表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドッグ・ランド  作者: いつき
第1章 ナスティー地区にて
3/9

第1話 レベロとオリバー

2025年4月4日

ニューヨーク州のはずれにあるスラム街、ナスティー地区。

そこには社会から切り離された、落ちこぼれ達が住んでいた。

ナスティー地区の治安は悪く、ところどころで窃盗、暴行が横行していた。


少年レベロもそのナスティー地区の住民の一人だ。

そしてレベロは今現在、路地で5人程の他住民からリンチを受けている。


ナスティー地区に住んでいる者のほとんどは5級、高くても4級の人間だが、

レベロはそれより下の6級国民であり、

レベロは5級以上の住民から、ストレスの捌け口にされていた。


レベロは理不尽なリンチを受けてもなお、一言もしゃべらず、その場から動かず、ただリンチを受け入れていた。

もちろんレベロはリンチされるのが好きなマゾヒストではない。

よくリンチされるので、レベロはリンチされても、いつもの日常だと受け入れていた。

ただそれだけだ。


「動けよレベロ!いつまで黙ってんだよ!」

 「まだ蹴り足りねぇんだけど?!」

  「なんか言ってみたらどうだぁ?おい!!!」


レベロの体は特段強いわけでもない。むしろ常人より弱い方で、もちろんボロボロだ。


次の瞬間、なんだか風向きが変わった気がした。

異様な雰囲気を感じ取ったのはレベロだけではなく、リンチしていた他住民も感じ取っていた。


リンチ集団はみな一斉に同じ方向を向いた。路地の入口だ。

そこには、一人の男が立っていた。

その男の名は、オリバー・ケリー。


「・・・オリバーだ。やばい、引け」


逃げ腰になった相手を、オリバーは一歩だけ追う。

オリバーは立ち止まり、足元に散らばっていた適当な小石を3つほど拾う。

オリバーはそれを上に投げた。


オリバー「『自己重力(セルフ・グラヴィティ)』・・・!!!」

オリバーは小声でそう呟いた。


すると、上に投げた3つの石は空中で直角に方向転換し、

逃げるリンチ集団のもとへ一直線に飛んで行った。


その石は、正確に逃げるリンチ集団たちの体に命中する。

さらに石は何度もUターンしながら、何度もリンチ集団の体に命中する。

まるで、リンチ集団の体に強力な引力が発生したかのように。

「ぐわぁっ!!」

 「いってぇ!!」

  「わかった!わかったから!!もうやらねぇから!!!」

負け台詞的なものを吐いて、リンチ集団は去っていった。



静寂が戻った路地に、レベロの浅い呼吸だけが残る。


オリバー「レベロ」


オリバーが近づく。声には怒りというより、苛立ちと心配が入り混じった感じだった。


レベロ「・・・・ありがとう、オリバー」


礼を言った途端、オリバーの手がレベロの肩をつかんだ。

強くはないが、レベロを一時的に拘束するには十分な力だ。


オリバー「ああいうときは、自分のファクルテイツを使っていいんだぞ。ずっと殴られっぱなしでどうするんだ。少しは抵抗しないと、いつまでたっても見下されるだけだ」


レベロは視線を落とした。


レベロ「・・・使いたくないんだ。使っても意味が無いんだ。

あいつらはどうせ5級の人間だ。5級の人間だから6級の僕を襲ってきたんだ。

この国の階級制度は絶対的だ。階級が変わらない限り、僕が何をしようともあいつらは常に僕を下に見る。そしてまた懲りずに襲ってくる。

あいつらにとって、ストレス発散方法はそれしかないんだと思う。

国のシステム上、上の階級の者には絶対に敵わない。6級が5級に勝てるはずがないんだ。」


オリバー「それでもだ!

もしリンチされて、本当に死にそうになった時、今回みたいに俺が来なかったらどうする?」


レベロは答えられなかった。


レベロは何とか立ち上がり、オリバーと共に帰路についた。

ファクルテイツ解説1

 オリバー・ケリーのファクルテイツ「自己重力(セルフ・グラヴィティ)

  能力:ものの引力を自在に操ることができる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