エントランス1
長編です
SF要素は薄いです
……エタらないといいなあ(他人事)
Wicca laboratory
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Morpheus174・wav (DLpassはいつもの場所に反転)
(DLpass 明晰夢)反転ここまで
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今、中高生を初めとして一部の人間に噂になっている音楽ファイルがある。
それは、あるときは奇妙な怪談として、あるときはヒミツの果実を共有するようにそれは現実の裏側に名を浸していた。
「確実に明晰夢をみられる音楽ファイル」である。
明晰夢とは、それを夢だと自覚のある夢のことだ。
通常、夢というものは、みている当人はそれを夢として自覚することはできない。みている夢の内容がどれほど奇想天外なものであれ、過去に経験したことであれ、普通は見ている当人がそれを夢の産物だと疑うことなどない。
何でも脳の客観的視座を司る部分が、睡眠中に機能することができず、どんなに矛盾に満ちた世界に落とされても、疑問に思うことはないらしい。
だが『明晰夢』というのは、特殊な訓練、あるいは体質によって、その奇天烈な世界を夢だと自覚できるようになった特殊な夢のことを言う。そして明晰夢と自覚すると、その人間は夢の内容すら、自分でコントロールできるようになるそうだ。不可思議に満ちた夢を自分の思うままに変化させられるのだ。
明晰夢を体得した人間は、夢の中で様々なことが出来る。
ある人は意中の人間と愛し合う夢をみることができ、またある人は勉強の復習をそれで行い成績に役立てたろ。あげく霊的な超能力を得た……などというオカルティックな証言もあるくらいだ。
特に明晰夢をみたことでスピリチュアルな体験をした、という類の話は積もって山になるほどある。試しにすこしネットでその手の情報を調べてみると良い。宗教じみたサイトにすぐたどり着くだろう。
もちろん、明晰夢がどこまで自由に夢を変革できるのか、ESPなどの超能力を本当に発露できるのか、真偽のほどは定かではない。他人には確かめようがないものだし、そもそもが夢である。ましてやネット上の言葉ならばいくらでも偽ることができるからだ。
しかしそれが本当だとしたら便利だ。
だが明晰夢を体得するのは中々に難しい。元々夢は自覚できるものではないし、個人差はあるにしろ、少し訓練しても体得できない人間のが殆どだろう。
勿論ネット上には明晰夢をみるための訓練方法、音楽や催眠誘導音声、怪しいものではクスリなどが数多くあるが、どれも効果は個人差があり、絶対ではなかった。
そうした中、話題になったのはとある無料の音楽ファイルだった。
そのファイルは、よくある催眠誘導の音声でも、環境音めいたものでもない。ただの、しっかりとしたメロディでだった。
その音楽は、どこの誰か、どのような理論で編んだものなのかは、はっきりとはわかっていない。ホームページの管理会社も外国のものであり、そのホームページには作者の連絡先などがまったく明記されていない。もちろんダウンロードに個人情報の登録など一切として必要ない。
だがその音楽ファイルの効果は、他の追随を許さないほど覿面であり、一部のネットユーザーの間で話題になった。
それは、ファイル名にちなんで、ネットではこう呼ばれていた。
『モルフェウスのメロディ』
私は、それを配信しているサイトにアクセスした。
メロディ自体はあらゆる動画サイトに投稿されているが、動画サイトに転載する過程でわずかでも音質が劣化すると途端に成功率が下がるということだった。同様にヘッドフォンもある程度音質が高い物をを使用することが推奨されていた。
事実、私も転載された動画サイトからダウンロードしたものを一度使ったみたが、明晰夢をみることはできなかった。
