第1話 レベロとオリバー
2025年4月4日
ニューヨーク州のはずれにあるスラム街、ナスティー地区。
そこには社会から切り離された、落ちこぼれ達が住んでいた。
ナスティー地区の治安は悪く、ところどころで窃盗、暴行が横行していた。
少年レベロもそのナスティー地区の住民の一人だ。
そしてレベロは今現在、路地で5人程の他住民からリンチを受けている。
ナスティー地区に住んでいる者のほとんどは5級、高くても4級の人間だが、
レベロはそれより下の6級国民であり、
レベロは5級以上の住民から、ストレスの捌け口にされていた。
レベロは理不尽なリンチを受けてもなお、一言もしゃべらず、その場から動かず、ただリンチを受け入れていた。
もちろんレベロはリンチされるのが好きなマゾヒストではない。
よくリンチされるので、レベロはリンチされても、いつもの日常だと受け入れていた。
ただそれだけだ。
「動けよレベロ!いつまで黙ってんだよ!」
「まだ蹴り足りねぇんだけど?!」
「なんか言ってみたらどうだぁ?おい!!!」
レベロの体は特段強いわけでもない。むしろ常人より弱い方で、もちろんボロボロだ。
次の瞬間、なんだか風向きが変わった気がした。
異様な雰囲気を感じ取ったのはレベロだけではなく、リンチしていた他住民も感じ取っていた。
リンチ集団はみな一斉に同じ方向を向いた。路地の入口だ。
そこには、一人の男が立っていた。
その男の名は、オリバー・ケリー。
「・・・オリバーだ。やばい、引け」
逃げ腰になった相手を、オリバーは一歩だけ追う。
オリバーは立ち止まり、足元に散らばっていた適当な小石を3つほど拾う。
オリバーはそれを上に投げた。
オリバー「『自己重力』・・・!!!」
オリバーは小声でそう呟いた。
すると、上に投げた3つの石は空中で直角に方向転換し、
逃げるリンチ集団のもとへ一直線に飛んで行った。
その石は、正確に逃げるリンチ集団たちの体に命中する。
さらに石は何度もUターンしながら、何度もリンチ集団の体に命中する。
まるで、リンチ集団の体に強力な引力が発生したかのように。
「ぐわぁっ!!」
「いってぇ!!」
「わかった!わかったから!!もうやらねぇから!!!」
負け台詞的なものを吐いて、リンチ集団は去っていった。
静寂が戻った路地に、レベロの浅い呼吸だけが残る。
オリバー「レベロ」
オリバーが近づく。声には怒りというより、苛立ちと心配が入り混じった感じだった。
レベロ「・・・・ありがとう、オリバー」
礼を言った途端、オリバーの手がレベロの肩をつかんだ。
強くはないが、レベロを一時的に拘束するには十分な力だ。
オリバー「ああいうときは、自分のファクルテイツを使っていいんだぞ。ずっと殴られっぱなしでどうするんだ。少しは抵抗しないと、いつまでたっても見下されるだけだ」
レベロは視線を落とした。
レベロ「・・・使いたくないんだ。使っても意味が無いんだ。
あいつらはどうせ5級の人間だ。5級の人間だから6級の僕を襲ってきたんだ。
この国の階級制度は絶対的だ。階級が変わらない限り、僕が何をしようともあいつらは常に僕を下に見る。そしてまた懲りずに襲ってくる。
あいつらにとって、ストレス発散方法はそれしかないんだと思う。
国のシステム上、上の階級の者には絶対に敵わない。6級が5級に勝てるはずがないんだ。」
オリバー「それでもだ!
もしリンチされて、本当に死にそうになった時、今回みたいに俺が来なかったらどうする?」
レベロは答えられなかった。
レベロは何とか立ち上がり、オリバーと共に帰路についた。
ファクルテイツ解説1
オリバー・ケリーのファクルテイツ「自己重力」
能力:ものの引力を自在に操ることができる。




