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推しに全ぶっぱ!  作者: カナリオ
第1章 『リマ、推しをプロデュースする』
3/15

第3話「世界が動いた」

  Pommeが、無名のアイドルグループのスポンサーになった── そのニュースは、たった一晩で世界を駆け巡った。


「なぜ、Pommeが?」

「前代未聞の契約すぎる」

「社長の道楽じゃないの?」


  SNSでもネットニュースでも、“IVORY(アイボリー)”の名前がトレンドに躍った。


「このセンターの子、誰!?」

「え、月島律希(つきしま りつき)って言うんだ……天使みたいな笑顔」

「まだ21歳なんでしょ? 19歳でデビューして、もうこの完成度はやばい」

「2年間どこに隠れてたんだ……?!」



 ──あの日、たまたま目にした低画質の動画。白いライトに照らされて踊っていた少年の名前が、今や世界に響いていた。


「……ふふ。今日も律希ビジュ良すぎ!」


  ベッドの上でスマホを抱きしめながら転がる。さっきアップされたばかりの音楽番組の切り抜き。ダンスのキレ、あどけない表情、遠くを見据えるような目線。全部が、たまらなく愛おしい。

  でも──

  画面越しに見える、ファンたちの熱狂。


「かわいすぎる!」

「もう推すしかないでしょ!」


  嬉しいはずなのに、胸の奥がズキンと痛んだ。私の方が、先に見つけたのに……。

 ──まるで、自分だけのものだと思ってた宝物を、世界に見せてしまったみたい。これが独占欲なのだろうか。こんな感情になる自分に嫌気がさす。推しは推し。それはわかってる。でも、こんなふうに心が揺れるのは、初めてだった。


「……ダメなオタク……」


  そんな自嘲気味な声が漏れたタイミングで、ノックの音が響いた。


「リマ様、失礼します。会長がお呼びです」


「……お父様?」


 ──リビングへ降りると、父・御影宗一郎が、ソファで紅茶を飲みながらニコニコと待っていた。


「リマ〜〜、良いニュースがあるよ〜〜」


「……なに?」


「IVORYがね、御影邸にご挨拶に来ることになったの」


「……………………………………え?」


「ほら、スポンサーになったでしょ? ご挨拶したいって、事務所の方から言われてさ〜。リマが喜ぶかなって思って、内緒にしてたんだけど!」


「えっ、それ……いつの話……?」


「今日だよ☆」


「な、なんで今言うの!?!」


「ええ〜〜? だって、サプライズの方が嬉しいかなって〜」


「全然うれしくない!!!!!」


  そう怒鳴りながらも、私の心臓はもう限界だった。

 現実味を帯びる“その時”。

 ──律希に、会える。目の前で。あの声を、耳で聞ける。

  でも……バレちゃいけない。Pommeをきっかけに売れ始めたIVORYは、きっと私たちに感謝するだろう。もし私が推しているのを知ったら?律希は私からの評価を気にしすぎてしまうんじゃないか。むしろ重い?気持ち悪い?……それが怖い。

  Pommeの社長令嬢として、ただのスポンサーとして完璧に振る舞わなければいけない。でも心は、叫んでいた。


 ……律希に……会える……!!!

最後まで読んでいただきありがとうございます!


ぜひ感想やブクマで推してくださると嬉しいです( ; ; )


IVORYは、フランス語や英語で“象牙色”を意味します。ただの白ではなく、ほんのり感情のにじむ白。

優しさとか、穏やかさとか、静かな強さとか。

そういう色を、彼らから感じてもらえたら嬉しいなと思って、この名前を選びました。

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