時の表情のように見てとれたが実際に四宮が悩み事を抱え込んでいるかは定かではない。

こんな戦場で命のやり取りをしている筈なのにルシファーの事よりも今目の前に存在する四宮姫香という彼女の存在が僕の頭の中を大きく上書きしてしまい思考を乱してしまう。

どんなに冷静沈着ぶっていても理帆…正確には別人で四宮姫香という赤の他人なのに玲奈が何度も僕の脳内をかき乱していき多少ルシファーから受けた攻撃を四宮に治療してもらったとはいえまだ完全に傷が塞がっておらず痛むはずなのにその痛みすらも忘れてしまう程脳の思考回路は乱されていった。

僕が戦闘への集中力を欠いた事に気が付いたのかルシファーは更に不機嫌面になり



「ちっ……横槍されただけでなくお前の方も女一匹にうつつを抜かして目の前の私の事なんかどうでも良いって訳か」



先程と違ってルシファーの口調が悪くなっていた。

だが実際僕は彼との戦闘を放棄して四宮姫香ばかりを考えていた事実は確かであり礼儀知らずなのは否定できなかった。



「もういい…興味深い奴だと思って手加減してたが腹が立ったから横槍娘と一緒に私が葬ってあげますよ」



再びルシファーは背中の翼から鋭利な羽を飛ばしてきた。

一つ一つを確実に急所を狙ってくるこの攻撃は防ぐか避けるかしないと即死は間逃れないが四宮は回避行動をとろうとしなかった…という事は防ぐ手段があるんだと僕とルシファーは瞬時に理解して彼女は唱えたー



「障壁展開<ふぁーすてむ>」



彼女の呪文とともに障壁が展開され僕と四宮の四方を包んでいった。

ルシファーの鋭い羽は容易く防いでしまった



「無詠唱魔術…だと…?」



彼女…四宮が手に持っている武器は杖…いわゆる魔法使いというと分かりやすいかもしれない。

昨夜の敵は斧

桐崎十夜は大剣

僕は武器未所持

ルシファーは背中から生えてる漆黒の翼

ーそして四宮姫香は刃物類ではなく魔法使いが魔法を唱える時に使うような杖を武器として扱っていたー

別に珍しい武器ではないしむしろ異能力者の中では結構多いになるありきたりな武器であった

だがルシファーすらも驚かせたのは無詠唱魔術ーを使用した事であった。

本来杖を武器にする者は1つか2つ、優秀な人材は3つ以上の「属性攻撃」の魔術を使用して戦闘を行う

だが魔術を使用するのに詠唱を唱えてやっと魔術を発動できる為他の武器使いと違い隙があり後衛での支援、遠距離として戦う事が多い。

基本1on1には向いていない…否…1on1では勝つのは不可能に等しい。

誰が対戦相手が詠唱してるのをおとなしく待って魔法を使わせる敵がいるだろうか?

けれど極稀に詠唱をせず魔法を発動できる天才も存在するーその1人が四宮姫香…彼女であった。

詠唱による隙を克服された魔法使いは並の武器使いなら1on1では勝つのは容易ではないくらい弱点を捨てた魔法使いは強力な存在であった。

武器による物理的な攻撃手段がない分異能力による攻撃が他の武器種よりも桁違いな為詠唱を必要としない魔法使いはその桁違いな攻撃を無尽蔵に放つ事が可能である。

しかもこの世界にはMPとかそういう概念は存在しない為彼女が戦いにバテない限り本当に無双状態…故にルシファーはその存在に驚愕を隠せないでいる。

幹部クラスでも骨が折れる存在であるのは間違いない。



「火炎弾<ファイアァー>」



炎の弾をルシファーに向けて飛ばした。




「障壁を展開しながら続けて火炎魔法…っ??無茶苦茶すぎる」



苦痛の表情を見せたルシファーは翼で自身の身を包むようにして防いだが焼け跡が残りその傷は痛々しかった…が



「……っ!?」



四宮がやっと人間らしく表情を少し動かして驚きを見せた…とは言ってもそれでも無表情に等しいのであったがそれほどルシファーに奇妙な現象がおきたのであった。

ルシファーの焼け翼は修復されていった

が、よくよく考えるとあの翼はルシファーの固有武器である限り修復されるのは当然であった。

固有武器は使用者が生ある限り永遠と顕現できる為攻撃により破損しても修復されてしまう。

ルシファーの翼は体が直接生えてる為身体の一部と無意識に考えてしまいそうになるが一応武器の一種ールシファー以外に翼を武器にするのは確認した事はないかなり希少な武器だが。

修復すると分かっているから躊躇わず翼を盾にしていくルシファーを見てかなり戦い慣れしてあるのが見てとれた。が、



「水流顕現<アクア>」



四宮は続けて唱えて魔法陣が頭上に召喚されそこから洪水とも言える大量の水が降り注ぎ容赦無くルシファーを地へと叩きつけたと同時に波に流して沈めてしまった。



「防御魔法、火属性魔法、水属性魔法…大魔法レベルを3連続…エゲツない……」



思わず声に漏らしてしまった程衝撃を受けてしまったが、



「酷いじゃないか…翼が濡れてしまったじゃないか…」



余裕の表情で洪水の中から現れたルシファー



「落雷投下<サンダーァ>」



雨雲一つないはずなのに空から強力な落雷が落ちてきてルシファーに直撃、そして墜落したルシファーは再び洪水の中に落ちて落雷が水の中は容赦なく広がりあたり一面電気に満ちていった。

