IV.呼び出し
「単刀直入に失礼するね?
何故君がこの僕に呼び出されたのか…僕を見た反応から察するに言うまでもなく分かるよね…?」
「なんの事か分かりませんね…僕の知ってる生徒会長ではなく全く知らない人がその席にいたので驚いただけですよ」
ごもっともな返しをした。
全くの正論だと自分でも自負する
とりあえず異能力の関係者に目をつけられたからには何としても逃げ切らなければならない。
「ほぉ…僕を誰かと分かっての反応ぽく見えたのは気のせいだったかな…?」
「気のせいだと思いますよ」
「……ふむ…詮索は面倒なのでもう話を進めてしまうね。単刀直入に言うと君には僕の通う高校に転校して頂きたい」
「無理です。用件がそれだけでしたら失礼します」
やはり俺に目を付けて国立異能力特殊学園への転校の強要だった。
目の前にいる男性「桐崎十夜」は五天衆と称されている学園のトップ5人のうちの1人だ
それ程の実力者自らが直々に俺なんかに声をかけてくるって事は昨夜のイレギュラーすぎる俺という存在の介入が注目を浴びたのだろう。
イレギュラーであり実力が未知数の俺への接触は危険度がかなり高いから五天衆クラスの桐崎十夜が俺への接触に出向いたと推測される。
「残念ながら天野悠斗君…君は異能力関係者と断定されているから拒否権はない…あまり強引な手段を使いたくないから大人しくしていただけると助かります。」
「俺には人権というのがないんですかねー?」
「個々の人権を尊重してる程今のこの世の中に余裕はない事は天野悠斗君…君ならわかるよね?」
桐崎十夜と名乗る男性の言う通りだ。
異能力という存在は今この世界では無能力者と大きな権力差が生じている。
力による支配で無能力者は異能力者に屈して従うしか生きる術はない。
当然そんな力による支配を許される訳ではなくこの異能力特殊学園に通う異能力者によって異能力を私利私欲に払う相手を止める為にある。
だが異能力者はその正義ごっこに人権も何もなく強制的に参加させられるからそれこそ本末転倒
人生というか生き方を強制されてしまうわけだ。
しかも異能力は自発的に目覚めるのではなく人工的に国により10歳の時に与えられるのだ。
異能力者を私利私欲に払う奴らとやってる事は何も変わらない…異能力者で好き勝手してる奴らとそれに対抗する為に権力で人生を強制させてる機関ー
だから俺は正直関わりたくない。
「僕には異能力は備わっていません。固有武器も持ち合わせていないです。ご期待にはお答えできず申し訳ございません。ですので失礼します。」
嘘は言っていない
実際に俺は自分用の固有武器を持ち合わせていない
固有武器がないって事は当然異能力を発動できない。
桐崎十夜に背を向けて俺は生徒会室を退室しようとドアノブに手をかけた…
その刹那ー
ー殺気ー
大剣を握りしめてそれを振るってきた桐崎十夜の姿を視界が捉えた
だがさっきまで生徒会の席に座っていたのにいつのまに間合いを詰められていたのか?
とっさの事に状況判断が遅れてしまったがかろうじで避ける事に成功した。
「なんのつもりですか?桐崎十夜さん…」
「突発的に襲えば力を出してくれると思ったんだけどその様子だと本当に無能力者なんだね」
「だから言ってるんじゃないですかー俺は固有武器を持っていないって」
「では昨夜あの場に躊躇なく介入したのは何故だ?
本当に無能力者なら異能戦闘してる中に突っ込むとも思えないのだが?」
痛い所を突かれてしまった
確かに一般市民なら自分の命を投げ捨ててあんな激しい戦闘に飛び込むわけがない
「昨日…単独任務で参加してた少女が…俺の知り合いに……似ていた…からです………」
これも本当の話だ…むしろそれがなければ身バレの危険性を負ってまで助けたりしなかった。
「あぁ…四宮か…?それで四宮に惚れて助けたただの一般市民だと言いたいのかな?」
四宮ーそう…昨夜助けた少女の名は四宮姫香
次期五天衆と称される神童の少女…
「べ、別に惚れてなどいない……確かに過去に付き合っていた彼女に似てたからってだけで…あっ、、」
「ほほぉ……ふむふむ…なるほど」
鋭い洞察力で見事に口を滑らせてしまった
「それは非常に残念な話だ…」
「…えっ?どういう意味ですか?」
「四宮の事だが昨夜君が助けた後生存を確認できてなくて未だに行方不明中なんだよ」
「…へ???」