血溜まりの新任務
久しぶりに大暴れした。
しかし、反撃してこないただの人間逹相手では、とてもつまらなかった。
例の少年は掃除用具入れの中でガタガタ震えているだけで、私の華麗なる銃捌きをみる事はなかった。
せっかくなら、いじめっこ逹が死んで行く姿を目に焼き付けておけばいいのに。
少年は、いじめっこ逹を殺す代わりに人質になるという提案をあっさり呑んだ。
まぁ、それが最善か。
下手に断っても殺されると思ったのだろう。私はそんなことしないが。
大暴れしたあとは、格好つけたい。
だから、廊下に血飛び散らせ、そこを格好よく歩き、格好よく振りかえって
「人質なの、忘れちゃダメだよ?」
そう言った。
しかし、と言うかやはり帰ってきた反応はコクりと頷くだけという薄いものだった。
その反応の裏で心が揺れていたのを私は見逃さなかった。
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「教官、連れてきましたよ」
「お、ご苦労さん」
教官はチラリと私の隣を見る。
つられて私も隣を見ると、少年が明らかに怯えていた。
知らない所に連れて来られて仕方がないが、もう少し度胸を持てと思う。
少年の名前は須湯田 涙。
名前の通りすぐ泣くわけでは無いが、いつも泣きそうな顔をしている。
「教官、なぜこの子を拐う必要があったのですか?」
「それは…後で分かるさ」
そう言って気まずそうに目を逸らした。
教官とは長い付き合いでもないが、らしくないなと思った。
「ところで、だ」
わざとらしく咳払いする。
これもキャラじゃないのにいつもやるよなぁ。
「赤猫のメンバーが日本に密入国してきたらしい。しかも、それを赤猫のメンバーだと名乗る日本人が手助けしたとの事だ」
「また、ですか」
過去に二回この様な事件はおきている。
それを解決したのは、他でもないスノードロップである。
「今回も私が行けと」
「そういう事だ。殺したら拷問出来なくなるから、半殺し程度で逃げられないように」
「そんなこと分かってますよ」
「そう言って前の二回普通に殺しちゃったのはどこのどいつだ」
うっ、図星で言葉に詰まる。
だって教官が相手は赤猫でも有名なヤツだぞって大げさに言ったんだもん。
そんなこと言われれば誰だって警戒して本気で捕まえにいく。
私も本気で捕まえにいったら、気がついたら相手は死んでた。
仕方がないし、私は悪くない。
「あの、教官。この話一様国家機密ですよ?涙に聞かれても大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ涙が居ること忘れてた。」
忘れてたんかい。
しかもちょっとは気を使ってあげるとかしなよ。
「まぁ、大丈夫じゃね?」
…信用ならん。
私は、はぁ~と溜め息をついて教官室を出た。
「あんなヤツだが、宜しくしてやってくれ」
何やら教官が涙に言っているのが聞こえたが、聞かなかった事にした。
須湯田 涙 は、 すゆだ るい と読みます。