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第七話 久々の依頼、だけども

「私、レイン。いま、あなたの隣にいるの……」

「バカなこと言ってないで、こっち来い」

「……ひどい」

 どこかの幽霊話を真似してみたのに、バカって言われた。――かなしいです私は!!! でも、今は置いとく。だって、任務中だから。

「ミルキ、敵って……あれ?」

「ああ。双眼鏡で見えてる範囲だけなら、窓3の4、その裏に4人が酒飲んでる。その隣の部屋に2人、残り4人はたぶん……ボスの部屋だな」

「多分そんな感じ。見えてる6人、今やっていい?」

「簡単に言うなよ……まあ、いいけど」

「りょ。じゃ、いくね」

 正直、身の丈に合ってないこの狙撃銃――『スノーフレア』。でも、体にぴたりと馴染む。

 動かない標的なんて、的当てゲームと変わらない。今は依頼をこなしてる。だから――おふざけは、ゼロ。

「ミルキ、僕の邪魔はしないでね?」

「死んでもできんな」

 隣でくすくす笑いながら、ミルキがそっと飲み物を差し出してくれる。

 もらったハーブティーで喉を潤し、鼓動を静めていく。……暗殺の感覚は、何度やっても慣れない。それが僕の“いいところ”であり、“悪いところ”でもあるのだろう。

 でも、今はそんなこと考えてる余裕はない。――仕事中なのだから。周囲に魔術を展開し、認識阻害の結界を張る。万が一、誰かに見られてしまっても大丈夫なように。こんな大きな銃器、目撃されたら厄介すぎる。

「ミルキ、まずは4発、1分で終わらせる」

「おっけ、観察続け――おい待て」

「ん、なに?」

「2人部屋に、もう1人入ってきた。そっちは後回しにしろ」

「了解、ちょっと調整」

 ――やっぱり、4人部屋から処理すべきだ。しかも、今なら……2発で済む!

「いく」

「言わんでいい。撃て」

 若干ムッとしたけど、我慢。2人が重なった瞬間、引き金を引く。魔力を使った無音の弾丸が放たれる――だが、確認ができない。

「……おっけ、ダブルヒット。残り2人はパニック状態」

「ん、撃つ」

 標準はすでに合わせてある。あとは、ただ引き金を引くだけ。静かに撃ち放たれた弾丸は、心臓と脊椎に命中した。

「……1人逃してる。でも動いてないから、そのまま撃てる」

「ん、ごめん、ミス」

 即座に照準を合わせ直す。一瞬で、無言で。――やっぱり、スコープに透視魔法は必須だ。

「……おっけ、4人部屋、終了。次、どうする?」

「3人だな。隣の部屋」

「同じ方法でいく?」

「……考え中」

「早く決めろ。援軍が来る」

「そっか、じゃあ……狙う」

「おっけ。位置は――」

「窓3の5、だよね」

「正解。頼む」

「ん、行く」

 スコープの倍率を上げるため、魔法を展開する。標的は、すぐに見つけた。

「目視で確認。左から狙う」

「おっけ、いいよ」

 一度深呼吸。息を吐き終わったタイミングで、ハーブティーが差し出された。――ほんと、よくできた助手だ。

「……天才だよキミは。給料、上げてあげる」

「ラッキー。でも、まだもらってないけどな」

 それは、“まだ”だからだ。

 君には、金貨40枚――(約40万円)ほど、渡す予定だったんだけど。……どうしようかな。

「……余計なこと考えちゃったじゃん、バカ」

「お、それは失礼。はよしな」

「はい、すみません」

 再びスコープを覗く。いる。……ワインなんか飲んでる、のんきに。……腹立つんだけど? ふざけんなとは言わないけど、あの子たちを売った金で酔ってると思うと――。

「……リシェル。お前の仕事だろ」

「あいつ、絶対に凍らせる」

 即決で氷結弾に切り替えた。魔力を注ぎ込む。凍らせて、窒息死。――それが、罰。

「いく、2発」

「りょーかい。見てる」

 静かに撃ち込む。まず1発、そしてもう1発。足元から凍りついていく様子に、背筋がゾクッとした。これが――人を殺す感覚……!!

「ミルキ、無理! 私に人を殺させて!!」

「お、おう……。まだターゲットいるから、忍び込んできて」

「イエッサー! 30分以内に終わらせてきます!!」

 その返事とともに、僕は走り出した。――フロストネイルを片手に。


 屋敷の裏手に回り込み、隙間から中を覗く。見張りはいない。罠も――ない。なら、行ける。音を立てないよう、そっとドアを開けて足を踏み入れる。靴底に付けた消音魔法が、床の軋みすらも消してくれる。廊下には誰もいない。照明の魔石がかすかに瞬いて、淡い影を落とす。

(……静かすぎる。気配も薄い)

 訓練されているのか、それとも――もう気づかれているのか。油断せず、一歩一歩を確かめながら進む。突き当たりの角を曲がる。目的の部屋があるのは、この先――。殺気が走った。

(――ッ!)