ホームページの名は和訳で魔女の実験室。いかにもなサイト名だった。
パスワードを入力し、圧縮されていたその音楽ファイルをダウンロードする。パソコンを介してスマートフォンにファイルを移す。五分の音楽に100メガバイト。普通ならありえないくらいの大容量だった。
付属していた音楽についての説明テキスト……readmeは確認しなかった。下調べの段階でおおよそ掴んでいたし、早く寝てしまいたかったからだ。
私はパソコンの電源を落とし、スマートフォンに接続したヘッドホンをかぶり、布団に横たわった。
息の邪魔をする自分の髪を口元からどかしながら、音楽の再生ボタンを押す。
流れ始めた音楽は歩くような速さで私の耳を包み込んだ。
夢の世界にいざなうどこか歪んだ三拍子。今まで聞いたことのない不思議な和声構成だった。少し歪んでいてそれでいて不快ではない、むしろ心だけどこか別のところに離される、そんなメロディだ。単なるプラシーボ効果なのかもしれない。
……この音はなんの楽器なんだろう?ピアノのような……ストリングのような……。だめだ。音楽のことは考えるのはやめよう。
酷使した体を、磨耗した心を、それできた自分を抱きしめるようにしながら、なめるように耳に広がる音楽に身を任せた。
――最初は、なにを見下ろしているのかわからなかった。
見えるもの自体は慣れ親しんだものだった。布団、縫いぐるみ、散らかった楽譜。傍らには高いところにあるはずの蛍光灯。ただ、視点が違った。
真下には黒髪に埋もれた誰かの頭。うつ伏せに寝てしまう癖のある体は胎児のように丸まって布団を膨らませている。
……私だ。私が今みているのは私の体だった。
これは……幽体離脱だ!気づいた瞬間、身体全体を揺さぶられるような衝撃を受けた。
ふわふわと、体が浮かんでいる。無重力というのはこういうことをいうのだろうか。だが自由には動けず、ただ浮かんでいるだけだった。
とりあえず、床におりられないのともがいてみたが、前にも上にも下にも動けなかった。
だが突然心臓を鷲づかみにされたような緊張でとっさに眼を閉じた。
次の瞬間、私の意識は全く違う場所に移動していた。
真っ暗な通路だった。先ほどまで嫌ほど体重を感じなかった体は、重力に従って足先に重みを預けていた。ヒタリ、とよろめき壁に手をつくと、それは煉瓦でできていた。
通路のさきは見えない。
「これは夢だ」
自覚できていた。さきほどまで自分がベッドの上であのメロディをきいていたことをしっかり覚えており、……つまりは、現実と夢幻との間の記憶に連続性がある。
耳を澄ませても、寝る際にループさせていた音楽は聞こえなかった。
間違いない…明晰夢だ!
おもわずやった、と声を上げた。成功だった。先ほど流した奇妙な音楽は、確かに私を私のまま、夢の世界に誘ったのだ。
この真っ暗な煉瓦の通路は私の夢の産物……なのだろう。何を表しているのかはわからない。私はカントでもデカルトでもない。考えたところで無意味だろう。
通路は前後に果てしなく広がっていた。明かりはまったくない。両方に蛇が口をあけ、底なしの胃が覗いているような感覚がした。どちらに言っても続いても暗闇を歩くことになる。さて、前後どちらにいくべきか。
「助けて」
幼い声が前方から聞こえた。突然だったので全身がびくりとふるえた。
「誰!?」
私は大声で聞き返した。
「助けて……」
もう一度、かすかに少女の声が聞こえ、その後はなにも聞こえなくなった。
「……よし、わかった」
私は声の聞こえた前方に、進路を定めた。
通路は暗いのに、不思議と恐怖はなかった。まるで、この道は安全だと元から知っているかのようだった。しかし私の記憶では、こんな場所は行ったこともみたこともない。
夢は必ずしも、知っている場所のみを写すわけではないのだろう。そう思い歩みを進める。先ほどの助けを呼ぶ声はもう聞こえなくなった。誰だったのだろう。ここは夢幻の入り口、よくわからない声の一つや二つはあるのかもしれない。
