第1話 「推しとの出会い」
偶然でも、必然でも。
この物語を見つけてくれたあなたに、心から感謝しています。
少しでも、あなたの一日があたたかくなりますように。
深夜。
スマートフォンをいじる手を止められなくて、眠れぬまま、いつものようにXを眺めていた。TLに流れてきた、男性アイドルグループのライブ映像。その長さ、わずか30秒。ファンが撮ったものらしく、画質は荒く、照明も悪い。音割れさえしている。
なのに、目が離せなかった。……だれ?
群れの中でセンターに立つ、まだ“少年”のような青年。掴まれるような声。無意識に、音量を上げていた。
《#IVORY》
ユニット名らしきタグと、再生数わずか2桁の投稿。見ている人はほんのわずか。でも、私の心はすっかり惹かれてしまった。
……これは、見に行かなければ。
頭の中では、彼の声と顔がぐるぐると渦を巻き、うまく寝付けないまま朝を迎えた。
週末。
行き先は、都内の小さなライブハウス。
キャパは100人にも満たない。客席には空席も目立つ。なのに、心臓が高鳴るのを感じていた。
センターに立つ彼は、中性的な顔立ちで、動画で見るよりずっと美しかった。音楽が鳴った瞬間、空気が変わった。彼の第一声で、世界が染まる。
「……っ」
鳥肌が立った。魂を震わせるような、低くハスキーな歌声。見た目とのギャップ。細く、白い手足が、まるで水面を切るようにしなやかに、キレのある軌道を描く。華奢な身体が、光を浴びて舞うたび、視線が奪われる。
ぎこちなさもある。未完成だ。でもそれが、たまらなく心に刺さった。きれいだった。キラキラしていた。気づけば息をするのも忘れていた。
そのとき観客から「りつきー!」と歓声が飛んだ。
どうやらセンターの彼は「りつき」と言うらしい。
彼らのライブの照明は簡素なもので、目立った演出もない。
でも、それがむしろ良かった。飾っていない、素のまま、歌とダンスで真っ直ぐ戦っている。
そして、時折見せる彼の笑顔に胸が締め付けられた。目を離せなかった。
私は昔から、アイドルが好きだった。いや、“推し”がいないと生きていけないタイプ。理想を追って、完璧を愛して、いつも推しに救われてきた。だけど、こんな気持ちは初めてだった。
彼らをこのままにしてはいけない。もっと見たい。こんなところで終わってはいけない。
「……行かなきゃ」
私はライブ会場を後にし、ある場所へ向かった。
この熱を、そのまま言葉に変えて、今すぐ届けなければ。
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