(18)狙われた理由
「そうね…グリッド家が呪術を生業とする家門であることを考えれば、ある程度の想像はつくわね」
「呪術、だか…」
「ええ。嫌な話になるけど、禁呪に詳しい者たちの間では、呪術の素養の高い者を核にすることで、より強力な呪具を作れると言われているわ。もちろん、呪う側のほうが、核になる者よりも強いことが前提だけどね。タバサや旦那さんの実家は、呪術に関係していなかったの?」
タバサは遠い目をしながら、昔に思いを馳せた。
「呪術と関係するかは分からねえけども……アーチボルド様のセミグリッド家は、良き巫術師の家門って言われてて、祈りと祝福の力で、領地の安寧を保ってただ」
「巫術と呪術は、似た性質があるのよ。タバサのご実家も、巫術師の家門だったのかしら?」
「ガゼル家は、そこまでの力ではなかったども、畑仕事に、兄たちの祈りと先読みは、欠かせなかっただよ。公国の農業貴族は、ほとんどがそうだっただ。けど、オラたち夫婦は、生まれつき巫術がからっきしで……二人とも変わり種扱いだったんだ」
「タバサは、自分の魔力保有量が人並みはずれて多い方だって、分かってた?」
「ああ、それは子どもの頃から、よく言われてただ。力はあるのに祈りができないのは、とんだ宝の持ち腐れだって笑われて……もしかして、それが理由だっただか? 魔力だけあって、巫術のほうが出来損ないだったから…」
自分を責めようとするタバサを、スカーレットはきっぱりと止めた。
「タバサ、違うのよ。あなたに落ち度なんて、何もないの。悪いのは、あなたたち家族の絆を呪いに利用した、ハンニバル・グリッドなんだから」
「そうだぜ、タバサ。俺らだって、強い魔導虫だからってだけで、肉蠅の代わりに捕まってたんだ」
「ぢゅぢゅぢゅぢゅん!」
「ドクムギマキたちも、魔力の高さで狙われとったようじゃの」
ノラサブの通訳を聞いて、ヴィヴィアンも合点がいった。
「私も魔力のせいで、トンチキ壺を呼んじゃってるんだと思う。そして、たぶん私に落ち度などない」
胸を張って言うヴィヴィアンに、みんなが笑った。
「そうね、今回はすぐに相談してくれたし、合格よ」
「えへん」
今日はスカーレットに叱られないと分かって、ヴィヴィアンはとても晴れやかな気持ちになった。
みんなの話を聞いて、タバサも納得したようだった。
「オラとアーチボルド様が、くそ壺の核でなくなれば、オラたちの子孫は呪いから解放されて、ビビ様も狙われなくなるだな…」
「うん、そうだよ」
一瞬ののちに、タバサは正座して床に手をつき、頭を深々と下げていた。
「みなさまに、お願いするだ。どうか、アーチボルド様を、オラたちの子孫を、あの壺とハンニバル・グリッドから、救う手助けをしてくだせえ」
ヴィヴィアンは、タバサの前にしゃがんで、手を取った。
「タバサ、立って。うちの家族の絆を、トンチキ壺なんかに利用させない。『断じて観光すれば鬼人もこれを避く』の精神で、みんなで突き進もう」
「よく分からないけど、ヴィヴィアン、それも異世界格言なの?」
「うん。強い決意を持って行けば、どんなに危険な観光地でも、悪い奴のほうから逃げていくっていう意味なんだって」
「わかっただ、ビビ様。オラも覚悟を決めるだよ」
「さて、覚悟も方針も決まったし、行動開始しましょうか」




