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第六話 依頼とは

 依頼書。それは契約書の代わりでもあるから、本来なら直接会って契約を交わす必要はない。けれど、今回ばかりは――どうしても契約書を交わしておくべきだと、そんな気がしていた。仕事の量もそうだが、何より動く金額が大きすぎる。それにしても……一体、誰からの依頼なのだろう。そう思っていた、けれど――。

「……ミルキ、これ誰?」

「違う。これじゃない、依頼人だ」

 本当にもう……何なの、この“子供”は……。

「……君さ」

「ストップ。仲介はオレがやる。レイン、お前は黙ってろ」

「はい……」

「さて――そういうことで。依頼人は本当に、君で間違いないかな?」

 依頼人と思しきその子供は、静かに頷いた。そして、一枚の紙を差し出してくる。そこに書かれていたのは、こうだった。

『自分は奴隷商会から逃げてきました。奴隷だから扱いは最悪です。心が折れてしまった人も、周囲にたくさんいます。彼らを助けたい。そして、商会のトップを殺してほしいです。なお、自分は諸事情により耳は聞こえますが、話すことはできません。』

 ――奴隷商会、ねぇ。

 過去に潰したことのある別の商会と似たようなもんか。クズしかいなかったし、今回も潰すのは難しくない。ただ……。

「キミ、お金払えるの?」

「おいおい……とはいえ、それは気になってたけどさ」

 しばしの沈黙ののち、子供はさらさらと何かを書き始めた。差し出された紙には、こう綴られていた。

『自分は、今回の依頼料と同等の“奴隷”です。なので、自分を依頼料として使ってもらえれば支払いになるのではないかと思います。』

「……バカみたい。それより、もっといい手があるんじゃない?」

 たとえば――商会のトップを脅すとか。そう思ったのは、私だけだろうか。

「まあ……とりあえず。隣の女がとんでもないこと考えてるみたいだから、依頼料については後日相談でいいや。その前に……」

 ふと、言葉が途切れた。――気づいてはいたけど、この子……。

「レイン、お願いしてもいい?」

「ん、2分だけちょうだい」

「おけ、いってこい」

 軽く返事をして立ち上がる。いつもの服装で来ていて正解だった。だって――外からの視線が、妙に鋭かったから。

 


 店を出ると、すぐにそれらしき集団が目に入った。5人ほど。

 腰にちらりと見えたナイフ。……これは、魔導銃の出番かも。

 ただ、念のために声をかけてみる。ローブを着てるし、正体はバレないはず。

「ねぇ、君たち」

「ん? なんだ?」

 外側にいた男が返事をくれた。少しだけ、声が震えてる。

「こんなとこで何してるの?」

「何してようが勝手――って、おい、何してる?」

「ん、僕は君たちが安全か危険か判断できない。だから――ここで“消して”しまってもいいと思ってる。そのナイフ、何?」

「お前も暗殺者か……同業、ってわけか。見たことない顔だが」

「じゃあ、路地裏に来て。全員、きれいに“消して”あげる」

 ――素直についてきた。……あれ? 暗殺者のわりに素直すぎない? どういうこと?


 


 路地裏に入ったとたん、背後からナイフが飛んできた。刺さっても平気だけど、いちおう魔法で止めておく。

「ん、これ要らない」

「返すな! 殺すなら、さっさと殺しやがれ!」

「早いね。じゃあ、お望み通り――」

 フロストネイルの速射が飛ぶ。音もなく、綺麗に眉間を貫いた。しかも、超強力な麻痺毒入り。あんなの食らったら、呼吸すらできなくなるよ♡

「さて、君たちは? 攻撃してこないの?」

「……遊ばれてるな。いや、まさか……お前、“白雪の亡霊”か?」

「ん、そう呼ばれてるみたいだけど、よくわかんない」

 ふと、フードを外してポニーテールの髪を下ろす。でもなんか落ち着かない……おさげのほうがよかったかな?あとでミルキに聞いてみよう。――って、戦闘中にこんなこと考えるとか、ただの“煽り”だよね。敵を見れば、血管が浮き上がってて……ちょっと面白くて笑ってしまった。

