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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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4/7

中学④

「あのさ」

 休み時間にたまたま会ったことで、ちょっと久しぶりに学校の廊下で話していた水本が、俺に訊いた。

「自分はそこまでサッカーが上手じゃないって前に言ってたけど、なのにたくさんゴールを決められるのは、何かコツのようなものがあったりするわけなの?」

「ピンポーン」

 俺はクイズの正解音をまねた。

「え? ほんとに?」

「ああ」

「何なの? それ。教えて」

 水本は興味津々といった顔つきだ。

「サッカーって、あまり点が入らないスポーツだろ?」

「うん」

「だから、ディフェンダーは、何十分という試合時間のなかで、たった一点取られただけで敗戦の原因として批判されるときもある一方で、攻撃の選手は、何十回シュートを外そうが、一点取れば、それが決勝点となってヒーローになれるケースだって少なくない。ゆえに、俺のようなフォワードの人間は、守備の奴らから『いいよな』とか『ムカつく』って言われるんだよ」

「ああ、なるほど」

「俺、サッカーを始めた当初から、実際に口にされなくても、そのポイントに気づいてて、それが大きいんだ。つまり、決定的な場面でシュートを外しても、『試合が終わるまでに、何回もあるチャンスのうちの一回ゴールを決めればOK』って気持ちでいるから、引きずらないし、失敗してもいいって思っているおかげで、チャンスで緊張してボールをふかしたりすることがないんだよ。あ、『ふかす』っていうのは、ボールをゴールの遥か上に蹴っちゃうことな。プロでもけっこうふかすんだけど、あんなに上手いのに、なんでそんなミスをするんだ? って、そこに関しては不思議なんだ。まあ、プロはプレッシャーが半端じゃないのはわかるけど、『得点の決定機は絶対にものにしなきゃいけない』って真面目に考えすぎてるのもあるんだろうな、きっと」

「そっかー。スポーツはとにかくメンタルが大事だもんね」

 この話に水本はすごくしっくりきたみたいで、うんうんと何度も首を縦に振ったのだった。


 一日の授業が終わり、部活の時間になって、我がサッカー部の部室に、一人の生徒がやってきた。

「すみません。僕、入部したいんですけど」

「マジで? やったー!」

 部員のなかから、そう言う声があがった。

 どうしてそんなに喜んだのかというと、名前は工藤蒼太というその男子は、クラスは異なるが俺と同じ二年の、うちの学校に入ってきたばかりの転校生で、性格はおとなしそうなものの、身のこなしやたたずまいに運動ができる雰囲気が感じられたので、他の学年にも情報はいっていたけれども、とりわけ二年生のメンバーの間で「サッカー部を選んでくれないかな」と入部を期待する話になっていたのだ。

 ところが——。

「あれ」

 部屋にボールがあったので、「とりあえずここでリフティングをやってみて」と頼んだところ、数回しか続かなかった。

「何だ。初心者なの?」

 部員の一人が尋ねた。

「いや、前の学校でもサッカー部でした」

「俺も二年生だから、敬語じゃなくて、普通にしゃべっていいよ。そっか、前のところでもね……」

 俺たちみんな、会って間もない本人を前にして露骨にはしなかったけれども、がっくりと肩を落とした。

 しかし、グラウンドに移動して本格的にプレーを始めると、思ったほど下手ではなかった。それに、足はかなり速い。水本と一緒で、運動神経はあるが、サッカーにおけるボールの扱いに難があるといったタイプだったのである。

 というわけで、また仲間たちで、こう話したのだった。

「やっぱり入ってくれてよかったか」

「だな。練習して、もうちょっと上手くなりゃ、ちゃんと戦力になるよ」


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