エピローグ
「あ、こりゃ・・死んだね」
信号無視の車に撥ね飛ばされ、後ろに向かって空中を飛びながらそうつぶやき
『ゴキャッ』という首の折れる音とともに僕の短い人生の幕は落ちた。
『ピチャピチャピ・・』
顔を舐め回すザラザラとした触感と音で僕は目をさまし、ぼんやりとしか写らない目で
周りを見渡した
(うーん・・何で僕生きてるんだろ?というよりここは何所で、この感触はいったい・・)
「よかった、ずっと反応がなかったから、もうだめかと・・・あなた来て、早く!」
声のした方に意識をむけると、黒っぽい物が見え、何度かまばたきを繰り返すと、
徐々に視界がハッキリとしてきて
(顔?にしては少し大きいような・・・馬?・・・なぜ?・・)
ハッキリとした目で見ると、目の前にみえていたのは多少の違和感、角が有ったりするが、
明らかに馬の顔そのものだった。
「どうした?!・・・いったい何が・・・おー!!!起きたのか、よかった、
本当に良かった・・」
目の前の光景に動揺して固まっていると、新たにもう一頭の馬が視界に入りこんできた。
「ええ、意識ははっきりしてきたようだから、もう大丈夫だと思うのだけど、
できるだけ早く命名の儀式をしたいの。」
動揺している中、初めからいた方がそんなことを言い出して
(命名の儀式?何の名前を決めるんだろう?ていうか、いまさらだけど馬が普通に
しゃっべってるし、よく見ると後から来た馬は足八本あるし、これは夢かな?・・」
完全には覚醒していない意識の中、そんな事あおつらつらと考えていると
「そうだな、まだ存在も確定していないようだし・・わかった、命名の儀式を
始めよう」
後から来たほうの馬が、初めからいた方の馬に同意して僕のほうに近ずき、
先にいたほうの対面に立って祈るように言葉を紡ぎはじめた。
「世界に満ちたる精霊よ、わが言の葉を祖たる神々の元に運びたまえ、
クレイとミーアの間に新たに生まれし子、その魂と名を世界に定め、
安定と祝福を与えん・・・命名[コンラッド]」
後から来たほうクレイというらしいが、その馬が儀式?を始めると、その体は輝き始め
名前、二人・・二頭?・・まあ二人のほうが言いやすいか、二人のほかに僕しか居ない
ので僕の名前らしい、を最後に発すると、クレイの体の周りで輝いていた光が空へと昇り
上空で四方八方に飛び散り、しばらくすると、空からさまざまな色をした光が降り注ぎ、
僕の体に吸いこまれた。
「成功したの?・・」
「ああ、大丈夫だよミーア、私たちの子供は神の祝福を無事受け入れた」
頭上で交わされる言葉を半ば聞き流しながら僕は体に入り込んできた光・・情報の波
に翻弄され、その衝撃で、なぜこんな所に居るのかを思い出した。
(ああ、そっか僕やっぱり死んでたんだった・・・)
この世界に来る前に話した馬の神との話しを思い出しながら、僕は意識を手放した。