「ふふっ、ゆでだこみたい」

 口をついて出たその言葉の瞬間、男たちが“消えた”。

 いや――消えたというより、倒れた。

「後ろ、ね。……できれば正面から来てほしかったな」

 背後で武器を構えていたが、もう遅い。全員、麻痺毒を食らってる。もう動けない。なら――名乗っておこうか。


「お疲れさま。僕はレイン。本名はリシェル=アルメリア=ノルフェン。――キミたちの脳裏に刻んで、死んでね♡」


 殺気を込めた視線を送ると、全員が気絶した。 脈を確かめる。止まってる。でも、念のため、全員の首を落としておいた。

「……早く帰ろ。血生臭い……」

 フードをかぶり直し、店へ戻った。


「ただいま。五人、消してきた」

「お、おかえり。……どうだった?」

「ん、煽ったら殺しに来た」

「煽るなバカ……」

 あきれ顔でそう言われた。それはわかってるけど――バカはないじゃん、バカは……。少ししゅんとしながら視線を落とすと、依頼主の少年が肩を震わせているのに気づいた。――あ、笑いこらえてる。

「……笑いたかったら笑ってもいいんだよ? 別に、ここには笑ったからって殴ったりするような人はいないし。もしそんな人がいたら、私が――消すから」

「……珍しいな。レインが“まあまあ”しゃべってる……」

「知らない。依頼は受ける。この子の命と引き換えに」

 その言葉を聞いて、少年はこくりと頷いた。そしてまた、一枚の紙を差し出してくる。そこには、こう綴られていた。

『よろしくお願いします』

「――契約成立。明日行くから、場所を教えて」

「場所か。事前に聞いていたところで大丈夫か?」

 ミルキが少年に問いかけると、彼は再び頷いた。

「了解。レインにはあとで地図を渡しておく。じゃあ、七日後。またここで」

「うん、じゃあね少年。……待っててね」

 またひとつ、こくりと頷く。それを見届けてから、私は五枚の金貨を差し出した。

「一応、安全な場所にいてほしいから。そのお金で宿でも取って、そこでしばらく過ごして。ごはんも食べていいし、返さなくていいから」

「……レインが、大人になってる……」

「殺すよ、ガキ」

 渡しただけだ。依頼主に死なれてしまっては困るから、当然の処置をしただけ。必要なければ、こんなことしない。

 そんな反撃を心の中でだけぶつけながら、私は静かに店を出た。お会計は、先に済ませてある。さっと帰るだけ――。


 


 帰り道、レインとミルキは肩を並べて歩いていた。夕焼けが、街を優しい茜色に染めていた。私服に着替えたレインの姿は、いつもの鋭さを少しだけ柔らかく見せている。

「なあレイン、ひとつ聞きたいんだが。……どうして、あそこで金貨五枚を渡した?」

「ん? 宿代にしてもいいし、好きなもの食べてもいいし……。使い道を、知りたかったっていうのもあるかな」

「使い道?」

「ほら、僕ってお金あまり使わないじゃん。使ったとしても、ごはんとか、紅茶とか、気になる本くらいでしょ」

「まあ確かに。……てか、それの数千倍の資金あるしな。金持ちの考えることは、わからん……」

「ん、まあそれでもいいの。それに――」

 言葉を濁す。

 生きていてもらわないと、困るんだ。本音だった。資金をためなければならない。やりたいことがある。でも、それはまだミルキには秘密。

 僕の――ちょっとした計画。

こんにちは、雨宮瑞月です!この挨拶もちょっと慣れてきたころなのですが、わたくしそろそろ後書きのネタ切れというものが起こり始めております。

レインの秘密をちょっとずつ語っていってもいいんですけどそれはネタバレになってしまうのであえて言いません!お楽しみですよお楽しみ

ちなみになめてるなとか思われそうですけどとある放置げーをしながら小説書いてるんですよね、そしたらなんかはかどってペースがこうなっています!

頭の中で考えながらタイピングをしていったらもう夜ですよ、楽しい。


そんな私ですが、壊れない程度に頑張りたいと思います!これでも一応病人ですので……(数日前まで肺炎で入院してました(笑))

そういうことで、これからもレインを、雨宮瑞月をよろしくお願いします!体を壊さない程度に頑張ります!

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