ヴィヴィアンは仲間を紹介した
「……ウィステリア嬢、ほんとうにすまない」
ユアン・グリッドが、心底情け無いという表情で、ヴィヴィアンに謝った。
「ギル兄さんの話を聞いたからかな。少しづつだけど、最近の記憶が戻ってきてる。学院のときのことも」
「そう」
「あれが自分だと思えないし、思いたくもないけど……でも、僕だよな。メアリーを死なせないためだったら、どんなことでもするって決めたのは、確かに僕だ。最低だ…」
両手の拳を握りしめて悔やむユアン・グリッドに、ヴィヴィアンは静かに告げた。
「メアリーを死なせない決意は間違いじゃない。その意気や良しって思う。そのためにやろうとしたことは、いろいろダメだったけど、ダメなことをさせようとしたのは、トンチキな壺だった。だから、ユアン・グリッドが反省しなくちゃいけないのは、死なせない決意をしたことじゃないし、ダメなことをやったことでもない」
ヴィヴィアンの言葉を飲み込んだユアン・グリッドは、ゆっくりと顔を上げた。
「そうか……僕は、その壺より弱かった。呪術を志する者なのに、呪いにつけ込まれて、禁術に飲み込まれた。それは僕の責任だ」
ヴィヴィアンは、謎肉ガムを一個、ユアンに渡した。
「あ、ありがとう…」
「メアリーにもあげる。すごく元気が出て強くなるって、うちの子になった虫たちが言ってた」
虫と聞いて、メアリーが顔を青くした。
「ヴィヴィアン様…まさか昨日のあの黒いアレでは…?」
「あれとは違うやつ。メアリーたちのお家の庭にいたんだけど、今日からうちに住むことになったんだ」
「えっと、それはどういう…」
ユアンとメアリーが戸惑っていると、ヴィヴィアンの帆布カバンから、埋葬虫たちが出てきた。
──長いこと居候しておったが、家主殿と顔を合わせるのは、初めてじゃな。
──わしらも、訳もわからずあの家の下に住んでおったが、話を聞いていて、いろいろと合点がいったわい。
「埋葬虫が、なんでうちに!?」
──そのクソ壺に呼ばれたんじゃよ。家主殿の父君に倒された、肉蠅どもの代わりにな。
──全く迷惑な話じゃて。森のほとりで、愛する番とともに、仲睦まじく、つつましく幸せに暮らしとったのにのう。
──番を奪われ、記憶も奪われ、飯ももらえずに、ずーーーっと飼い殺されておったのじゃ。いたいけな埋葬虫に、あまりにも極悪な仕打ちじゃと、家主殿も思うじゃろ?
「いたいけって……一撃必殺の、最凶クラスの魔導昆虫だよな、埋葬虫って。それが、我が家に…」
──ほっほっほ。腹が減ってたもんでな、百撃半殺しくらいにれべるだうんしておったよ。
幼虫の姿のノラゴが、帆布カバンの隙間から這い出してふわりと浮き上がり、少年の姿に変化した。
「あんたらの家、しょぼい呪いとか、変な妖魔とかの吹き溜まりみたいになってるから、帰る前に大掃除しといたほうがいいと思うぜ」
「え、それって、どういう…」
──家主殿が、奥方に注ぐ呪力を集めようとして、いろいろと危うげな罠を仕掛けておったからじゃな。
ギル・グリッドが、呆れたような目を弟に向けた。
「ユアン、自分できちんと管理できないようなトラップは仕掛けちゃダメだって、ちっちゃい頃に父さんに何度も叱られてたよな」
「あ、あれは、どうしても魔導蝶をとってメアリーに見せたかったから…」
「でっかい魔導蛾が五百匹くらいかかっちゃって大泣きしてたの、忘れた?」
「う……」
「ユアン、退院したら、妖魔は森に返しましょうね。呪いも片付けましょう」
「うん…」




