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独白
気まぐれな人だった。
ダメなところばかりが多くて、良いところは顔の良さくらい。
シショーは本が大好きで、僕はシショーが本を読む姿を盗み見るのが好きだった。
白く長い指が、紙のページをはらりとめくる。
長いまつ毛に縁どられた淡い瞳は僕には到底真似のできない速さで文字を追って、ページは凄まじい速度でめくられてゆく。
日が落ちて、西日が室内を赤く染めるとシショーはようやく僕を見る。
「今日は、どこまで読めた?」
僕が読んだ本を答えれば、シショーはその本の中身からいくつか質問をする。
間違えれば、もう一度と。
本の中身を覚えるようにとシショーは言う。
全部の本じゃないんだけど、僕が読んだ本を聞いて、その中にシショーの何かに引っかかる本があれば、抜き打ちテストをされるんだ。
恐ろしいことに、シショーは一度読んだ本の中身をすべて覚えているらしい。
そんなのテストで満点取り放題じゃん!と言えば、「取ったらなんだというんだ」とつまらなそうに返事が返ってきて、毎度試験のために勉強する学生の気持ちなんてわからないんだろうなと僕は思った。
シショーは、表情筋が死んでいて。
感情を表情から読み取ることは難しい。
笑った顔なんて数えるほどしか見たことない。
でも、確かあの日は。
あの日はシショー、悲しいような、困ったような。
そんな表情してた。




