ヴィヴィアンは挨拶をした
「おやおや、呼んでもいないのに、虫がわいたようだね、母様」
埋葬虫四匹の、渾身の当て身は、セイモア・グリッドの防御膜に弾かれた。
「ボクの母様の羊膜は、着脱自在。しかも金剛石よりも固いんだよ。ガラクタがぶつかったくらいで破られるはずがないものね」
セイモア・グリッドは、ニヤニヤと笑いながら薬壺を撫でている。
──ほっほー、なかなか頑丈な小僧っ子じゃの!
──皮被っとるだけじゃろ。今時の若いもんは軟弱じゃのー
ガンガンガンガンと、埋葬虫たちは衝突を続けるけれども、セイモア・グリッドは揺るがない。
「ふっ、ちんけな虫なんか飛ばしてきて、どうせ誰かが浅知恵を働かせてるんだろうけど、何をしたって、無駄さ。ボクには勝てないよ」
──どうしたもんかのお。こりゃ破れんぞい。
──まあ、わしらの仕事は陽動じゃからの。
──こりゃ、作戦を敵の前で喋る奴があるか!
──どうせ聞こえとらんじゃろ。
聞こえていなかった。
「うるさいなあ。ねえ、いくらぶつかってきても痛くも痒くもないんだから、そろそろやめてくれない?」
効果のない打撃を続ける埋葬虫たちを、セイモア・グリッドはニヤニヤしながら見ていたけれど、彼としても、いつまでもそういているわけにはいかなかった。
『羊膜』を被っている間は、外からの攻撃だけでなく、病院の者たちから吸い取ろうとしている魔力などのエネルギーも、遮断されてしまうのだ。
薬壺を『羊膜』の外に出せば、エネルギーの回収ができるけれども、虫たちが突進してくるので、出すことができない。
「ゴミ虫を狂わせる薬を撒いてあったのに、なぜ効かないのさ。薬も効かないほど馬鹿だから? きっとそうだね、母様」
──どうやら小僧っ子にも打つ手がなさそうじゃの。
──もうちょい煽ったら、ニヤつきが止まるじゃろ。
──ならば五倍速でいこうかの。
──十倍はださねば、姫様のご馳走には見合わんじゃろ。
──ならばワシは、ゆるーく重く攻めるわい。
──高音も乙なものじゃよ。
ガガガンガガガン
ドガガガガガガガ
どーーーん、どーーーん
キーンパリパリパリパリパリパリ
「ねえ、いい加減にしないと、ただじゃおかないよ!」
──ニヤつきがイラつきに変わってきたぞい!
──そろそろ陽動の仕上げといこうかい!
──埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋めええええ!
──埋め墓上等じゃああああああ!
──そりゃあああっ死して屍拾わせーーーい!
「こっこの、虫けらぁー!」
セイモア・グリッドの顔からニヤつきが完全に消えた。
──ほっほ! 決まったの!
──姫様ー!出番ですじゃー!
埋葬中たちの活躍を覗き見しながら廊下で待っていたヴィヴィアンが、執務室にとことこと入ってきた。
「はじめまして。こんにちは」
「なっ! ヴィヴィアン・ウィステリア!」




