靴下
ズッコケ短編
小学生のたかしは馬鹿にされていた。原因は、たかしのいる学級でおしゃれな靴下を着用するのが流行しているからだった。
30人のクラスメートが、様々なデザイン、機能を持つ高性能靴下を履くなか、貧乏なたかしの家族はたかしに何の変哲もない白い靴下しか与えなかった。
こてつくんが言った。「やい、たかし。おまえはこの2ねんBくみという洒落者のつどうクラスで、なんの故あって白いくつしたなんか履いてやがる」
そういちろうくんが続く。「大体にしておめぇ、白いくつしたなんてのは、白いのはさいしょだけで一月も履けば真っ黄色じゃねぇか」
こてつくん。「応ともよ。てやんでい。馬鹿ヤロめい。黄色が白くなるってんなら兎も角、白が黄ばんだパソコンが基盤だってんじゃお話にならねぇやい。2ねんBくみの名折れだとは、お前さんおもわねぇのかい? ええ? お前さんよぉ」
たかしは自分に詰め寄る二人の足元を見た。
こてつくんの靴下は、最新科学をおばあちゃんのおはぎのように詰め込んだ、常に地面から1センチ浮くやつだ。
そういちろうくんのは脛まで覆うロングタイプ。ステルス靴下で足の血管の状態が確認できるので、健康に寄与するだけでなくデザインに意外性を与えてもいる。それにすね毛抑制機能もある。
たかしは言った。「なるほど、なるほど。ごりょうにんとも、随分凝った靴下を履いてるみてぇだ。これがサンタクロースなんか呼んだ日にゃ、さぞやご立派な靴下を枕元に吊るしておくんだろうよ。おっと、ひょっとするってぇと、プレゼントにも靴下をねだるのかな? 靴下の中に靴下。粋だねぇ。冬の年寄りみてぇだ」
たかしの冗談を聞いたこてつとそういちろうは、顔を共産党より真っ赤にした。「いいやがったなコンチクショウ。 サンタクロースだぁ? こちとら靴下ねだるために、両親に忖度ロースだってんだ。今すぐ表へ出やがれィ!」 「 出やがれ出やがれ!出会え出会えィ! コインじゃねぇんだ。表はあっても裏はねぇぞコンチクショウ!」
たかしは言った。「ご両人、何もそこまで熱くなるこたァござんせん。この白い靴下にゃ、粋でいなせな、洒落た名前がついてるんで」
二人は顔を見合わせた。「洒落た」の言葉に弱い二人である。
「その心は?」
「へぇ。 普通の靴下、即ちオードソックスと発します」




