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1:秘密基地にはピッタリな女の子

「本当に…!!本っっ当にごめんなさい…!!」



きちんと正座をして頭を下げる女の子は、涙声で謝罪を言う。

そんな必死に謝らなくても怒ってないから、なんて言いたいけど俺の頬についた大きな手形を見ればそこまで謝るのも仕方ないことのように思える。



「いや、本当怒ってないから。痛くもないから。」


「う、嘘です…私の手が痛いんですから…。」


「うん…まあ痛くないっていうのは嘘だけどさ…。」


「痛いんじゃないですかぁ…。」


「でも大丈夫だから、泣かないでよ。」



ぐすん、と鼻を啜る彼女にちゃんと伝わるように『なっ』と笑いかければ、こくん、と小さく頷いて俯く。



…なんていうか。



最初の”変態”発言にビンタを食らったせいでついつい怖いというか、性格の激しい子なのかなと思ったけど。



「…一年?」



普通の子だし、多分優しい子だ。



「は、い…一年、です…。」


「俺も。じゃあ敬語もいらないよな。」


「は、はい…。」


「…敬語はいらないよな?」


「はい……すみません…。」


「…。」


「…ごめん、なさい…。」



激しい子、どころか…かなり引っ込み思案な子、というか。

未だに涙声で顔は俯いたまま、たまに様子を窺うようにちらり、と見て目が合えば恥ずかしそうに逸らす。

人見知り、で片づけられるレベルを超えている気がしてならない。



「あ、の…。」


「ん?」


「わ、私、そろそろ行き、ます…。」


「あ、講義?この後あるんだ?」


「いえ…そういうわけでは…。」


「そう…?あ、名前。名前教えてよ。」


「な、名前…ありません、から…。」


「いやいやありませんって。面白い事言うね。」


「ぅ…ユ、ズ…、」


「え?」


「ユズハ、です…果物の”柚”に、はっぱの”葉”で”柚葉”っていいます…。」


「へぇ…可愛い名前。」


「…!そ、んなことは…。」


「じゃあユズちゃんだな。」


「は、はい…そう呼んでくれる友達もいます…。」


「俺はソウ。蒼いって書いてそうって読むんだ。」


「ソウ、くん…。」


「うん。よろしくね、ユズちゃん。」


「よ、よろしくお願いします。」



律儀にぺこりと頭を下げてユズちゃんがもう一度、『ソウくん』と繰り返す。

喋り方はしどろもどろだし、人見知りっていうか話すことに慣れてないって感じだし、名前を呼ぶその声は心もとないし。

だけど、



「はい、よろしくの握手。」



俺の周りにはいないような独特な空気をもった可愛い女の子。

“秘密基地”にはピッタリな女の子だ。



「あ、握手…は、できません…。」


「できないって。手汗とか気にしないよ俺。」


「で、できないんです…!失礼します!」


「あ、ちょ、」



…独特の、空気をもった女の子。

と、いうよりかは、もしかして第一印象から嫌われちゃったのかもしれない。



差し出した手に温度が触れることはなくて宙ぶらりん。

パタパタと走り去る後姿を見送って、ため息を一つ。



「ユズちゃん、ね…。」






≪秘密基地にはピッタリな女の子≫


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