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この異世界は小説でできています  作者: りょう
第2章ライバルと熱き体育祭
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Page.16 あの頃のままで

 私はお嬢様とはメイドとして仕える前からの仲で、いわゆる幼馴染だった。初めて出会った頃の事が、正確に思い出せないくらい前からの付き合いで、メイドとして仕えるようになってからも関係の大きな変化なんてなかった。

 だけど今から約一年前位にお嬢様のご両親が突如亡くられて、それから彼女は塞ぎ込んでしまった。何ヶ月にも及ぶ療養のおかげで、学校に行けるまでに立ち直れたものの時々彼女は寂しい顔をしていた。


「迷惑だなんて私は一度も思った事はないですよ、この二ヶ月」


「え?」


 けど約二ヶ月前、突如お嬢様の中に別の人間が宿った事により、一年前までのお嬢様が帰ってきた。どうしてそんな事が起きてしまったのかは分からないけど、今まで通り、いやそれ以上のお嬢様に戻ってくれた事は、私はすごく嬉しかった。


「むしろ私は感謝しているくらいですよ。神楽坂優様」


「感謝なんてそんな……」


 だから私は今、お嬢様ではなくその中にいる彼に語りかけている。


「以前話した事がありますけど、あなたがお嬢様の中の魂として宿る前まで、ユーリティア様は両親を亡くしたショックで塞ぎ込んでいました。学校にもう一度通えるくらいの精神状態にはなったのですが、いつものような元気さはありまんでした」


「それが自分が入った事によって、いつものユーリティアに戻ったと言いたいの?」


「いつも以上なんです。ですから、もう一度一年前のようなお嬢様が見られて、私はすごく嬉しいんですよ」


 私は何一つ嘘を言っていなかった。彼にはそんな自覚なんてないのかもしれないけど、それでもいい。ただ私が彼に感謝しているという事だけ理解をしてほしかった。


「昔のお嬢様に会えないって考えると、少しだけ寂しいですけど、生きていていただけるなら私はそれだけで充分です」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 まさか感謝をされるなんて思っていなかった。キリハにもキリハなりの思いがあってそう言ってくれたのだと思うけど、その言葉は僕にとってすごく嬉しくて、少しだけ元気をもらう事ができた。


「ありがとう、キリハ」


「お礼なんて言わなくていいですよ。それよりもお嬢様にはしっかり休んでいてもらいたいです」


「あ、そっか私……」


 さっきまでの会話で忘れていたけど、僕は今高熱を出しているんだった。体育祭は続いているようだけど、今どうなっているんだろう。


「時間的にもうそろそろ騎馬戦の時間かな」


「そうですね。確か次のプログラムが騎馬戦です」


「せっかく練習してきたのに出たかったなぁ」


 一ヶ月、この日のために練習してきたと考えるとちょっぴり寂しくなる。でも、もう体は熱で動く事も出来ないし、今年は潔く諦めるしかない。


「やはり出たいですか?」


「勿論。でも今私熱出しているから身体は動かないし……」


「やる気があるなら、一つだけ方法があります。ただし、その反動もあるのであっまりお勧めしたくはないのですが」


 十分後

 僕はキリハやイスミと共に騎馬戦出場者の場所に待機していた。


「本当に大丈夫なんですかお姉様。かなりの高熱だって聞いていましたけど」


「やっぱり私諦めきれなくって。ここまで練習してきたからには、最後までやり通したいタイプだからキリハに協力してもらったの」


「キリハさんが?」


「本来あまりお勧めしたくない方法ではありますが、たまには恩返しをしたいなって思いまして」


 今実は一時的に熱が下がっている。キリハが僕に使ってくれたある魔法のおかげで、今ここに立てているのだけれど、その説明はまた後でするとして、今は間も無く始まる体育祭の締めくくりとなる騎馬戦に集中する事にする。


 今更ながらに説明しておくと、この騎馬戦は四人一組のペアで一騎の騎馬を作り、鉢巻とか関係なしに相手を騎馬の上から落としたら勝ち。こちらは学年関係なしの団対抗戦で、それぞれ赤、青、黄色の団の騎馬に分かれている。


「どの団も僅差の点数だから、この戦いを制覇した団が優勝ね」


「最後に残るのはお嬢様ですから、大丈夫ですよ」


「いや、案外生き残るのは難しいと思う。三年生の学年トップも参加しているみたいだし」


「お姉様よりも強いのですか?」


「話には聞いた事がありますけど、お嬢様に引けを取らない実力らしいです。もしくはそれ以上かもしれません」


 僕達の団は赤、サキの団は青。そしてその三年生の学年トップは黄色と、見事に三つに分かれている。学年関係なしなので、どちらとも衝突する可能性はあるので気を引き締めないと。


『それでは騎馬戦に出場する選手達が入場します』


 入場のアナウンスが入る。さあ、体育祭の最後くらい花を咲かせよう。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 ちなみに僕が乗る騎馬はイスミとキリハともう一人のクラスメイトで構成されている。自然な流れで僕が騎馬に乗る側になったけど、別に身長差とかそんなの関係ない。


「そう、身長なんて関係ないのよ」


「誰に言っているんですか?」


 まあそんな茶番はさて置き、全ての騎馬がグラウンドに集結し、それぞれの配置につき終わった。見たところによると、騎馬の数は三つの団合わせ五十はいるのではないだろうか。


「これはかないの大混戦になりそうね」


「敵味方見分けるのも大変そうだから、気をつけないとですね」


 この中からサキと限定的に戦うのは恐らく難しい。魔法の消費とかにも気をつけないと。


『では、騎馬戦を始めようと思います。よーい』


 全部が揃ってしばらくして、審判が声を全員にかける。いよいよ決戦だ。


 パーン


 銃の音が校庭に響き渡ると、一斉に騎馬が動き出した。


「行くわよキリハ、イスミ!」


「「はい!」」


「ところでお姉様、何故まだレオタードを着ているんですか?」


「え? 着替える時間がないからもうそのままでいいかなって」


「お姉様も、どちらかというと変態の領域に入ってきましたね」


「誰が変態よ!」


次回予告

「熱で倒れたって聞いていたけど、ちゃんと参加したのね私のライバル」


「決着は騎馬戦でつけるって約束だったもの。私だって引けないわよ」


騎上の戦い、ユーリティア対サキ。二人の戦いも決着へ。そして現れるもう一人の強敵とは。

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