第二話 弟子?助手?暗殺者?
今日は……絶対にのんびりしよう。そう心に誓っていたはずなのに――。
「……トラブルに巻き込まれやすいって、こういうことなんだよね」
一人でいるときに限って、こういうことが起こる。昨日だって変な言いがかりをつけられて襲われたから、仕方なく首をはねちゃったし。で、今日こそは平和に過ごそうって思ってたのに――これだよ。
「お前、調子乗ってるだろ」
「はぁ……乗ってないし」
そう、チンピラに絡まれた。
ちびで幼児体型な私が悪いのかもしれないけど、なんでこんなことになるんだろうね……。でもさ、人のことをろくに見ずに絡んでくると――。
「こうなっちゃうんだよ」
裏路地に、小さな銃声が響いた。
隠し持っていた魔導銃・フロストネイルが火を噴いた。
弾自体は非致死性。殺しはしないけど……少し痛い目は見てもらう。ちょっとだけ、ね。
相手の顔を見ると、こっちを見てびびってる。そんなに怖かった? ……ま、喋ってくれるならそれでいい。
「ねぇキミ。もしかして、誰かの依頼?」
首を縦に振る。あら、素直だね。
「もうひとつ質問。キミは私のこと、どこまで知ってる? 名前? 出身地? それとも――職業?」
「……お前がアサシンだってこと。それと……賞金首ってこと。そ、それだけだ」
びくびくしながらも、ちゃんと答えてくれた。
もう一度、額にフロストネイルの銃口を向けてみたけど、これ以上の情報はなさそう。
「……ありがとう、色々知れたよ」
……実際、あんまり知れなかったけど。
そもそも、下っ端のチンピラに多くを求めるほうが間違いなんだろうな。
一人で考えていると、チンピラがこちらへと歩いてきた。おや、なかなか肝が据わってるじゃん。
「……殺さないのかよ、『白雪の亡霊』さんよ」
「ん。殺す価値がないから」
「殺す価値がない……ね。だいぶ下に見られたもんだな」
苦笑混じりの声が返ってくる。でも、その前にひとつだけ。
「どうして、私が“白雪の亡霊”って呼ばれてることを知ってるの?」
「情報屋の情報だ。お前専属のな」
「へぇ……」
それ、普通なら入手できないはずなんだけどね。
私自身が何億も積んで上書きしてもらったトップシークレットだよ? よくそんなの掘り出せたね……。高くついただろうに。
でもそれよりも、今の問題は――。
「その名前を知ってるってことは、選択肢は二つ。“記憶を消す”か、“キミを消す”か。さて、どうする?」
「……ほかの選択肢は?」
「あると思ってるの?」
静かに魔術の構築を始める。
この人、見た目はただのチンピラだけど、中身はそこまで悪くなさそう。……首、はねちゃうの、ちょっとだけ可哀想かも。
――これが、私なりの慈悲ってやつ?
「……それなら、ひとつ提案がある」
「なに?」
「弟子……もしくは助手にしてくれ」
予想外すぎて、ほんの少し驚いた。
そっち方面の発想、なかったよ……。てっきり記憶消すか拷問するかのルートかと思ってたのに。
「面白い提案。でも、それを受け入れるなら“私の情報を漏らさない”っていう契約が必要だよ。その契約を破ったら、死ぬ。それでもいいの?」
「記憶消されるか、殺されるかって状況なら、そっちのほうがマシだと思ってな。
もちろん、俺が暗殺しかけたことをどう扱うかは、任せるよ……レイン殿」
……あー、そこまで知ってるならもういいかな。
ちょっとだけ、気が楽になった。
助手かぁ。メリットもあるけど、デメリットもある。真剣に考えないと。
「……わかった。処遇については、少し考えさせて。まぁ、がんばれば私を殺せるかもしれないしね?」
「だったら、暗殺術を教えてほしい。無理にとは言わない。……でも、お願いだ。教えてください」
そこまで言うんだ……。ちょっと感心してしまった。
「ん、わかった。知ってると思うけど、僕はレイン。“コードネーム・レイン”」
「俺には名前がない。……ずっと“72番”って呼ばれてた」
「ふーん、めんどくさいから今日から“ミルキ”。ね、ミルキ」
「ってことは……」
「うん。今日から僕、レインの助手だよ」
……殺すつもりだったのに、すっかりその気がなくなってた。
いい人すぎるんだよ、ほんと。
「ちなみにさ、ちょっと気になってたんだけど――レイン、お前何歳?」
「ん? 秘密」
気にしても無駄だよ。僕が16歳だってことくらい、どうせすぐわかるんだから。
そんなことを思ってると、じーっと見つめてくる視線に気づいた。
「なに……そんなに見て」
「……絶対、俺より年下だよな」
「そりゃそうでしょ。僕、今16歳だよ」
「……は?」
そんなに驚かなくても。
……ていうか、こんな路地裏で話してたら、また誰かに狙われそう。
「もう帰るよ。僕の家に案内してあげるから」
「ま、まぁ……わかった。……16歳か……8つ下って……」
ちらっと聞こえた。24歳なんだこの人。……よわっ。
さすがに口には出さなかったけどね。 今日は……絶対にのんびりしよう。そう心に誓っていたはずなのに――。
初めましての人は初めまして、雨宮瑞月です!
前回の続きですが、私の中ではこのルートと依頼をどんどんこなしていくルートの2つを用意しました。
そして行き着いたのは仲間との共闘ルートでした……仲間にした男の子、ちゃんと育ててくれるでしょう(未来の私に託します)
そんな私ですが、また仕事を再開できることにはなったので更新のペースは落ち着いてくれるのかなとは思っています。今の私……1日5本書き上げたりとかしていますので……。
更新のペースおかしいとは思っています!それだけ頭の中で作成できているといえばそうなのですが、一応療養中ですのでね。
私の話は置いて、これからも白雪の亡霊を、雨宮瑞月を応援してくださる方はお願いします!
また続き投稿させていただきます!