(16)作戦会議始まる
「分かったわ。急いで考える」
スカーレットは、眉間にぐっと力を入れて、猛スピードで対策を思い巡らした。
「マルド商会長と薬壺を押さえるのが最優先だけど、警察部隊に通報するのが得策かどうか、悩ましいわね」
「トンチキ壷のことを、説明しないといけなくなるかもしれないから?」
「ええ。あれの情報を公開するのは、今はちょっとまずいのよ」
グリッド家の薬壺のことが明るみになってしまうと、あの家で代々起きていた死亡事件の真相だけでなく、ユアン・グリッドを洗脳状態から解放したヴィヴィアンの固有魔法についても、詮索される可能性が高くなる。スカーレットとしては、それはどうしても避けたかった。
「でも、第二のトンチキ壷には肉蠅がついてる」
「アーチバルさんが苦戦したっていう蠅?」
「うん。安全第一でトンチキ壷を確保するには、高い戦力が必要」
「となると、やっぱり警察部隊を巻き込みたいわね。あそこには、魔導害虫の専門家もいるのよ」
「おととい、呪い返しの誤差で増えちゃった黒い虫で出動してきた、トンチキな隊長さん?」
だったら、ちょっと会いたくないなと、ヴィヴィアンは思った。
「シャルマン隊長もそれなりに詳しいとは思うけど、専門家じゃないのよ。それにまだ入院中だしね。他に心当たりがあるから、うまく声をかけてみるわ」
「うん、お願い」
事が片付くまで、シャルマンの入院期間をたっぷりと延長してもらおうと心に決めたスカーレットの前に、ドクムギマキの一羽が飛んできて、ぺこりと頭を下げた。
「ぢゅんぢゅんぢゅっ!」
「赤い姐御様、肉蠅掃討戦に、ドクムギマキ一家も参戦したいそうですじゃ」
ノラサブの通訳を聞いて、スカーレットは改めて鳥の一族を眺めた。
「あら…この子たち、ずいぶんと魔力が高いわね」
「ぢゅんぢゅぢゅん!」
「マルド商会の近くで営巣していて、肉蠅に家族を獲られたそうでな、どうしても仇討ちしたいそうなのじゃが、作戦に加えてやって下さらんか」
ノラオやノラジたちも、話に加わった。
「もともとドクムギマキは、肉蠅どもの天敵なのじゃが、産卵後や育児中は、どうしても魔力が落ちて、防御の隙ができるそうでな。そこを狙い撃ちされたそうなのじゃ」
「ぢゅんぢゅん!!」
「いまは子育て中ではないから、万全の魔力で戦えると言うておりますぞ。肉蠅は気配を完全に消すのが厄介なのじゃが、ドクムギマキたちの索敵の力があれば、隠れ場所も容易に暴くことができましょうぞ」
「ぢゅん!」
「もちろん、クロシデムシ一門のわしらも、遅れは取るまいぞ。死角からの不意打ちさえなければ、たとえ一対多数であろうとも、あやつらに負けることなど、ありませんからな」
「俺らみんなで、あるじを守るぜ!」
埋葬虫一家の話を聞いたスカーレットは、にっこりと微笑んだ。
「ヴィヴィアン、いい家族ができたわね」
「うん。最高の家族だよ」