 咄嗟に屈み、腰の短剣を引き抜いて反転する。

 次の瞬間、背後から振り下ろされた刃が、空を裂いた。

「……へぇ、反応早いじゃねえか」

 現れたのは、全身黒ずくめの男。ただの見張りではない――魔力を纏っている。暗殺者。それも、それなりに経験のあるタイプ。

「子供かと思ったが、違ったみたいだな。どこの組織の犬だ?」

「犬じゃない。私は……猫派だから」

「……は?」

 返答に相手が一瞬戸惑った隙を見逃さない。刃を突き出し、喉元を狙う――が、受け止められる。鍔迫り合い。力では分が悪い。

(なら……)

 小さく息を吐いて、短剣に魔力を通す。冷気が迸り、男の刀身に凍結が広がる。

「なっ……」

 驚いた顔。隙が生まれる。そこで一気に間合いを詰め、首元へ刃を滑らせた。――鈍い音。血の匂い。男は抵抗する暇もなく崩れ落ちた。

「……これで、静かにしてくれるね」

 衣服を整え、先へと進む。もうすぐ、標的の部屋。ドアの前で一度立ち止まり、深呼吸。

(ここで終わらせる)

 扉を開けた。中には、1人の中年男。装飾の多い机、棚に並ぶ酒瓶、贅沢な絨毯。金の匂いと、血の匂い――そして、怯えた目。

「……ああ、お前が噂の。白雪の亡霊、か」

「どうして知ってるの?」

「そりゃあ、名が売れてるからな。……子供だと思って油断してたが。来るとはね」

「じゃあ、話は早い。――死ぬ準備、できてる?」

 男はひとつ、苦笑するようにため息をついた。

「……まあ、仕方ない。どうせ逃げられねえし、足掻いたところで無駄だ。だが、聞かせてくれ」

「……なにを?」

「俺は……子供は殺してねえ。本当だ。俺が売ったのは、ただの……使い捨ての駒だった。拷問とか、そんなのは……だが、部下の仕業なのか?」

「でも、売ったんだね。金のために」

「……ああ。すまなかった。悪いと思ってるよ」

「……さっきの問だけど、キミが何も知らないなら部下じゃないかな」

 男は黙ったままだった、だけど……その前の言葉の――何かが引っかかった。

(この人、本当に……“悪い人”なのかな)

 でも。もう、戻れない。狙撃も、侵入も、殺しも。この人の命を、僕はもう手の中に握っている。

「……わたし、今日、お茶飲んだの。あなたは?」

「……酒を少し」

「ふーん、じゃあ。最後に何か言い残したい?」

「ない。むしろ、楽にやってくれ。できれば、一瞬で」

「……わかった」

 氷結の魔力を短剣に宿す。彼の心臓を正確に貫き――そのまま凍らせた。

 男は、苦しまずに崩れ落ちた。安堵の色すら、浮かべながら。

 その夜。任務は、完了した。周りを見てみると開いたばかりの酒瓶が1本置いてあった。これは……さっき言ってた飲んでたものかな、もったいないから一気飲みしてみる。うん、おいしい。

 証拠を回収し、目的の報酬を回収してから結界を解除して、ミルキと合流する。

「……終わったか」

「ん。冷たくしてきた」

「手は?」

「大丈夫。洗った」

「顔、こわいぞ。笑え」

「……わらってる」

「へえ、じゃあ報酬分は笑っとけ。よくやった」

「……ありがと」

 闇夜に、風が吹いた。

こんにちは!雨宮瑞月です!

これを書いてるときはおはようございますですね(朝の6時頃)


今回の内容ですが、レインの感情の上下、かなり激しいですよね。雨宮さん書いてる途中で楽しくなってこうなってしまいました。(笑)おかげで第一案からかなりの訂正が……過激表現も少し……(笑)

絶対にR18とR18Gにならないようには気を付けます!特にG!私が苦手です。楽しみにしてた人いたらごめんなさい。

じゃあこういう話書かないほうがいいんじゃない?とか鋭い突っ込みがとんできそうなので先に返しておくんですけど、こういう話書いてみたかったんです!!!!

そして予告なのですが、次の話はちょっとしんみりな回になりそうですね。


あと、最初のあれはメリーさんです。昔の雨宮のあだ名です(笑)


そううことで、これからもレインを、雨宮瑞月をよろしくお願いします!

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