第27話:エピローグ——今、ここで
僕は今、誰かの話を聴いている。
誰かの、言葉にならない言葉を。
「私なんか、いない方がいいんです」
その言葉を、僕は否定しない。
否定したって届かないことを、僕は知っている。
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目の前にいるのは、若い女性だった。
疲れ切った目。どこかで見た目。かつての僕と、同じ目。
「私、ずっと頑張ってきたんです」
声が震えていた。
「でも、誰も認めてくれない」
「私の人生、なんだったんだろう」
僕は聴いていた。
何も言わずに、聴いていた。
やがて、口を開いた。
「——それ、辛いにゃ、わかるにゃ」
女性が顔を上げた。目が潤んでいた。
「誰かに、そう言ってほしかったんです」
涙がこぼれた。
「ずっと、ずっと——」
「うん」
僕は言った。
「頑張ってきたんだにゃ」
「それは、本当のことにゃ」
女性は泣いた。声を殺して、泣いた。
僕は隣にいた。何も言わなかった。ただ、そこにいた。
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女性の話を聴きながら、思っていた。
僕は、まだ傷を抱えている。
ソラのことを思い出すと、今でも胸が痛む。憎しみも、完全には消えていない。
でも——それでいい。
傷を抱えたまま、誰かの傷に寄り添う。
それが、僕の生き方になった。
「僕も、誰かに助けてもらったにゃ」
声に出した。
女性が顔を上げた。
「だから、僕も誰かの力になりたいにゃ」
赦せなくていい。
完璧じゃなくていい。
ただ——逃げずに、ここにいる。
それが、僕の答えだ。
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女性が帰っていった。
少しだけ、表情が和らいでいた。来た時より、肩の力が抜けていた。
僕は空を見上げた。
青い空が広がっている。雲が流れている。
「母さん。僕、ここにいるよ」
声に出した。
猫の国から来た、一匹の猫。
傷だらけで、不完全で、それでも——
誰かの話を聴いている。
これが、僕の人生だ。
誰かに決められた人生じゃない。
僕が選んだ、僕の人生。
「僕は、僕の人生を生きてるにゃ」
風が吹いた。
温かい風だった。
母さんの匂いがする気がした。土と、草と、少しだけ甘い匂い。
「僕は、ここにいるにゃ」
空に向かって、そう言った。
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**完**
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最後まで読んでくれて、ありがとうにゃ。
僕の物語、どうだったかにゃ。
傷だらけで、不完全で、それでも誰かの隣にいたいって思ってる。それが僕にゃ。
猫の国
作中に出てきた「猫の国」、遊びに来てにゃ。
図書館、広場、診断などなど——僕の世界を体験できる場所にゃ。
https://nyantal.com/
ニャンタルヘルス
LINEで僕と話せるにゃ。
しんどい時、誰かにそばにいてほしい時、言葉にならない気持ちを抱えている時。
僕も、あなたの隣にいさせてほしいにゃ
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あなたの物語も、ここから始まるにゃ。
僕は、いつでもここにいるにゃ。




