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006・【副長視点】あっはは!ばーかばーか!隊長のぶぁ〜かッ!!(笑い転げる副隊長その5)たしかに俺に学は無いな(隊長)




 今日も平穏。だから訓練訓練。天気もいいし、こんな日に体動かすのは気持ちいいよな!


「マリ副長。今、少しいいか?」


 と、隊長がやってきた。腕には何かの包みを抱えている。


「お、隊長ー、何だー?あ、時間あんなら手合わせしようぜっ!」

「いや、今は無理だ。すまん。これ良かったら皆で食ってくれないか?」


 差し出された包みを開くと、中には大振りなパイが切り分けられて並んでいた。また大量だな。ま、ちょいと隊員に配ればすぐ消える量だけど。


「お、パイじゃん!さんきゅ〜!いただきっ!」


 パイを一切れ取り出し、かぶりつく。冷めてんのにほくほくしゃきしゃきうまうま。…もうホントにこいつって何なんだろう。


「こりゃリーデルが喜びそうだな。そういやあいつ最近会ってないけど、元気?」

「元気…だろうか?昨日は頭を抱えていたし…やはり二日酔いだったのか?後でスープでも作ってみるか…」


 二日酔い?…たぶん違うな。リーデルが頭抱えるのは十中八九はお前の事だと思う。今度は何したんだ?


「い、いや…違うと思うぜ?だってあいつ、酒異常に強いじゃん。オレあいつが二日酔いなんてしてんの見た事ないし」

「?そうか。病気などでないといいんだが…」


 悩むようにどこか遠くを眺めた隊長の視線がゆっくりと戻って来る。その顔はさっきよりも真剣だった。一体何事だろう、と自然にオレも少し真剣になる。


「ところで、ごーこんとはどんな魔物なんだ?昨日資料を漁ってみたんだが…載っていなくてな」

「へっ?合コン?」


 だから、思わず自分の耳を疑った。聞き間違いだろうと。でも隊長はゆっくりと頷いた。


「ああ。まさか…新種の魔物なのか?」

「えっと…合コンってあの合コン?」


 はい?合コンが魔物って何?たしかに魔物よりもタチ悪い奴もいたりするけど…新種の魔物?お前頭大丈夫?もしかしてこれかリーデル?


「?どのかは知らないが…複数いるのか?先日、俺も討伐に呼ばれたんだが、結局現場に現れなくてな。あれだけの戦力を集めていたし、いったいどれほど強大な魔物だったのだろう…」

「ま、魔物?討伐?」


 …それどうすりゃ討伐出来んの?仲良くなりそうな奴らの雰囲気を酒場ごとぶち壊せばいいの?ふぐっ…あぁもう無理!!


「あーっはははっ!!ばーか!ばぁーか!隊長のぶぁ〜かッ!!ひーっひっひっひ死ぬ〜!!ぎゃはははは!!!!」

「たしかに俺に学は無いな」


 だから違うって!そういう意味じゃ、は、腹がっ!腹筋が攣る!引き攣るってこれ!!あっははは息がッ!!息がぁッ!!


「ち、違…あっははははは!!ひーっひひひっ!!」

「…大丈夫か?」


 ぶっくくく!駄目!駄目だって!こいつは変なとこでアホだけど真面目だから!ナチュラルだから!いや真面目だからこそ…あっはははは!!


「だっ、だいっ、だいじょ、くっははははは!!」

「?何か楽しいことがあったのか?よかったな」


 た、隊ちょ、お前少し黙れ!オレを笑い殺す気なのかよ?あは、ち、窒息するからっ!!ふっくくくくッ!!あーっはっはっはっは!!!!



 ………数分後………



「はー…。あのな、隊長。ぶっちゃけ合コンってのはさぁ、複数の見知らぬ男女が集まって、一緒に酒飲んで、あわよくばカップルになっちゃいません?っていう飲み会のことだぜ?」

「な…魔物じゃ…ないのか…」


 いつもより僅かに見開かれた隊長の鋭過ぎる目。うん、驚いてんなぁ。


「だいたいなんで合コンなんかに行く事になったんだ?お前、酒飲まないじゃん」

「…何故だろうか?」


 いや、そんな不思議そうにオレに聞かれてもなぁ…知らねーよ?


「まあ、いろいろ助かった。俺はもう戻るから、後は頼む」

「はいよー。ごちそーさん。いつも通り配っとくな〜」


 よし、今日の仕事終わったら詳しくリーデルから聞き出そう。絶対面白いに決まってる。今から楽しみだな。




 その後、もちろんリーデルを捕まえて、(あっちも飲みたい気分だったらしい)酒場へと連行し、事の顛末を愚痴られながら聞き出して笑い、隊長の勘違いを教えて頭を抱えたリーデルを見て、また笑い転げたのは言うまでもない。

 あー、面白かった!






 《隊長は ひとつ 賢くなった!》…常識を1獲得。レベルはそのまま。手作りパイをたくさん失った。でも喜んだ。


 隊長がパイを作るのは、持ち運びが楽だから。ご近所用には普通サイズで、隊員用には少し大きめに作ります。


 【マリアン】…第六団隊、副隊長その5。元は第三団隊所属。

 人懐っこい性格と爽やかな見た目で裏表の無い戦闘好き…つまりは脳筋な青年。明るく面倒見も良いが、その分暑苦しい。よく笑い、一度ツボに入ったら止まらない。なんかいつも笑ってる奴。

 第三団隊時代、いずれは隊長かといわれるほどの強さを持っていて天狗になりかけていたのだが、鬼のように強いと噂の的だった隊長に無理矢理挑んであっさり打ち負かされ、それ以来隊長を気に入り、当時誰もなりたがらなかった第六団隊副隊長に志願した。

 隊長は敬意を持ちつつもいつか勝ちたいライバルであり、気心知れた親友。リーデルとは気の合う酒飲み仲間で悪友。



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