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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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6/8

中学⑥

 以降も、基礎トレーニングにしても、試合形式の練習にしても、工藤の一秒も手を抜かないといった懸命なプレー姿勢は、見る者の目を引いた。俺たち他のメンバーだって、誰かに命じられているのではなく望んでサッカーをやっているのだから、真面目に全力で取り組んでいる。それでも、必死さや努力という尺度において、工藤は一段も二段も上だと認めざるを得ないレベルだったのだ。

 俺たちの指導をしているのは富田先生という人だが、工藤本人に話したように、頑張りを評価してくれることもあって、「出場できる」どころではなく、対外試合であいつの出番はどんどん増えていった。

 俺と工藤はともにディフェンダーの裏を取るのを得意とする。俺は身長は自分の年齢の男子の平均よりおそらく少し低く、工藤は反対に平均をやや上回るが線の細さが目立つなど、体格に恵まれておらず、ポストプレーを求められるタイプではない。なので共存という選択肢はあり得ず、俺がワントップで先発で出て、終盤に工藤と交代するかたちがほとんどなのだけれども、あいつはそこまで決定率が高くはないが十分な程度でシュートをちゃんと決めるし、何より快足で献身的に動き回るために、試合の序盤に比べて疲れている相手チームには脅威だ。

 そうして素晴らしい内容と結果を続けて、工藤は出場する時間も徐々に長くなっていったのだった。

「うかうかしてるとやばいな。レギュラーを奪われちゃうよ」

 部室で、工藤はおらず、他の部員たちといるときに、俺はそう口にした。

「またまたー。そんなこと思ってないくせに」

「な。暁斗のほうが点を取ってるんだし、終盤に工藤が出てくるほうが攻撃として効果的なんだから、入れ替えはねえよ」

「ハハハ。ならいいんだけど」

 みんな気を遣ってくれているのではなく本気で言っているのは間違いなかったし、俺は冗談だったように笑顔を見せたけれども、内心は悪い予感がして、それをぬぐうことはできなかった。


 その後、俺にとっての暗雲は現実となったのだ。

 全国中学校サッカー大会という大きな大会が迫った時期に、早見中という学校との試合が行われた。そこはサッカーの強豪として周辺地域では有名で、俺たち成陽中は、今のメンバーが入学する前の過去においても、一度も勝ったことがない。

 今回の一戦でも圧倒的にゲームを支配され、開始早々にシュートを決められると、なんとか耐えた時間帯がありつつも、計四失点。俺が一点こそ返したものの、それが限界なのが目に見えているといった試合展開だった。

 ところが、やはり試合の終盤に、俺との交代でピッチに立った工藤はなんと、およそ十分という短い時間で、一人で三点を奪ってドローに持ち込んだのだ。

 まずは綺麗にディフェンダーの裏を取っての得点。この時点では、向こうは残り時間が少ない状況で二点勝っているので余裕だった。

 工藤は続けて、ボールを持っている相手に食らいつき、こっちのコーナーキックにして、味方が上げた球を体ごと押し込む格好で決めた。

 さらに、慌てた早見中の選手に対して激しく迫り、ミスを誘って、持っていたボールを仲間のものにすると、間髪入れずに相手のペナルティエリア近くまで駆け上がっていって、やってきたロングパスを絵に描いたような見事なダイビングヘッドでゴールネットに突き刺したのだ。

 しかも、それだけ得点しながら、以前に語ったように、あいつに引き分けで良いというメンタリティーはないために、ちょっとも喜ばず、もう一点ゴールできなかったことを悔しがったのである。

「マジか……」

 俺たちは、その活躍と、勝利を求める貪欲な姿勢に、これまでも工藤には驚きや感心を散々させられてきたけれども、より一層の衝撃を受けて、呆気に取られてしまったほどだった。

 そして、何日か経って、全中でのスタメンの発表を迎え、富田先生が告げた。

「最後、フォワードは、工藤」


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