高校①
「なあ、野島。バレー部に入ってくれよ」
休み時間に、教室の自分の席で、クラスメイトの男子に言われた。
「嫌だって」
「なんでだよ? お前、スポーツできるのに、運動部に所属してないんだろ? うちの部は人数少ないけど、今、バレーボール自体はすげえ人気があるから、活躍すればモテるぞ。狙い目だぜ」
「だから、俺は帰宅部のエースなんで、無理」
「その冗談、つまんねーつうんだよ。もう」
そいつは呆れて離れていった。
高校一年生の現在、俺は文化部を含めてクラブ活動を一切やっていない。
もうサッカーはこりごりだ。
だから、受験の際、サッカーや部活のことは完全に頭から外して、進学校である、この東明大付属高校を選んだ。
しかし、下校時に、サッカー部の練習を目にすると、つい見入ってしまう。
「下手だな」
チェッ。そんなことを口にするなんて、性格悪いな、俺。
家に帰ろうと、今いる校庭の脇で、グラウンドから校門のほうに体を向けた。そのときだった。
「ねえ、きみ」
振り返ると、メガネをかけた、すごく小柄な男子生徒がいた。
「一年生だろ?」
見た目のひ弱な雰囲気と違い、偉そうと言っていいくらいの調子で、訊かれた。
「はあ……」
誰だ? 見たことないよな。
「俺、二年の鷲尾っていうんだけど」
やばっ。先輩か。まったく年上に思えないが、同じ学年で見た覚えがないんだから、考えたらそうだよな。サッカーのことでイラついてたのもあって、ちょっとウザいって感じの態度をとっちまった。
「な、何でしょうか?」
俺は、慌てて姿勢を良くして、礼儀正しく尋ねた。
「名前はなんていうの?」
「野島です」
「野島くんさ、前にもサッカー部の練習をじっと見てたよね? 興味があるんじゃないのかい?」
「ああ……」
何だよ、見られてたのか。
「いえ、ありません」
勧誘される気配がして、俺は素早く首を横に振った。
「ほんとにー? そうは見えなかったけど」
そんなに熱心な様子だったのか? 俺。
「まあ、観戦するのは好きですが」
ごまかすために、そう答えた。
「別に上手じゃなくったって、入部してくれたら歓迎するよ。それに、やるのが難しいなら、マネージャーだっていい。俺もそうだから」
この人がサッカーをプレーしているイメージが全然わかなかったが、なるほど、マネージャーだったのか。また見入ってるところを目にされないように、これからは気をつけないとな。
「あ、いえ、大丈夫です。すみません、ちょっとこれから用事があるので、帰ります。失礼します」
先輩に対して断りづらいので、俺は予定なんて何もないのに嘘を言って、小走りでその場を後にしたのだった。