足並みは不思議と軽やかだった。夢だと自覚しているということもあるが、今だけは、この床についてから数時間の自覚できる時間は、現実でのしかかっている何もかもから自由なのだ。
人間の地獄である現実よりも、静かなこの通路のほうが、よほど居心地がよかった。
だが永遠に続くような暗闇をすすむに連れ、何か途方もない恐怖が身体を絡めるようになった。
この通路を包む闇への恐怖か……それともこの先にある何かへの恐怖か、自分自身もわからない。だが臓腑の底をねじ込まれるような恐怖がわき起こり、夢なのに、心臓がイヤに早く動いていた。
もしかして、先ほどの幼い声は、私を地獄に招くための罠だったのではないか、そんな想像すら鎌首をもたげていた。
――去れ
唐突に先ほどとの少女とは真逆とも言える、老人の厳かな声が背後から響いた。
「……」
言葉は返さなかった。従う気もなかったからだ。
――去れ
無言への返答は同様の言葉で返された。
聞いたことある声だった。だが、誰なのかはわからない。わからないように思っているだけなのかもしれない。
戻らなくてはならないという焦燥に包まれた。
実はこの場所はきてはいけない場所だったのではないか。自分の心の奥の暗闇、生者の身で踏み入れてはいけない領域を夢でみているのではないか……そのように思い始めた。
だがそれでも現実より、そこは心地よいはずだと私は、恐怖を現実逃避という石臼で挽いた。警告にも恐怖にも従わず、通路をすすんだ。
どれくらい歩いただろうか。いつしかどちらの声も聞こえなくなった。時間感覚がない。
そんなとき唐突に扉が闇より出だ。
厳めしい鉄でできた扉だった。冷たい熱気を帯びたノブは触れられることを拒んでいた。
少し躊躇い、鉄でできたそれを押す。重々しい外見に対してそれは軽かった。
途端、光に包まれた。
暖かで、心安らぎ、全能感にあふれる感覚が、私を支配した。
そこは見慣れない町の見慣れた一角だった。線路沿いの一角だ。金網は所々さび付き、茶色に変色したヨモギが生えている。空は晴れているのにどこか薄暗く、道はドライアイスを溶かしたように軽く薄靄が這っていた。
「ここは…蒼橋?」
蒼橋とは私の住まう地域のことである。首都から少し離れたところにある街だ。かつて製鉄が盛んだったが今は廃れている。その代わりいくつかの工場地帯と住宅街、そして大きな歓楽街があり。全国でもそこそこ大きめの都市に分類されるだろう。
――いや、違う。ここは蒼橋じゃない。
よく似た街だ。よく似た世界ではあったが……どこにも見覚えはなかった。
どこがどう似ている、という具体性はない。赤ん坊が自身の母親を見分けるような、理由はなく確証だけがある感覚だった。
先ほどくぐった扉はすでに消失していた。だが、私が扉を踏み越えてしまったことは感覚で確信していた。つまり、ここは私の本格的な明晰夢の世界というわけだ。
「しかしまあ…夢の世界という割には現実じみてる。つまんないもんだね」
せっかく夢を明確にみるなら、好きな映画の世界やら、写真でしかみたことない海外の観光地などをみたかったものだ。それをどうして、何のひねりもないただの道に、立ち尽くさなければならないのだろうか。
服も寝たときのパジャマではなく、学校指定の制服だった。一番着慣れている服とは言え、せめてもう少しおしゃれをしたい。
「さてと…なにをしよっか」
なにも考えていなかった。眠る前は空を飛びたいとか好きなだけお菓子を食べたいとか服飾を漁りたいとか願いはあったが、今はまるで興味がなかった。
つまるところ私は、現実から離れた自由な世界にあこがれていただけだった。
「なんかみみっちいな私」
とりあえず、先程の助けを求めていた声の主を捜してみようか。随分前に聞こえなくなったが、捜索してみる価値はあるだろう。あまり当たったことのない直感にしたがい、進路を決めた。
__私がバカな男におそわれたのは、それからすぐのことだった。
初心者なので、誤字や間違った表現あればご指摘お願いします。