第4話 仲間
妖精の召喚魔法により、召喚されたのは、悪魔モレク。普通、迷宮にて、悪魔が召喚されることはない。
殆どの迷宮は食物連鎖の上位に位置する魔物がボスとして、召喚される。
多いものはオーガやリザードマンだ。
悪魔が召喚されることなど、緊急事態である。
攻略はかなり難易度が高い。
通常、敵の強さに応じたスキルが妖精から与えられるので、これは強いスキルを期待できる。
いや、先ずは倒さなきゃいけないんだけど。
俺達が魔法を放つより先に、モレクが攻撃を仕掛けてきた。レーザーをピュンピュン飛ばしてきやがったのだ。だが、命中率が低く、周りの柱に当たっている。
扱いには慣れていないようだ。
此方としてはそのまま続けていて欲しかったけど、どうやら諦めてしまったようで、別の攻撃を繰り出してきた。
今度は魔力をボールのように集めて、打ち込もうとしている。半径5mはあるだろう。もし、命中すれば、大ダメージを受ける。
当然、それをさせるわけにはいかない。
「ルリス!あれを壊せ!!」
「了解!」
俺は「水乱打」を、イアムは「熱傷炎」を打ち込み、破壊に成功した。奴、本体に向けて打ち込んでもよかったが、倒せなかった場合のリスクが大きかったので、こうした。
折角、集めた魔力が破壊され、モレクが完全に苛立っている。
相当、悔しかったのだろう。
意外にも楽勝そうだ。
これなら、さっきのカルボの方が強い。
そう思っていたが、いきなり、モレクに異変が訪れる。モレクに攻撃された場所に電流が走る。
これは間違いなく、奴のスキルだ。
詳しいことまでは分からないが、恐らく、電気に関係したスキル。そして、今まで、このスキルが発動していなかったことから、奴は複数、スキルを所有している。
まずいな、急に勝機が無くなってきた。
まあ、負けそうになれば、逃げればいいんだけど。
迷宮の敵が迷宮の外まで追ってくることはない。
敵が消滅した後、また、何回でも、試練を受ければいい。受けれる回数に制限は無いから。
いや、勝つけどね。
モレクは今も休まず、此方に、魔法ではなく、魔力を打ち込み続けている。その攻撃が当たった場所には、数秒、稲妻が走る。
攻撃を放つ隙がない、せめて、一瞬でもあれば、俺の
「流闇」なら一撃で倒せるかもしれない。
だが、それは難しそうだ、奴が2つ目のスキルを使い始めた。風だ、小さな竜巻が発生している。
奴も、本気を出し始めた。
「やばいぞ、ルリス!」
「まだ、勝てますよ!」
そう、まだ負けたわけではない、現時点では奴が有利だが、なんとか「流闇」を当てることが出来れば、勝てるかもしれない。
その時
ビリッ!!!
モレクが放った、魔力がイアムに当たったのだ。その直後、イアムの体に電撃が仕掛けられる。
致命傷ではないが、出血が目立つ。
「イアム!!!」
(大丈夫だ、意識が飛ぶほどではない)
そう思い、イアムはなんとか耐え、ルリスを一瞥した。ルリスに心配をかけさせない為に。
不安も、恐怖もない。俺は安心していた。
イアムが立ち上がったのを見て、俺はイアムに声をかける。
「イアム、一瞬でもいい、奴の隙を作ってくれ!!」
そう言うと、イアムはすぐに魔法を放ってくれた。
「分かった!熱傷炎」
イアムの攻撃で、奴は蹌踉け、宙に浮いていたが、地上に降りてきた。
今だ!!
「流闇!!!」
妖精から与えられた、モレクの実体に負のエネルギーが流し込まれる。エネルギーが体の中で、暴れ回り、実体が崩壊する。
そうして、悪魔モレクは倒されたのだ。
モレクの体が完全に消滅した時に声が響く。
「やった!!漸く自由だわ!!」
なんだ、この声?ひょっとして、妖精?
◇◆◇◆
「じゃあな!ルリス!」
「機会があれば、また会おう!」
こうして、迷宮の外でイアムとは別れを告げた。
前の世界では、こんな事は無かった。初めての経験だ、また、会うことが出来ればいいな。
そして、水色の髪に、紫色の瞳の美少女は言う。
「では、スキル授与を行います、勿論、拒否しないわよね?」
妖精といえば、小人に羽根が生えていると思っていたが、この妖精は子供のような姿であり、羽根も生えていない。身長は、俺が身長170cmだから、大体160cmぐらいだ。
何故、妖精がスキルを受け取って欲しそうかというと、スキルを与えない限り、自由が手に入らない為である。断ったら、かなり嫌な顔をされるらしい。
まあ、俺に断る理由は無いのだけど。
「ああ、始めてくれ」
「じゃあ、ルリス、貴方にはコピーのスキルを授与するわ!」
と、妖精ジニムが言い、スキルが授与される、ジニムから自らのスキルを乗せた、魔力が溢れ、その魔力が俺へと流れる。妖精は魔力の大半を使っているようだった。
無事、2つ目のスキル、獲得成功だ。
「そういえば、何で俺の名前を知っていたんだ?」
「そりゃあ、貴方、私の迷宮に入ったんだから、私に情報が筒抜けよ」
マジかよ、と思ったが、そのまま続けてジニムが言う。
「それで、どうしようかしら、自由になったのはいいけど、何をすれば良いか、分からないわ。
そうだ!貴方が責任もって、私を連れてってよ!!」
驚愕、さっきのマジかよ、とは比べものにならない程の。まさか、遠回しに、仲間になれ!と言われるとは思わなかった。さて、どうしようか、まあ、1人で旅をするのは寂しいし、いいかも。
そう思い、俺は驚愕の表情を浮かべた後、それを了承する。普段は顔に感情が出ないタイプなのだが、流石に、これは誰だって驚く。
「分かった、いいぞ」
「よし!!決まりね!」
こうして、妖精ジニムが仲間に加わったのである。