第44話 隠しダンジョンは楽しい?
崩落した先にほあり得ないほどのレベルに達している魔物ばかりでそんなに深く落ちていない事を考慮すると隠しダンジョンの可能性が高そうだ。
と言う事は、珍しいアイテムや素材が手に入る場所でもある。
私1人なら喜んで探索するところだが生徒達と一緒となると話は変わって来る。
だけど、この子達にも良い経験になるかもしれない。
冒険者には危険が付きもの。
この苦難を自分達で乗り切れば生きて行く自信にもなる。
「皆んなよく聞いて。
どうやら本来のダンジョン階層ではなく別の隠しダンジョンの階層に紛れ込んだみたいなの。
でも、冒険者にはこの程度の緊急事態は珍しく無いわ。
何とか自分達だけで乗り切って見せなさい。
先生はサポートに徹するから。」
「私達だけで……。」
女子3人は動揺を隠せない。
寄り添って恐怖が先行しているのが分かる。
それも想定内である。
恐怖心は身を守るのに絶対に必要な感情であり、今後役に立た要素だ。
「とは言え、流石にこの階層の魔物は強すぎるから危険な時は退避しつつ階段を探しましょう。」
移動しているが、生徒達は恐怖が先行していて何も出来ない状態なので私が魔物を倒しながら進んだ。
順調に進んで行くと上の階層に続く階段を発見した。
登って行くと出口に光が差している。
登り切るとそこは地上のような草原と山地が見える広大な世界が広がっていた。
「先生!これってもしかして。」
「ええ、間違いないわ。
稀にダンジョンに存在するエリア階層よ。」
エリア階層とは広大な空間で発光性の魔鉱石が陽の光のような明るさを照らして植物や木々、動物や魔物が生息する地上のような空間の事だ。
私も初めて見る。
基本的には強い魔物が少なく退避エリアになる事が多い。
深いダンジョンなどで稀に見つかり冒険者達の停泊地にされる事が多い。
「先生!ここは安全なんですか?
もうこれ以上何か起こるのは耐えられないです。」
少し混乱気味になっている。
その中でもアリアナはこれまでの出来事で不安がピークに達している。
それ以外の女子2人も不安も限界に近い。
「大丈夫よ。
私が居るもの。
それにエリア階層はダンジョン内より魔物が少なく安全。
気が付いたんだけど、この先に建物が見えるわ。
避難所かも知れないから、そこを目指すわよ。」
このエリアに入ってから遠くに見ている建物がある。
避難所のようには見えないが人がいる可能性はある。
男子2人が女子3人を宥めつつ護衛しながら建物に向かう事にした。
あまり期待していなかったが、男子2人は勇気を振り絞って女子3人を守っている。
意外な収穫と言える。
暫く歩くとその建物が大きな洋館であり門構えを持つ立派な屋敷である事が判明した。
「ちょっと待って。」
生徒達は私の言葉に反応して辺りを警戒している。
「先生?どうしたんですか?」
「ああ、そんなに警戒しなくて大丈夫よ。
ちょっとこいつにも働いて貰うわ。」
私は収納魔法から召喚玉を取り出した。
「ドラ。出番よ。」
召喚玉に魔力を注ぐ事で時空間召喚が可能だ。
普段はうるさいので自宅に待機させているドラを召喚した。
「やっと呼ばれたで!なんや、ピンチか?」
召喚玉が光その光の中きらドラが現れた。
「ええ、ドラの力が必要なの。」
「そうやろそうやろ!わしが居らんとあかんやろ。」
召喚されたドラは大喜びで飛び回っている。
「先生?ドラゴンを召喚してどうするんですか?」
飛び回るドラを見てマリーナが不安そうに声をかけてくる。
「ふふふ、あのお屋敷が安全かドラに偵察させるわ。」
安心させる為に不安そうな生徒達に私は微笑んでみせた。
「ドラ〜!あそこの屋敷を偵察して来て!」
「わかったで〜!」
ご機嫌で飛んでいった。
召喚したドラとは視覚を共有できる。
彼が見ているものが私に見えるのだ。
屋敷に近づくと立派な様式の建物だという事が分かり、避難所の様には見えない。
『ドラ。人の気配は?』
『う〜ん、そうやなぁ。
屋敷の外には感じやんけど。
建物の中にはごっつい魔力持ちの奴があるみたいやで!』
『そう。戻ってきて。』
ドラが戻って来ると屋敷に近づいて門を開けて建物のドアの前までやって来た。
一応安全のために生徒達には門の外で待機させている。
ドアを開けて中に入ると立派な装飾と広い部屋が目に飛び込んでくる。
「おやおや。お客さんですか?」
声の主は正面の扉を開けて出てきた男性のものだ。
銀髪の見た目は若く精悍な面持ちの青年だ。
何処となく魔力の質が人間では無い様に感じている。
「突然押しかけてしまい申し訳ありません。
迷ってしまって。
ここはどう言った場所なんでしょうか?」
私の問いかけに対して青年は和やかに微笑んでいる。
「神魔族とは珍しい。
ここは神域なのですよ。
普通の人間や魔物は入らないのですが、貴女を導いてしまった様ですね。」
「・・・」
一眼見ただけで私が神魔族だと見抜くとはただの人間では無さそうだ。
神域という事はダンジョンからまた別の場所に飛ばされた可能性もある。
この男性には敵意は感じられない。
ひとまずは生徒たちに安全な場所だと説明できそうだ。
生徒達を屋敷の中に連れてくると広い来賓用の部屋に通された。
疲れていたのだろう。
生徒達は程なくしてベッドで横になると眠ってしまった。
私は何気なく屋敷の中を歩いていくとリビングで書物を読む主を見つけた。
「人間の子らは眠りましたか?」
「ええ、ぐっすりと。
いろいろありましたからね。
疲れたのでしょう。
それにしてもあなたはここで何をしているのですか?」
「ああ、申し遅れましたね。
私はリセイン・アルスティンと申します。」
「私はユスティティア。
何故私が神魔族だと分かったのですか?」
「実は私も神魔族なのですよ。
何故ここに居るのか?
それに関しては、いろいろありましてね。
諸事情を察して頂けると助かります。」
「そうでしたか。
同族に会えるとは偶然しては出来すぎている気もしますが、まあ、それはこの際置いておいて。
少し、話しませんか?」
私はリセインと向かい合うように椅子に腰掛けた。
それを見て、リセインはテーブルの上に読んでいた書物を置くと少し笑みを見せる。




