第5話 2つ目のスキル
迷宮攻略の報酬として、与えられたスキル、「コピー」について、ジニムから聞いた。
•スキルをコピーし、保有することができる上限は10つ。コピーした、スキルを他のスキルと掛け合わせ、別のスキルを得ることもできる。
•スキルをコピーする条件は、敵のスキルの効果を自分自身が受けること。ゆえに敵自身にしか、効果がない、スキルをコピーすることは出来ない。
•コピーした、スキルは魔力コスト増加のデメリットを受けない。だが、「コピー」のスキル、そのものはデメリットを受ける。つまり、実質、スキル2つのコストで、スキルを11つ使える。
「コピー」についての説明は以上だ。
苦労した甲斐があった。それだけ、強いスキルだ。
勿論、ジニムもこのスキルを所有している。
◇◇◇
「ルリス、それで、何をするの?」
「魔法をもっと、使えるようになりたいんだけど、どうすればいい?」
そう、魔法だ。とにかく、魔法を使いまくりたい。
異世界に転生したと分かった時から、思っていたことだ。
「私が与えてもいいけど、魔法を与える程、魔力が残ってないわ、魔導書が揃っているのは、そうね………ドルムグラ魔導国ね、あそこは魔法技術が進んでるから、魔導書が豊富よ」
「その、ドルムグラ魔導国には、どれくらいで着くんだ?」
ドルムグラ魔導国、名前は聞いたことがあるが、行ったことはない。俺はずっと、イアムの屋敷に引き篭もっていた訳だから、当然なのだけど。
「一瞬よ、転移魔法を使えばいいでしょ、貴方、その魔力量で使えないの?」
「使えないよ」
ジニムは驚いた表情を見せる。
俺ぐらいの魔力量があれば、転移魔法を使えるのが当たり前らしい。
「じゃあ、私がやってあげるわよ」
そう言い、ジニムは転移魔法「魔法移動」を発動させる。
すると、一瞬で周りの景色が変わる。
凄い、俺もやりたい。使えるようになりたい。
これこそが、魔法だ。素晴らしい。
建物は近代と大差はなく、沢山の人が通っている。
俺が感動していると、ジニムが声をかけてきた。
「ほら、こっちよ」
そうやって、ジニムに連れてこられたのは、魔導書が売っている店。
「好きなのを選びなさい、ここなら、色々な魔導書が揃っているわ」
気を利かせて、この辺でも、かなり品揃えが良い店を選んでくれたのだろう、だが、俺は無一文である。
「あのー、お金、持ってないんですけど」
「マジ?」
なので、クエストを受けることになった。
クエストを受けるには、あちこちにある、クエスト場に行かなければならない。勿論、カフラト村にもあった。
小屋に、クエストの内容とその報酬が書かれた、掲示板があり、どのクエストを受けるかを、受付に伝えて漸く、受けることができる。この世界にはギルドが存在していないため、小銭稼ぎにしかならないが、仕方ないだろう。
「これでいいでしょ」
ジニムは1番報酬が高いクエストを選び、受付に伝える。内容は、オーク3体の討伐で、報酬は金貨1枚と銀貨2枚。場所はカウタ平原。
「魔法移動」で、カウタ平原に移動する。マジで便利な魔法だ、真っ先に使いたい。
あの店に魔導書が売っていたら、買うことにしよう。
それで、その後、オーク3体を見つけ、「流闇」で倒す。すぐに終わってしまった。
再び、転移魔法を使って、クエスト場に報酬を受け取りに行った。
「こちら、報酬です」
受付の女性から、手渡しで渡される。
「どうも」
そうして、報酬を受け取り、さっきの店へと戻ってきた。さて、色々と魔導書が並べられているが、品揃えはどうだろうか?
見ると、転移魔法の魔導書もある。値段は、銀貨1枚。
他の魔導書と比べたら、安いな、それほど普及しているということなのだろう。取り敢えず、この魔導書は買っておこう。今の俺は、ジニムが居ないと移動手段が少ない。転移魔法が使えれば、幾らかはマシになる。
飛行魔法の魔導書もあったが、金貨1枚と値段が高い。この先、魔法道具や武器を買うことになるかもしれないし、お金は残しておきたい。
そうやって、俺が悩んでいると、俺の後ろに立っている、ジニムが此方を暖かく、見守ってくれている。
迷宮の時も思ったけど、よく見てみると、やっぱり、ジニムって、美少女だな。
それにしても、微笑ましい状況だ。イアムと別れる時も思ったが、前の世界の俺では、有り得ぬ出来事だ。
いや、もし、事故になど遭わなかったら、有り得たのかもしれない。
◇◇◇
その夜、転送連合総統リルテムに、カルボが報告を行っていた。
「何、勇者、魔王クラスのスキルを所有する者だと?」
「はい、私のスキルによる情報ですので、間違いはないかと、もし、敵対すれば、面倒なことになります」
「…大した脅威にはならん、もし、敵対すれば、私が相手をしてやる、報告は以上か?」
総統リルテムが恐れる必要はないだろう、何故なら、彼もまた、そのクラスのスキルをもっているから。
リルテムは取り乱したり、焦ったりする素振りを見せない。強者としての余裕があるのだ。
「はい」
「カルボ、引き続き、イアムの件、宜しく頼むぞ」
「了解」
カルボはそう言い、一瞬にして姿を消した。