敵と認識したら話も聞かず容赦なく強力な呪文を飛ばす四宮には狂気すらも感じ始めてしまった。

容赦のない猛攻だけでなく高レベルの魔術攻撃を詠唱をなしに連発してしまう四宮姫香の驚異的な強さにも驚きは隠せなかった、ここまでのハイレベルな戦闘力なら幹部クラスですら一方的な闘いになってしまうのも納得がいってしまう。



「……ダメ…私じゃあの人を仕留めきれない…君…私の手を取って…」



何を察したのか四宮は僕に手を差し伸べてきた。

僕はまたも理帆との面影を重ねてしまい躊躇わず四宮の手を掴み取ってしまったーその刹那ー

四宮は勢いよく浮き上がり僕の手を掴んだまま空中を飛行し始めその場を離脱し始めた。



「なんで撤退するの?ルシファー…あの男に留めはいいのか?幹部クラスなんだよ?」



「…戦闘経験の浅い君は気が付かなかったと思うけれどあの人…私の攻撃をわざと受けて手を抜いていた…しかも私の全力の攻撃だったのに何事も無かったかのように…最後の雷撃もきっとあまりダメージになっていないよ…私がバテるまで好きなだけ攻撃させて力の差を見せつけようとする嫌な闘い方をしてる。だから最初の炎弾でそれを察したから洪水で流して雷撃で足止めして撤退を考えたの。」



「炎弾の時点で相手の戦闘スタイルを見抜いて次の攻撃で既に撤退の態勢をとっていたというのか…?」



彼女の観察眼そして状況判断能力の高さに正直驚きが隠せなかった。

高い戦闘能力を持つ者はどうしてもそれ頼りの戦いばかりをしてしまい戦闘の合間合間の分析を怠りやすくなってしまう。

だが四宮姫香は違ったー

彼女は自身の幅広い攻撃バリエーションをフルに活かし距離を取り敵の出方を伺いつつ攻めてそして相手との力量を的確に見抜くーまさに神童というに相応しい、だがそんな彼女が撤退を選択させるルシファーと名乗る男性は一体どれほど強いのか想像はしたくなかった。



「話…戻すけれど…その…昨夜は貴方を出し抜く為とはいえ…騙してごめんなさい…そして…助けてくれてありがとうございます…」




相変わらず四宮は無表情なまま僕に語りかけていた。



「僕は…この通り本当に固有武器()持っていないんだ、ルシファーにコテンパンにやられたのが何よりの証拠になるでしょう?」



僕の左手と四宮の右手は繋がれたまま空を飛翔していたー僕は空中を飛ぶ事はできないが四宮が接触してる事により飛行できている…飛行できているというよりは四宮に引っ張ってもらってると言った方が正しいが僕と四宮は今横に並んで同じ高さで浮遊してるから側から見たら手を繋いで一緒に飛んでるように見えてしまうだろう。

もし彼女が理帆だったらとまた思考が乱れてしまう。が今は桐崎十夜の魔の手から逃れる事が先決だった。



「確かに貴方は…武器を持ってないのは嘘ではないのは確認できました…が、、、異能力を持っているかは確認できてませんね…申し訳ないけれど今日から3日間…貴方とずっと同行させてもらうね…?」



「………はい…?」



今彼女が何を言っているのか理解するのに時間をかけてしまったのは言うまでもないだろう。

彼女は僕を3日間四六時中監視をする宣言を堂々と言い放っていた。



「い、、いやいや待て待て!!!僕を監視?3日間ずっと??流石に家まで来ないよね?」



「え…もし敵の本拠地で天野悠斗が異能力者だという決定的証拠が掴めなかったら3日間ずっと同行しろと任務を言い渡されてるから…その…家まで推しかけるつもり…ですよ?」



安定の無表情だがキョトンとしながら言ってそうに僕は見えてしまったが彼女は爆弾発言をしている自覚はないのは理解できた。



「いやいや…あのですね…僕、男…まずオーケー?」



「…?はい」



「君…四宮さん、女の子…、あんまりヒョイヒョイ男の家に上がり込んじゃ危ないからね?って事でそろそろ僕を降ろしてくれないかな?僕は学校に戻るから」



「送るよ…というか学校にもお邪魔するね」



「いやーいやいやいや待て待て待て部外者立ち入り禁止だって!!だから君は大人しく本部に帰りな!!」



「権力があるから入れるよ?」



「………」



僕は必死に脳をフル回転させて彼女の追跡を振り払おうと思っていたが悉く非常識な行動連発で見事に確保されてしまった。



「まじか…僕の平穏な日常生活…が……」



人助けは安易にするものじゃない事を今心に誓った僕であった…。

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