第8話「テレビ越しの想い」
「このあと登場するのは、今じわじわと注目を集めている4人組グループ・IVORYの皆さんです!」
お昼の情報番組。
スタジオのスクリーンにIVORYのメンバーがアップで映ると、私は思わずテレビのリモコンを握り締めた。
「……きた……!」
MVのコンセプトを意識した、オフィスカジュアル風の華やかな衣装──月島律希は、ジャケットの袖をまくり、軽くウェーブのかかった前髪を揺らしていた。落ち着いた色味のシャツに、細身のパンツ。華奢な体にぴたりと沿う衣装が、彼のしなやかな体つきを際立たせていた。
「生放送の律希だぁ……尊い……」
ダンスパフォーマンスが始まると、リマは完全にテレビに釘付けになった。ステージを縦横無尽に舞うダンス。汗に濡れて光る鎖骨。低くてハスキーな律希の歌声が、テレビ越しでも胸を貫いた。
「……うぅ……ここのダンス……カッコよすぎ……」
1人でソファにうずくまりながら、何度も画面の中の律希を見つめる。生放送という緊張感の中でも、律希は終始、自然体だった。笑顔で司会者の問いかけに答える姿は、飾らず、素直で、真面目で、どこまでも“いい人”だった。
「……これが素なんだろうなぁ。性格まで天使なんて……」
でも──
「この衣装、なんか惜しいのよねぇ……」
私はテレビの前で腕を組んだ。悪くはない。でも、どうしても気になる。たぶん、事務所のスタイリストが選んだのね。まだ細かく演出する余裕がないのかも……。
私はスマホを手に取る。ためらいもなく、よく知った番号をタップする。呼び出し音が3回鳴る前に電話がつながる。
「もしもしユウリ? 今、少しだけ話せる?」
電話越しの彼は、少しだけ驚いたように、でも余裕たっぷりな声で答える。
「珍しいじゃん。リマから直電なんて。なにか面白いことでもあった?」
「……ちょっとお願いがあるの」
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