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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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8/8

高校①

「なあ、野島。バレー部に入ってくれよ」

 休み時間に、教室の自分の席で、クラスメイトの男子に言われた。

「嫌だって」

「なんでだよ? お前、スポーツできるのに、運動部に所属してないんだろ? うちの部は人数少ないけど、今、バレーボール自体はすげえ人気があるから、活躍すればモテるぞ。狙い目だぜ」

「だから、俺は帰宅部のエースなんで、無理」

「その冗談、つまんねーつうんだよ。もう」

 そいつは呆れて離れていった。


 高校一年生の現在、俺は文化部を含めてクラブ活動を一切やっていない。

 もうサッカーはこりごりだ。

 だから、受験の際、サッカーや部活のことは完全に頭から外して、進学校である、この東明大付属高校を選んだ。

 しかし、下校時に、サッカー部の練習を目にすると、つい見入ってしまう。

「下手だな」

 チェッ。そんなことを口にするなんて、性格悪いな、俺。

 家に帰ろうと、今いる校庭の脇で、グラウンドから校門のほうに体を向けた。そのときだった。

「ねえ、きみ」

 振り返ると、メガネをかけた、すごく小柄な男子生徒がいた。

「一年生だろ?」

 見た目のひ弱な雰囲気と違い、偉そうと言っていいくらいの調子で、訊かれた。

「はあ……」

 誰だ? 見たことないよな。

「俺、二年の鷲尾っていうんだけど」

 やばっ。先輩か。まったく年上に思えないが、同じ学年で見た覚えがないんだから、考えたらそうだよな。サッカーのことでイラついてたのもあって、ちょっとウザいって感じの態度をとっちまった。

「な、何でしょうか?」

 俺は、慌てて姿勢を良くして、礼儀正しく尋ねた。

「名前はなんていうの?」

「野島です」

「野島くんさ、前にもサッカー部の練習をじっと見てたよね? 興味があるんじゃないのかい?」

「ああ……」

 何だよ、見られてたのか。

「いえ、ありません」

 勧誘される気配がして、俺は素早く首を横に振った。

「ほんとにー? そうは見えなかったけど」

 そんなに熱心な様子だったのか? 俺。

「まあ、観戦するのは好きですが」

 ごまかすために、そう答えた。

「別に上手じゃなくったって、入部してくれたら歓迎するよ。それに、やるのが難しいなら、マネージャーだっていい。俺もそうだから」

 この人がサッカーをプレーしているイメージが全然わかなかったが、なるほど、マネージャーだったのか。また見入ってるところを目にされないように、これからは気をつけないとな。

「あ、いえ、大丈夫です。すみません、ちょっとこれから用事があるので、帰ります。失礼します」

 先輩に対して断りづらいので、俺は予定なんて何もないのに嘘を言って、小走りでその場を後にしたのだった。


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