第8話 悪魔
2025年4月22日
ジュリア「どうも~!遊びに来ちゃった♪」
マルコ「こんにちは。昨日ぶりですね。」
オリバー「おぉ、ジュリアにマルコ!遊びに来てくれたんだな」
ジュリア「相変わらず暇だったからね。」
マルコ「特に用事とかはございません。良ければでいいのですが、俺たちにナスティー地区を案内してくれませんか?」
オリバー「いいよ!任せとけ!レベロも行こうぜ」
レベロ「うん。いいよ。オリバーとならリンチされないから安心。」
ジュリア「レベロ君って、リンチされるの好きなマゾじゃないの?」
レベロ「そう勘違いされてると思った。違うんだよね。もう慣れきってるっていうだけ。リンチされること自体はいやだよ。」
マルコ「姉さん、聞くならせめて少しはオブラートに包んでください。」
ジュリア「あれ、今私失礼なこと言っちゃった?」
レベロとオリバーは、ジュリアとマルコに近所を案内することにした。
最初に二人が案内したのは、闇市「セカンド・サンデー」。
オリバー「ここはよく俺が使ってる闇市。この地区には碌なチェーン店がないからこういう闇市で日用品を買うしかないんだ。」
ジュリア「北朝鮮でいうチャンマダンみたいな感じね。」
オリバー「まぁ...よくわからないけど多分あってる。」
ジュリア「レベロ君は?ここは使わないの?」
オリバー「レベロは6級の国民だからろくに買い物できないんだ。だから俺がいつもレベロの分の買い物もしてる。」
ジュリア「6級?それってたしか国民階級制度のこと?14年前からアメリカで施行された、国民をランク付けする、悪しき制度」
オリバー「詳しいんだな。」
ジュリア「ジャーナリストですから!」
そう言ってジュリアは自分の胸を叩く。
その時、ナスティー地区中に鐘の音が鳴った。
ジュリア「ん?なんだ?」
オリバー「炊き出しの時間だよ。1日1回ナスティー地区にボランティアが炊き出しに来てくれるんだ。」
ジュリア「へぇ~、一応そういう支援団体的なものもいるんだね。」
4人は、炊き出しが行われている場所へ向かった。
炊き出しボランティア「炊き出しやってるよ~!」
オリバー「スープ4つくれないか。」
炊き出しボランティア「あいよ!.....って、この2人は旅行者かい?申し訳ないけど旅行者にはあげれないんだよなぁ。」
マルコ「まぁそうですよね。炊き出しの食べ物はナスティー地区の人たちにとって生命線みたいなものですから。」
ジュリア「仕方ないね。」
オリバー「じゃあ2つで。」
炊き出しボランティア「......あい!1つね!」
オリバー「え?いや、2つ。」
炊き出しボランティア「いや、もう一つは誰にあげるんだい?」
オリバー「この子に」
そう言ってオリバーはレベロの肩に手を置く。
炊き出しボランティア「申し訳ないけどね、人間以外の奴には出せないんだよ。」
オリバー「...は?いやこの子、どう見たって人間じゃないか」
炊き出しボランティア「いや、こいつ6級だろ?6級の奴は人間じゃないでしょ。」
オリバー「....は?何を言ってるんだ?お前」
炊き出しボランティア「何って、言葉通りの意味なんだけどな。お前、レベロだろ?お前が6級だっていうのはナスティー地区の人間がほぼ全員知っている。
いいか?ボランティアっていうのは慈善なんだよ。
慈善っていうのは、”価値のある人間”に向けてやるもんだろ?」
オリバー「価値......?」
炊き出しボランティア「6級の奴に価値があると思うか?あるわけないだろ?奴隷階級である5級にすら劣る階級なんだから。」
オリバーの後ろから、オリバー達と同じく炊き出しの飯を待っているナスティー地区住民達がざわつき始める。
そのほとんどがボランティアの男に同情する者だった。
誰かが鼻で嗤い、誰かが「そりゃそうだ」と呟く。
炊き出しボランティア「このスープの野菜、誰が作ったとおもう?」
レベロ「.....農家だろ?」
炊き出しボランティア「農家の人たちだ。必死に土を耕して必死に種をまいて、必死に育てた野菜だ。
その人たちが、自分が一生懸命育てた野菜が6級の奴らの口に入ってるって知ったら、どう思う?」
炊き出しボランティア「死にたくなるだろう。」
住民たち
「当たり前だ」
「6級に食わせるくらいなら、旅行者に回した方がマシだ。」
「犬でもいいかもな」
炊き出しボランティア「ほら、お前ら以外の人間は皆そう思っている。そういうことだ。
俺は6級の奴に飯を分けたくない。6級の奴は勝手に野垂れ死ねばいいんだよ。」
オリバー「……それでも、こいつは――」
ここで、後ろの列の者たちが露骨に苛立ち始める。
住民たち
「おい、まだかよ?!」
「お前らのせいでうしろ詰まってんだよ!」
「無駄話はやめて早くどけ!」
誰もが、ボランティアの側に立っていた。
誰もが、オリバー達を”邪魔者”としてみていた。
そのくらい、6級という烙印は強烈なものだ。
オリバー「.........わかった。1つでいいよ。」
オリバーは折れて、自分の分だけを注文。
オリバーは、自分の分をあとでレベロにこっそり分けようと考えていた。
なぜこっそりなのかというと、自分がレベロにご飯を分けているのを目撃されると、確実に皆から大バッシングを受けるからだ。
オリバーはうつむいた。
レベロの方に置いていた手を引こうとした時、ボランティアの口が開いた。
炊き出しボランティア「.....まぁ、俺も鬼ではない。」
オリバーが顔を上げる。
炊き出しボランティア「どうだい?ここは一つ、チャンスをやってもいいぞ。」
オリバー「....チャンス?」
炊き出しボランティア「俺の名前はエリオット・ミラー。ナスティー地区で、小さなカジノを営業している。」
エリオット・ミラーという声を聴いて、住民たちはざわついた。
住民たち
「エリオット?あのエリオットか?」
「俺この前あいつにめちゃくちゃ負けたんだよ。」
エリオット「レベロ、俺とブラックジャックで勝負しろ。」
レベロ「ブラックジャック?」
オリバー「トランプというカードを使ったゲームです。手札の数字を21に近づけていって、より近いほうが勝ち、21を超えたら負けというルールです。」
エリオット「あぁ。俺とレベロ、1対1でブラックジャック対決をする。
レベロが勝ったら、スープを2つ出してやる。
負けたら当然、何もなし。」
レベロは少し考えて、
レベロ「......あぁ、分かった。その話乗るよ。」
レベロはこの勝負に乗った。
周囲から、こらえきれない笑いがあふれ出す。
住民たち
「終わったなあいつw」
「相手が悪すぎるな。」
「エリオットの伝説を知らねぇのか?」
「エリオットに勝った奴なんて見たことねぇよw」
エリオット「ほう?」
エリオットは、愉快そうに口角を上げた。
エリオット「後悔するぜ?お前」
tips
アメリカ国民各々の階級は、その人の身分証によって確認できる。
身分証はアメリカ全国民が所持している。
捏造しても無駄。全国民の階級情報はすべて国が管理している。
国民階級は低くても5級であり、6級はかなりのレア。
レベロが6級であるということは、ナスティー地区の人々に知りまわっている。




